表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/15

怨念、そして敗北

それから幾度かのシュターベンとの戦闘をこなし、最初は最悪だった私達二人のムードも悪くはなくなってきていた。

そんなある日の事だった。

「サヤ、シュターベンが出ました」

「はいはい、りょーかい。場所は?」

「セントラル公園地区、ですね」

「此処からすぐ近くね。さっさと行こうか」

セントラル公園地区。

豊かな緑と綺麗な小川。

様々な小型動物達も生息するセントラルのオアシス的な場所だ。

気軽に、そして安全に自然と触れ合えるスポットだ。

其処にそのシュターベンは立っていた。

スマートな体は、多くのシュターベンの例に漏れず虫のようなフォルム。

あの感じだとカミキリムシを連想する。

その背中にはトンボのような翅が生えていた。

左手が鋭く尖っており、痛そうだ。……そりゃ痛いか。

「あのシュターベン、は……」

ルミナの呟きが私の耳に届く。

普段のルミナとは違う……どころか、シュターベンを前にした時のルミナの声とも違う。

その声には明らかな敵意と憎悪が込められているのが解る。

「ルミ、ナ――」

聞かずとも解った。

それが……そのシュターベンが……ルミナの家族の仇だと言う事は。

「ルミナ!!」

私の声が届くより早く、ルミナはランチャーを手にしシュターベンへと向かっていく。

ちっ、と舌打ちをし私もその後を追いかける。

『キリュ――』

ルミナを正面から見据えるシュターベン。

ルミナが手に持ったランチャーの引き金を引く。

鋭い杭がシュターベンに向かって真っ直ぐに飛び出した。

だが、シュターベンは杭を軽く避けるとルミナの脇を通り抜け、私の方へと向かってきた。

「ちぃ――来るなら来なさい!!」

私は、素早く呪布を三枚取り出す。

すると、それを目の前に投げつけて言葉を紡ぐ。

「風よ燃えよ――そして、切り裂け!!」

私の言葉に反応し、布に内包された魔力が解き放たれる。

炎を纏った風の斬撃がシュターベン目掛けて飛翔する。

それに対しシュターベンは、左手をそっと胸元まで持ってきた。

『ゥルルルルル――』

奇妙な唸り声を上げたかと思ったら、左手に仄かな輝きが見えた。

「何を――」

『ガァ!!』

その輝きは刃となり、私の放った炎刃とぶつかり合い、消え去る。

「うっそ……シュターベンが魔術を!?」

今までの報告で魔術を使用するシュターベンとは報告されていない。

また、初期と現在でその強さが違う、と言う事は何らかの学習機能、強化機能が付いている訳で……

「厄介な事になったわね!!」

そう呟きながら、デバイスを手に取り鎧を身に纏わせる。

ずっしりとした角ばったフォルム。防御力を重視した重装形態だ。

私はもう一発、攻撃魔術を行おうと札を取り出し言葉を紡ぐ

「風より速く、鉄より硬――」

その時、私の目の前にルミナが飛び出してきた。

その手には二刀のサーベル。

「――くぅ!? ちょっとルミナ!!」

危うく呪符を解く、ルミナに攻撃魔術をぶつけてしまう所だった。

或いは、そうしていた方が良かったのかもしれなかった……

「うわぁぁぁあああああああ――!!」

ルミナはサーベルを交差させシュターベンへと突っ込んでいく。

明らかに無謀、明らかに無茶。

「ルミナ――!!!!」

私の叫びは届かない。

切りかかってきたルミナ、その単調な太刀筋を軽く交わした後、ルミナの腹部に鋭い一撃を食らわす。

「ぐぅ…………」

たまらず膝を折るルミナ。

「ちぃ――」

私は鎧の外装を剥ぎ取り、軽装形態へと変化、それから加速形態へと変わるとシュターベンを一発殴りつける。

遠巻きに援護をしていた戦闘員達も隊長の危険に姿を現す。

だが――ダメだ。

「ちょっと、アンタ達は引っ込んでなさい! ルミナは問題無いから――」

しかし、その言葉に応じる者は居ない。

「アンタ達――!」

すると、その戦闘員の内の一人が口を開いた。

「私達は隊長の指示しか受けない。私達は隊長の命令通りシュターベンを討伐する」

「何言ってんの!? アンタ達じゃ勝てない事は明白でしょう!!」

「関係無い話だ。其処まで言うのなら貴女は下がっていてください。隊長のお体も心配です。隊長を連れて安全な所で待機していてください」

「な――――」

私が返す言葉に詰まっているその間に、戦闘はもう始まっていた。

そして最後に、戦闘員が私に一言こう告げた。

「隊長をよろしくおねがいします」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