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女子高生 玄倉新・17 抱きしめて

 次の日。私は速足に病院の廊下を歩いて、星太くんの部屋の扉をノックする。

「遅いよ。ノックなんていいよ。さっさと入って来いよ」

 と、部屋の主の言葉。それに甘えて、病室に入る私。

 挨拶もそこそこに、ベッド横のパイプ椅子に腰を下ろす。そして。


「昨日の夢」

 キレイにハモった。ううむ、気になっていることは同じだったか。

「何だ。新も気になってたのか」

「星太くんも」


 私は、少し身を乗り出す。

「ね。チュウリィ、あの後どうしたの」

「父親の屋敷に行った」

 星太くんは素っ気なく言う。

「大邸宅だったよ。アイツのことは心配いらない。シュラハは?」

「師匠にガッツリ説教されて、しばらく謹慎。勉強してろ、って」


 私が答えると、星太くんはなんだかおかしな顔をした。もの足りなさそうな、というか。

 私の答えの何かが、腑に落ちない感じの。

「そ……それだけ?」

「それだけだけど」

 しばし黙り込んだ後。

 あー、とか、うー、とか。意味のない言葉をさんざん言ってから。恐る恐る、という感じで星太くんは口を開いた。


「あのさ、新。シュラハは、あのアイマグってヤツの」

「弟子だよ」

「じゃなくて。ちょっと黙ってろ」

 星太くんは、大きく深呼吸して。

「婚約者、なんだな?」

 と、尋ねた。


「ああ、うん。そうだけど」

 私が頷くと、星太くんはなぜかガックリと肩を落とす。

「軽いな! なんでそんなに軽いんだよ」

 何だか怒り出した。何で?

「だいたい、何でそんな大事なことを今まで黙っていたんだ。お前は、知ってたんだろう?!」


 それは。シュラハの個人情報を絶対に洩らすな、という。星太くんの厳命があったからで。

 それに。

「そんなにビックリしなくても。婚約者、って言っても名前だけで。慣習上、って言うのかな。部族の掟で」

「うわ。出たよ、掟」

 星太くんはげんなりした顔をした。何かヘンなこと言ったかな、私。


「それにしても、いいの星太くん。シュラハのことは、チュウリィにバレないように一切耳に入れないんじゃなかったの」

「ああ。もういい。何かアイツ今カワイソウすぎるし。それに、僕も聞きたい。いったい何がどうなってるのかサッパリ分からなかった」


 私も、何がどうなってチュウリィが出て行くことになったのかイマイチ把握できてないんだけど。師匠、何も話してくれないし。


 私と星太くんは。ベッドの脇でお互いを見つめ合う。

 シュラハは、悪い兄たちに監禁されていたチュウリィを見つけ出し、自分の天幕へ匿っていた。

 ところが、昨日の夢で。


 何がどうなったのか分からないけれど、天幕の主であるシュラハの師匠とチュウリィの間で急に争いが起こり、チュウリィは天幕を追い出されてしまったのだ。

 だから、その争いの原因を星太くんに聞きたかったんだけれど。

 

 星太くんには星太くんで、私に聞きたいことがあるようだ。


「とにかく、話せよ。掟でも何でも、婚約者なんだろう。シュラハは、なんて言ってチュウリィをあのテントみたいな家に連れ込んだんだよ」

「え。まあ、友だちが悪い兄弟に危害を加えられそうになって困っているから、かくまいたい、って」


 そのままの真実を言ったつもりだけど。

 星太くんは眉間にしわを作る。

「何だよ、ソレ。嘘じゃん。友だちって、お前さ、友だちなら誰でもキスさせたり胸触らせたりするわけ?」


 それは私が星太くんに問いたい。

 ついこの前まで私の立場、かなり不鮮明だったんですが。それでも平気でキスしたりいろいろ触って来たりしたのは誰だったでしょうか。そしてそれはチュウリィも同じようなものだと思う。


