十話 救出、燃え盛る館
豪華なベッドに腰掛け、複数の従者達の報告を受て屋敷主の男が
「な、何をしておるかぁ!! はよ火を消せ!! 財産が!! 私の!!」
そう叫び、命令した瞬間。再び爆発と衝撃が起こった。
「主さま!! これ以上ここにいては危険です!! 外へ!!」
一人の兵が誘導しようとするが、手を振りほどき
「早く火をどうにかしろ!! もしも私の財産に何かあったらどうする!!」
と理不尽な事をいい、避難しない。そうしている中でも使用人達は必死に火を食い止める。
「くそ!! なんだって火事なんか!?」
「いいから水持ってこい!!」
「あ、熱い!!」
「だ、だれか!!」
二度目の爆発により、今度は別の所まで燃え始めそちらの方にまで人が行き。地下へ続く階段のある部屋は手薄になっていた。
「……やりすぎた……」
「あたりまえだ!! 防火素材なんか使ってないんだぞここは!?」
本当は、ぼやだけ起し注意を引きつけて地下牢を探そうと思ってたけど、仕掛けた爆弾で、予想以上に屋敷柱を破壊したり。さらに運が悪く、近くに引火しやすい油か何かが置かれていたらしく、爆発で起こった火花程度で引火。
この建物が現代の、ましてや木製なだけに少しの火でも火災につながって今に至った。
「頼むから誰も死なないでよね……」
単なる誘導で、死なれたら気が気でならないまま、簡単な施錠を外し暗視ゴーグルとシートを被り階段を下る。
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「な、何……今の?」
また聞こえた大きな音が聞こえ、他の牢屋にいる人達の声が聞こえる。と、膝枕で安静にして目を閉じていたティムも気づいて私を見るけど、どうしたらいいのか分から無い。
「っ!! 誰か来る……」
かすかだけど、扉が開いた音がし耳に集中する。屋敷の人? でもなんだか様子が違うような?
扉の音が聞こえた後、何も音がない。なんだか緊張して手から汗がでる。私に抱きついてきたティムの体が震えて強く抱きしめ、お母さんが後ろから私達を抱きしめた。
「大丈夫……大丈夫だから……」
何度もそう言って三人で牢屋の外を見る。廊下には誰もいない。このまま何もない事を祈っていると
カシャン と音がして、突然牢屋の扉が開いた!!
「ひぃ!!」
ティムが悲鳴を上げお母さんも目を閉じる。私はもしかしたら死神が来てるのかなと思い目を閉じない。
「私の命を……取るんですか……死神さん……」
「そんなわけ、ないでしょうが」
突然、聞き慣れた声がし、目のに何かが現れた。赤い髪。私より背が高くて顔に変な光る物をつけた女性が突然出てきた。
「それに……私は死神なんてものじゃない……私は……」
顔に着いていた物をとり、その下には笑顔を浮かべ私の頭を優しくなでるーー
「単なる便利屋よ」
「アンさん!!」
昨日知り合った、恩人の女性に私は泣きながら抱きついていた。
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「ば、バカモン!! あそこには、奴らに渡す人間が!! それに、私の財産も!!」
もはや火が迫ってきて、使用人達は男を無理やり外に連れ出す。既に大半の人間が脱出しており、残っていたのは連れてこられ牢に入れられた人達のようだった。
「くそ!! 一体……一体だれが!!」
怒りをあらわにした屋敷のその言葉に誰も答える事は出来ない。燃える館に気づいたのか街の方から大勢の兵達が駆け込んで屋敷の者よ一緒に消火活動を行う。
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「さてと……どうやって脱出しようかな?」
全ての牢屋の鍵を外し、中から人を出す。ざっと見て百人以上だろうか? 上は火災で出るのは無理だし、ここは地下だけどいつまでいられない。
「なぁ、このまま上に登って逃げよう!!」
「そ、そうだ!! 外に出て兵たちに助けを……」
上につながる扉を何人かが開けようとし、止めようとするが既に手遅れだった。扉の先は火で囲まれており、煙が少し入って来る。
「あ、熱い!!」
「火、火が!!」
急いで扉を閉め、外に出ようとした彼らを見る。大丈夫、やけどは特にしたない見たい。
「皆さん、今見たとうり……上の屋敷は今火で囲まれてます!! ですのでこの扉は開けないでください!!」
注意を促し、これからこの大勢の人をどうやって外に出すか考える。火災の原因が私だしどうにかしないとね……
「ぐ……げほ、げほ!!」
「お母さん!!」
突然ルナの方から声がし、彼女の母親が胸を抑えて苦しんでいた。傍にいるティムが涙目で
「おばさん、病気で、時々苦しくなるんだ、ひっく!!」
「どうしよう……薬が……ないのに!!」
「相棒、その母親を撮ってくれないか?」
端末からパルトの声がし、私は理由を聞かずにルナの母親に端末を向けるが、泣き出すティムと慌てるルナが邪魔だったため、体を診るから と言いどいてもらいシャッター音が鳴る。
「……よし、確認した。どうやら、この母親は心臓がちと弱いらしいな……
何とか処置しないと、まずいぜ?」
「処置って……何か薬出せないの?」
私は便利屋はしているが、医者ではない。そんな専門外の事はできないのだから。
「あるにはあるが、それよりも効果的なのがあるだろ? それを使えばリスクは低い、まぁそれは相棒しだいだがな?」
私次第? ……まさかアレ?
