表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
便利屋の異世界出張!!  作者: 未来
一部 始まる異世界への旅
10/45

八話 牢獄のルナ、そして漆黒の翼

 王都から離れた一つの屋敷。大きな庭や玄関にはいくつもの彫像が並び、屋敷の内部にはいたる所に貴金属の飾り物などがあった。そして、屋敷の地下牢では


 「ロブさん……どうして、ですか?」

 

 牢の中にいるルナが鉄格子の向こう側に立つ中年の男性に向かって話かける。男性は下を向いて悲しい顔を浮かべルナと目を合わせない。


 「すまない……ルナ……俺は、ここの主から命令で、なんとしてでも人を集めないと行けなかったんだ……けど、本当は俺だってしたくはないんだよ!!」


 涙を浮かべ背を向け「ごめん!! ルナ!! ソル!!」と叫び地下から出て行った。ルナは後ろで苦しそうに肩で息をして横になっている女性に近づき何度も呼びかけた。


 「ルナ……ごめんね? ロブを恨まないで……あの人も、自分の家族を守る為に……」

 「そんな!? 何でなの? なんで私達がこんな目に合わないといけないの!? お母さん!? お父さんがいなくなってから、私もぅ……」


 悲痛な叫びを上げ、拳を強く握りしめ涙が手に落ち濡らす。この牢屋に連れてこられてからまだ半日だが、この先の未来が絶望に染められているのを感じ、他の牢にいる人は誰も口を開かず、ルナの鳴き声だけが地下に響く。


 「して、連れてきた奴らは……百人ほどかぁ……まぁいい」


 豪華な椅子に座り、部下らしき人物から報告を受けグラスを口に運び。低伸で髭を生やした男の口元を緩める。


 「所詮小娘の国など容易いこと……後は地下の奴らを国に引き渡すだけ、決行は明日の朝だ、しくじるなよ」


 部下達に伝え、男は高笑いし屋敷のどこまでもその声が届く。それが男の一生の内で最後の笑い声となるのに誰も気づく事はなく、迫りくる影が迫る。


               ▲ 

 

 宿に一度戻り、話に聞いた屋敷の場所をマップで見てから装備を整えていると、夕陽が大分傾き始めていた。机の上には発砲音を出さないサイレンサー銃や暗闇の中でも見える暗視ゴーグル。爆発物など様々な道具をベッドに広げる。


 「おい、まさか今から行くのかよ、その屋敷によ?」


 あの赤髪の男の情報が正しいか定かじゃないけど、異世界に来たばかりの私じゃあちらこちらから情報なんて取れないし、それにいつルナ達が無事である保証もない為あまり時間はない。


 「確証はないけど……一応ね?」


 丈夫なベルトを腰に巻いて、道具をベルトについてあるホルスターに入れる。もう戻ってこないかもしれないので忘れ物がないか部屋を見て、出て行く。たった一日だけどベッドも良く、異世界のはずが露天風呂に入れたりと気に入っていたが……所詮私はこの世界の住人ではない。なのでここで未練を残す訳にはいかない。


 「おや、アンさん?」


 一階のフロントでランドが声をかけて来て、宿からチェックアウトしもう戻って来ない事を伝える。宿代について彼に聞くが 特に大した事はできてないので必要ない との事でタダになった。


 「まぁ、祭りも近いですので……またどこかでお会いできすね……それでは、お元気で……ところで、ティムを見かけませんでしたか?」


 ティム? あぁ、あの除きっ子か……?

 どうやら朝ルナ親子が居なくなった事を伝えた後この宿に戻っていないと聞き、道中で私も見てない事を伝えると。ランドは力なく肩を落としため息を大きく吐いた、どうやら本当にとても二人の事を心配しているようだったが今は急ぐため彼に慰めの言葉をかけずに適度な挨拶をして走った!!

 街中でバイクを使う訳には行かず、徒歩だが大分距離がある。


 「空でも飛べれば……あっ!!」


 既に夕陽が完全に消え、カンテラの明かりを出す店前で足を止めて真っ暗な空を見上げて あるじゃん…… と口に出していた。

 

                  ▲


 私には父との記憶が余りない。父は城に仕える騎士で誰からも尊敬されていた。実際鎧をまとい、剣を持った父の姿だけは頭の中ではっきり覚えている。

 だけど…… 私が六歳になった頃当然死んだ。

 原因は魔獣との戦いで、魔獣の攻撃から仲間を助けようとした為だと聞かされていた。そして、その助けた兵と言うのがロブさんとランドさんだ。

 二人は父の変わりに私達を助けてくれた、食べ物や着る物をくれて仕事場まで頂いて。時間が経ち何とか悲しみから立ち直り、病弱だった母を助けてくれた二人にはとても感謝していたけど……


 「もう、嫌だ……」


 冷たい牢の中、母と抱き合ってロブさんに裏切られた事に胸が痛み涙が止まらなかった。


 誰か……だれか、助けて……ティム、ランドさん……アンさん



 「ん?」


 今誰かに呼ばれた用な気がして、下を向くが人々の喧騒しか聞こえない。静かな機械音が鳴り、私の背にある漆黒の翼が風に揺れるだけだった。エンジン搭載のハングライダーは夜空に擬態して誰も気づかずに邪魔もなく街を抜けて、目的地である屋敷が見える。音を出さずに屋根裏に足をつけてハングライダーをしまいこんだ。


 「さぁて……潜入と行きますか……」


 傍にある空いた窓を見つけ、誰もいない事を確認し入り込む。


 待っててよ、ルナ!! 


 


  



 

 



 

 

 

 




 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