「それにチュウリィは、自分とシュラハが恋人同士だってあの師匠野郎にハッキリ言ったんだ。それなのに、アイツお前に何も言わなかったの? 婚約者なんだろ?」


「え」

 私は、目を丸くする。

「恋人同士って、ホントに? シュラハとチュウリィが?」

「何でそこでお前が疑問形だよ。そうだろ」

 不機嫌に、当たり前のように言う星太くん。


 だけど、私にとっては。

 シュラハにとって、チュウリィは。手の届かない、異国の王子様のような人で。

 自分のものになるなんて、一回だって思ったことはなかった。


 私が星太くんのちょっとした仕草やちょっとした言葉に、ドキドキ、ビクビクしていたように。

 シュラハもいつも。

 

「うわ、嬉しいかも」

 自分のことのように、胸にこみ上げてくるものがある。頬が熱くなる。

「これ、知ったらシュラハすごく喜ぶ」


「だから、何で今さらなんだよ。ずっと付き合ってたじゃないか」

 星太くんは不服そう。

「なんなの、お前ら。誰とでもあんなことするビッチなわけ」


「それはないと思う」

 ちょっと、今の発言には刺を感じたなあ。訂正しておかないと。

「シュラハだって、チュウリィが好きだからこそ、いろいろ……」

 そこのところは女の子として、言葉を濁しておくけれども。

「ね。許してたわけじゃない。誰とでもあんなこと、しないよ?」


「じゃ、何でそれで、付き合ってなかったって認識になるのさ」

 星太くんは相変わらず不機嫌。

「やっぱり、アレか。本命は師匠野郎だから? ちゃんとした婚約者が、いるんだもんな」


 刺だらけの言葉。私は、驚く。

「待って。ちょっと待って。それ、誤解だから」

「誤解って何だよ。婚約者なんだろ」

「待ってったら。ちゃんと、説明する」

 私は言った。少し考える。事情が込み入っているので、何から話したものか。

 頭の中で状況を整理するのに、少し時間がかかった。


「要するにね。シュラハは、私と境遇が似ているの」

 と、私は始めた。

「あの子の両親は、だいぶ前に西方に交易に行ったの。その時、まだ小さかったシュラハを連れて行けないと考えて。あの子の養育を放棄したのよ。その場合、部族の掟で親族の誰かが代わりに後見人になって親権を引き継ぐの」

 養護施設とかないもんねえ。

「それで。その後見人に指名されたのが、あのアイマグって人なの。シュラハのまた従兄弟か何かに当たるんだけど、あの人が一番近い親族で」


「何ソレ」

 星太くんは眉間にいっそうしわを寄せる。

「婚約者じゃないのかよ。そこの話はどうなったんだ」


「うん、だからね」

 私は、頭の中でシュラハの師匠の姿を思い描く。

「あの人は、シュラハにとって後見人で、親代わりで、魔術の師匠で、お兄さんみたいな人で、それで婚約者。師匠は、シュラハの面倒を一生看るって誓いをシュラハの親に対して立てているから」


「それってつまり。子供の時は親代わりとして育てて、大きくなったら嫁として守る、ってことか?」

 眉間のしわをますます深くしながら聞いてくる星太くん。

 このまま、しわが取れなくなるんじゃないかと心配になってくる。


「ウン、そういう感じ。あの部族の中で、ひとりの人間の世話を責任もって看るってことは、そういうことなの。それに、親族の中から仮の婚約者を選ぶのは、あの部族の中で普通のことだし」

「仮?」

 聞き咎める星太くん。うーん、そこのところ説明しにくいな。

「仮、っていうと違うかもしれないけど。そのまま結婚する人も多いし。でも、慣習上決められる親族の婚約者は、確定じゃないの。大きくなって、他に結婚したい人が出来たとか、何か事情が出来て結婚をやめたい時には、相応の詫び金を積めば約束はナシに出来るの」


