悲しき狼
「ロワーさん」
あの戦闘の後、私はロワーさんのもとを訪ねていた。
「あら、どうしたのかしらサヤちゃん」
私の急な訪問にも驚かずに接するロワーさん。
いや、恐らく私がここに来ると知っていたのだろう。
尤もこの人であれば知っていようがいまいが変わらず接するだろうが。
だが、今回ばかりは知っていたと思っていたとしか思えなかったが。
「時渡ルミナについて」
「あらあらやっぱり」
「やっぱり、って……」
「彼女、とても危なっかしいでしょ?」
「うん」
仲間に援護だけさせて自分一人で突っ込んでいって、挙句周りの声を無視。
シュターベンを倒す事が自分の身より大事だと言うような……
「ルミナは、何故シュターベンを倒す事にあそこまで執着すんの?」
私の質問に、ロワーさんは複雑な表情をする。
どうしようかしら……と呟き考えるような素振りをする。
だが、それも束の間だった。まるで一応の演技とでも言うように。
「彼女、シュターベンに家族を殺されてるのよ……目の前で、ね」
「家族……をね」
「あの子は今、護りたいモノが無くて投げやりになっている。そして倒しても倒しても減らないシュターベンにも、ね」
「………………」
「だから、かな。サヤちゃんを呼んだのは」
「何で私なのよ……」
「サヤちゃんは、目の前で死のうとする人を放っては置けないでしょ」
「別に、後味が悪いのが嫌いなだけよ……」
私の言葉にロワーさんはにっこりと微笑む。
「それじゃ、後味悪くならないように頑張って来てください」
「はいはい、りょーかいりょーかい」
聖堂を出て行こうとする間際、チラリと見えたロワーさんの横顔は何故だろうか、悲しみの色が映って見えた。