十一話 第一村人
快晴で雲がほとんどなく、太陽の日差しを浴びながら横の森を避けて草原をバイクで走り続けた。
館の件からあの国を出て二日ほどになる、その間ずっと障害物がない道をひたすら走り続けてるけど……
「とても暇……ふぁ~」
「まだ先はあるぞ? 大丈夫かよ?」
日差しが強くなって熱くなり、一端バイクを止めてコートの前を開ける。黒色のため太陽の光を吸収して、さらにフルフェイスのヘルメットでさらに熱く汗が出る。
「熱い……」
「そんだけ着込んでればそれは、あたりまえだ」
「そう言えば、この世界……夏に近いんだったけ?」
一応この世界にも日本の四季が存在しており、月に例えるなら今は七月ぐらいだ。いくらコートや顔を隠す為にヘルメットをしているとは言え、このままでは熱中症や脱水になりかねない。コートを脱ぐがそれでも熱い……ちょと、休憩……
パルトにヘルメットとコートを写して返却しもらい。バイクを手で押して大きな岩の前に止める。何か飲み物を注文して冷たい物を出してもらい、岩に腰掛け端末のマップを起動させる。
画面には今いる草原から少し離れて所に「村」と書かれた所があって、その傍には「大地の神殿」と小さく書かれた箇所があり、文字の隣りには緑の玉が写ってあった。恐らくこれが緑のオーブだと思う。
「神殿て……まさかダンジョンとか言わないよね?」
「そうだとしたら、まさしくファンタジーだな?」
既に異世界でファンタジーなのだが、あくまでも仕事だ。しかもリアルにモンスターやら、人さらいがいるため楽しめるわけがない。
……多少。そう、小指程だけだが……ゲームの主人公になった気分もある。
「そんで、村には行くのか」
「それは、様子をみてから……ん?」
バイクに乗ろうとした時。すぐ近くの森の林が揺れる。腰に吊ってある自動銃を引き警戒して構える。
段々と揺れが激しくなり、何かが林から出て来た。
「はぁ!! はぁ!!」
荒い行きをたてながら、小さな人影が……長い緑髪をし茶色の麻の服を身につけた女の子が倒れて出て来る。え? ちょ!? どうゆう事?
辺りを警戒しつつ、倒れた少女の元に近づき。少女は私を見て力なく手を伸ばし口を動かす。
「お……おねがい……む、村をたす、けて……」
そう言って少女は目を閉じて気絶してしまう。急いで彼女の体を触れどこか怪我をしてないか見るが出血等はない、だが大量の汗に体が熱い。
急いで端末を出し、アイスノン等とにかく冷たい物を取り出し彼女の体 首や脇下などにあてて、額に手を当てて念じたーー
暫らくして、緑髪の子の体温を下げる為テントを張り、凍を置いて辺りを警戒し、夕陽が降りる頃。
「ん……」
日よけで張ったテントの中から声が聞こえ中を見る。少女は自分の体に巻かれたタオルとアイスノンがなんなのか警戒し、私の存在に気づいて怯えたように身を固める。
「!! し、銀の髪!!」
突然私の髪を見てテントの端まで後ずさる。なんで? 私何かしたって?
「銀って……あ」
髪を隠すためのつけ毛をの事を忘れて、自分の髪を触るがもう襲い。何故か怯えきった彼女に何て言えば分からないが……
このままではろくに話しもできないため。スポーツドリンクのボトルをコップに移し変えて差し出す。最初は警戒して手を出さないが、喉が渇いているだろう。覚悟を決めたように手を恐る恐る伸ばし、ひったくるようにコップを取り一気に飲み干した。
「ごくっ、ごくっ……!! あ、甘い……」
驚いた顔でコップと私を往復で見る、やがてその目はおかわりを要求する物になり上目使いで私を見る。うわ、とんでもなく可愛いよ……
抱きしめたい衝動を抑え、再びコップにドリンクを注ぎペットボトル一つ分を飲み干した。
「ぷはぁ!!」
「どう、落ち着いた?」
大分飲み、多少は警戒を説いた彼女に話しかけ名前を聞く。いつまでも名無しだと何て呼べばいいか分から無い。
「はい……その……美味しかった……です。ありがとうございます、
私の名前は……テレ」
「テレね? 私はアン。ところで……あなたどうしたの?」
「そ、それは……」
下を向きながら、私と目を合わせないテレは何か思いつめた顔をして、急に私を見る。
「おいおい……助けておいてだんまりかよ?」
突如、ポッケトの中からパルトの声がし取り出して電源を切ろうとボタンを長押しする。
「ちょ、まてこら!! 何電源切ろうとしてんだよ?」
うるさい、あんたが話したら。この子が混乱すんでしょうが!!
「あ、あの……私が話したら……あなたは、助けてくれますか?」
「……え?」
端末のボタンから指を離して、テレを見る。一体なにが起きているのかテレに説明を求めた。するとテレは下を向いて小さな声で ポツリ ポツリと口を開く。
この先にある村。テレはそこの族長の一人娘で村での伝統の儀式が近くその準備をしていた時。
突如、盗賊が襲いかかり村が焼かれ、助けを呼ぶためテレだけが逃げて来た事を伝えられる……そして
「熱さでやられて、私の前に倒れたっ、と?」
返事をせず、首を縦に小さく振る。
盗賊かぁ……まさにファンタジーだが実査に目の前で起こると、不快だ。しかも目的地である大地の神殿もその村から大分近いはずだったから、これは避けては通れない。なにより……
「放っておけないよ」
私の呟きが聞こえたのか、テレは顔を上げて大きく目を開く。
「え、今……?」
「分かったわよ……何とかするわ……けど、その代わりにさ」
「お、何か要求するのか?」
相棒の言葉を無視し、一度言葉を切る。これで彼女の感に触ったら私は悪人だな……と思いつつ。
「村をなんとかする代わりに……神殿と私の髪について聞きたいんだけど、いいかな?」
夕陽が完全に沈み切り、辺りが静かになって夜になり
動き始めたーー