「お母さん!?」
ルナの叫び声が聞こえ、彼女の母親はさらに苦しく息を吐く。
……もはや猶予はない。
「分かった……私がやるから……ルナ、そこどいて」
覚悟を決め、弱弱しい呼吸をする彼女の胸……心臓部分に触れ集中する。人にやったのは始めてだけど……お願い!! 治って!!
私の願いが聞いたのか、触れた手が光る。傍にいたルナが「ひ、光が……」と言っているが無視して、さらに集中する。
「ふぅ……ふぅ……」
少しだが、呼吸が整ってきた。それに、顔色も血が戻りつつある。暫らく胸に当てていると痛みが収まったのか、目を閉じて静かな呼吸をし始めた。
「だ、大丈夫なんですか? お母さん……」
「今は痛みが引いて寝ちゃただけみたい、大丈夫だと思うよ」
そう聞いて、ルナは涙を流し私に抱きついてきた。苦しかったが、何度も何度も ありがとう ありがとう て言われて無碍に話す訳には行かなかった。
「す、すごい……今のてっ……魔法!?」
「き、奇跡だ!!」
「魔法は王族使えにはずなのに!?」
今度は周りの人が騒ぎ始める。一体なんの事かと思ったら一人の男性が私に近づいてきた。
「お、お願いです!! お、俺たちをここから救ってくだい!!」
その一言を皮切りに、全員が私に近づく。「何かマズイぞ?」と端末から声が聞こえるが、そんなの見れば分かるって!!
「あぁ、扉がぁ!!」
突然、悲鳴が上がり見ると。木で造られた扉が燃え、少し煙が入って来ていた。
「パルト!! 他に出口は!?」
「ねぇ!! その扉だけだ!!」
くそっ!! 自分で起こした火災を睨みつけ、舌打ちする。こんな事だったら爆破なんて……ん?
「そうだ……」
人々がパニックを起こしている中。ルナが入っていた牢屋に入り天井にある窓を見てーー
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ドォォン!!
突然、屋敷の裏から爆発が起こる。消火中の兵が駆けつけると、そこには牢屋と消えた人々がおり至急保護される。
やがて夜が明け
屋敷の消火は完了し突然の爆発から保護した彼らの証言により、この屋敷主であるメダは即座に逮捕。城の牢に連行され、他にも加担した従者等も動揺に連れて行かれて、兵に保護される彼らの中に、ひと組の母子と、小さな少年の姿もあった。
さらに、自分達を助けてくれたと言う赤髪の女性の話しを聞くが。そのような人物の姿は無かった。
「よし、脱出成功!! 道がないなら作れば良いってね!!」
屋敷跡から離れ、バイクを止め望遠鏡を除くアンが笑顔がいた。
「たく、牢屋爆破して出たのはいいが、一時はどうなるかと思ったぞ? たくっ」
「 ゴメン、ゴメン!! ……さてと、さっさとオーブ探さないとねぇ!!」
エンジンを入れ、機械音を鳴らし。フルフェイスのヘルメットを被りアクセルを回し、草原を駆けた。
目指すのはーー東