「何だそれ?!」

 仰天した様子。そうか、やっぱりカルチャーショックかあ。私は、夢の中ではそれがシュラハの常識だったから、あんまり違和感ないんだけど。

「金で済んじまうのか?」

「あそこは遊牧民の社会だから、お金の代わりに羊十頭と馬三頭、とかでも取引してるけど」

「何ソレ。それが相場かよ」

 顔をしかめる星太くん。

「そうなんだ。なんだよ、それ。婚約者なんて大げさに言って、そんな軽い話なわけ」

 まあ、シュラハには羊十頭と馬三頭なんて簡単にそろえられないから、そこまで軽い話ではないと思うけど。


「じゃ、何」

 星太くんが、軽く息を吸ってから、声を低くして言う。

「シュラハのヤツ、アイツと愛し合ってるとかそういうわけじゃないの」

「まさか」

 思わず、笑っちゃった。

「ないない。あの二人は、ホントに兄妹というか親子というか、とにかく家族みたいな関係で。あくまで魔術の師匠と弟子というか。師匠も、本気でシュラハを妻にするとか考えてないと思うよ。うん、ありえない」


「おいおい、笑いごとかよ」

 いっそう顔をしかめる星太くん。でも、ねえ。師匠と結婚とか、やっぱり笑いごとにしか思えない。


「師匠も口では言わないけど、本音じゃシュラハが誰か他の人と付き合って、お嫁に行ってほしいと思ってるんじゃないかな。チュウリィのことだって、最初根掘り葉掘り聞かれたけど、結局受け容れてくれたし。チュウリィを追い出した後も、なんか女の品格についてくどくど言われたけど、そんなに怒ってなかったよ」


「そ、そうなのか?」

 不審そうにたずねる星太くん。

「うん。もし、師匠が本気でシュラハのことを婚約者だと思ってたら、そんな反応しないでしょ?」

 それは、やっぱり。シュラハのことを女として見ていないってことだろう。


 ただ、一応掟に縛られている身として軽軽な行動はとってはいけない、とそういう意味で注意を受けたんだと思う。


 もっとも、形式上は師匠が婚約者であるのには変わりないから、その彼に対してチュウリィが堂々と恋人宣言したのでは、天幕から追い出される騒ぎになってもムリはないと思う。


「そうかなあ」

 ひとり星太くんは首をひねる。

「お前、もう一度あの師匠野郎と話してみろ? あれ、そういう反応じゃなかったぞ。ああ、僕が心配する筋合いじゃないけどさ」

 とか言ってる。

 いやまあ。掟との兼ね合いもあるし、もちろんシュラハは師匠にちゃんとフォローを入れなきゃいけない状況ではあるけどね。


「じゃあ、あれか。婚約者っていうのは名前だけで、シュラハはアイツと結婚する気はないのか?」

「だから、ないって。あの人とシュラハは、全然そういうんじゃないから」


 ただ。一つ問題があって。

「けどね。今のままだと、師匠がシュラハに財産を積んで、婚約の解消を申し出なきゃならないでしょう」

 私は言った。

「それじゃ、いくらなんでも師匠に悪いな、とシュラハは思ったの。今まで、さんざん面倒みてもらってるんだよ。それなのに、その上そんなことされたら申し訳なくて仕方ない。だから、シュラハは魔法大会に参加することにしたの」


「はあ?」

 星太くんが怪訝そうに言う。

「ホラ。あの大会、勝てば賞金が出るでしょう。それもいっぱい」

 私は説明した。チュウリィはお金持ちだから、きっと星太くんはそのことを気にしていないんだ。

「だから、あの大会で勝って、お金持ちになって。そのお金で、師匠との婚約を清算すれば師匠も自由になれるし。シュラハの生活の面倒をみなくても良くなるでしょう。そうすれば恩返しできるかな、って」

 それがシュラハの。彼女の、魔術大会に参加した理由なのだ。


「お前」

 絶句する星太くん。シュラハの健気さに感動してるのかな、と思ったら。


「バカか。何言ってんだ」

 呆れられた。

「あのなあ。前にも言ったけど、あれは王宮で仕える役人を選ぶための試験で、勝ったら賞金がもらえる大会とかじゃないぞ。確かに、選抜されたら支度金か何かが出たと思うけど、就職する気のないヤツがもらえるかどうかは分からないぞ」


 え。そうなの?


「ヘンだと思ったんだ、ロクに言葉もしゃべれないシュラハが魔術師登用試験なんて。まさか、金目当てだったとはな。しかも、その金で婚約解消しようと考えてたなんて」

 呆れ果てた、という口調。そんなにバカバカしかったろうか。シュラハなりに、一生懸命考えて出した結論だったんだけど。


「うわ、サイアク。お前、サイアク。チュウリィも、あの師匠野郎もカワイソウだ。もう少し、他人の気持ちとか考えろよな?」

 ムスッとした顔と声。うわ。それを、星太くんに言われますか、私。

「こんなことなら、もっと早く事情を聞いといてやるんだったな。そうしたらアイツだって、傷が浅くて済んだのに」


 私に背中を向けて寝転がり、ブツブツと呟く。ふて寝のポーズ?

 私、何かした?


「ねえ。シュラハのことで私に怒られても困るよ。シュラハと私は、別人なんだし」

 と言ってみると。

「どうだか。お前も、親の借金のカタに誰かと結婚することになってるとか、言い出すんじゃないの」

 と、何か投げやりな返事が返ってきた。


「そんなの、ないよ」

 と、返事をしてみる。

「あのね。借金って、親、生きてる限りは子供に支払う義務はないんだって。施設の先生から教えてもらった。死んだら死んだで、相続放棄っていうのが出来るし」


 それに第一、私が嫁に行ったからといって父の借金分に見合う得があるとは思えない。うちの父の借金、億単位だし。


「ホントだろうな」

 星太くんがちょっとだけ振り返った。

「うん。本当」

 うなずく。


「じゃあ、その」

 言いかけてから、星太くんは一つ咳払いをして。

「シュラハは、アイツのことどう思ってるんだよ、結局のところ」

 と聞いてきた。


「チュウリィのこと?」

 私は尋ねる。星太くんがうなずく。


「それはね」

 ちょっと考える。シュラハにとってのチュウリィ。それは。


「シュラハね、チュウリィのこと大好きだよ。親に置いて行かれてから、シュラハの周りには師匠しかいなかったの。師匠は魔術師だから、部族の他の人はあまり近寄って来ないし。でも、チュウリィは初めから、普通に話しかけて来てくれて」

 魔術師同士だから、当たり前なのかもしれない。でも、そんなことがシュラハにはすごく嬉しくて。

 

 その辺の気持ちが、すごく私の星太くんへの気持ちとシンクロして。話しながら、私は少し赤くなった。

「お姫様みたいにしてくれて、嬉しかった。キス、とかされて、すごくドキドキした」

 うわ。照れる。まるで自分が、星太くんに告白してるみたい。


「ホントかよ」

 ベッドの上で。星太くんがもう一度身を起こす。

「ホ、ホントだよ」

 私は。照れながら、言う。


「チュウリィと一緒にいる時間は、シュラハにとってすごく大切で。いつまでも、そんな夢みたいな時間が続けばいいと思ってた」


「ホントに。ちゃんとアイツのこと、好きなのか」

 身を乗り出してくる星太くん。

「す、好きだよ」

 顔が近付く。


「ホントに? ホントだな?」

 肩に手がかけられた。

 うわ。顔が近いよ。ドキドキする。


「ホントだよ」

 うなずいた。

 それだけは。シュラハの名誉のためにハッキリ言っておく。

 

 ムキになっていた星太くんは、何だか気が抜けたようにハーッとため息をついた。

「そうか。それなら、良かった。うん」

 うなずいている。

 それから。不意に私と顔を寄せ合ってることに気が付いたように。

 赤くなって、あわてて、体を離した。


「それ。そんなに確認しなきゃいけないこと?」

 聞いてみる私。自分のことじゃないとはいえ、結構。恥ずかしかったよ。


「だって、さ」

 もごもごとしゃべる星太くん。

「アイツ、裏切られたと思ってるから。恋人だと思ってたシュラハに、別に婚約者がいてさ。ダメージ受けるだろ、フツウ」


 ダメージ。

「チュウリィが?」

「う、まあ、な」

 口ごもる星太くん。

「他にもいろいろあって、ちょっとアイツ落ち込んでるから。それだけでも、分かって良かった」


 そうなんだ。

「もっと早くに、話していればよかったね」

 私は言った。

「そうしたら、夜中に天幕から追い出したりしなくてすんだのかもしれない」

「うん、まあ。けど、あれだろ、ほら。アイツとシュラハは、言葉が」


 確かに。チュウリィとシュラハには、言葉の壁があるけれども。

「けど、愛してる、好きだ、ってことくらいなら言えたよね」


 様々な光景を、思い出す。シュラハは。それをきちんと口に出して言ったことがあっただろうか。


 手に届かないと、あきらめて。自分につり合うはずがないと、決めつけて。

 シュラハは、私は。初めっから、手に届かないとあきらめていたんじゃなかったか。


「星太くん」

 私は、言った。


「な、何」

 ビクリとする星太くん。

 その目をまっすぐに見て。


「好きだよ。大好き」

 と、言った。


「な、何だよ急に」

 頬を赤らめる。

「うん。今、言っておかないといけない気がして」


 と、私は言った。

 初めっから、あきらめて。大人のフリして。でも、それは全部、傷付きたくないからじゃなかったか。

 ぶつかって、断られるのが怖くって。玉砕する覚悟がなくて。

 だらしなく、距離を置きたがっていただけじゃなかったのか。


「バ、バカ。僕だって」

 言いながら、星太くんは微妙に目を泳がす。

「す、す。好き、だよ……」


 その言葉は。いつもの、軽い調子じゃなく。

 何だか、妙に頼りなくて。


「ああっ。何か、調子でないな。お前が、急にヘンなこと言いだすから」

 星太くんは。顔を赤くして、何だか怒り出した。


 もしかしたら。いつもの軽い口調は、虚勢だったのかな。

 本当は、星太くんだって私と同じように。

 好き、なんて言葉を口に出すのは恥ずかしくて。ドキドキして。不安で。

 それでも、頑張って平気なフリをして。


「うん。知ってる」

 私は、手を伸ばして。

 ベッドの上の星太くんの上半身を、抱きしめる。

「いつも、気持ち伝えてくれてたよね」


 それは、いつも。傷付かないように武装した、刺だらけの、不器用なものであったけど。

 彼は何度も、ちゃんと気持ちを伝えてくれた。

 それに比べて、分かったフリして逃げ回ってた私は。恋という舞台に登るのを怖がっていた私は。

 とても、卑怯だった。


「ありがとう」


 私と星太くんの目が、近い位置でからみあう。

  

 そうして、私たち二人は、キスをした。


 星太くんの手が、私の背中を抱く。私は彼の胸に手を当てて。

 もう何度もしたキスだけど、まるで初めてのように胸をドキドキさせて。


 ねえ、星太くん。

 

 私たちは、弱いね。

 子供なんだね。

 こんなに頼りなく、自分の気持ちさえ不確かで。

 

 だけど。それでもこうやって。手を伸ばして、大切な人を摑んでおこうとすることは出来る。


 だから、これからも。怯えることなく、気持ちを伝えあって。

 信じ合える間柄でいられたらいい。


「ずっと傍にいたい」

 唇を離して、私は。彼の耳元で、囁く。


「当たり前だろ」

 と言って、星太くんはちょっとためらって。


「新は僕の、彼女なんだから」

 照れたように、そう言った。


 抱き合う。その温かさが。

 永遠だったらいいと、心から願った。


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