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お嬢様と雨の日の七夕編


 七月七日の七夕の日、〈幻想郷〉にあるどこか不気味な紅い色に塗られた〈紅魔館〉という名の屋敷の門には七夕の飾りの付けられた大人の背丈よりやや高いくらいの竹が飾られていた。


 「……ふぁ~~~」


 門番である”中華華人”の紅美鈴が大きな口を開けて欠伸をした、昼食を済ませたばかりのこの時間では、特に来客もなく暇であれば実際眠くなるのも仕方ないというところであろう。


 「さて、今年も〈博麗神社〉で七夕の宴会ですねぇ……」


 数時間前に準備をしに神社へと向った妖精メイド部隊の姿を思い出して呟く美鈴。

 彼女の主人にしてこの〈紅魔館〉の頂点に立つ吸血鬼の少女は、何かのイベントがあれば〈幻想郷〉のバランスを管理する巫女の神社で宴会をしようとするのは、純粋に宴会をしたいのよ巫女である博麗霊夢に対しての嫌がらせもなきにしもあらずであった。


 「……?」


 何気なく空を見上げてみて、少し前より雲が多くなり流れも速くなってきたように見えた。


 「……これは一雨きますかねぇ……?」


 きたら少し困るという風に炎めいた色の赤い髪を掻きながら言った。

 その彼女の背後にそびえ立っている〈紅魔館〉のリビングでは、屋敷の主である”濃霧のマナイタ”ことレミリア・スカーレットはソファーで寛いでいた。


 「マナイタマナイタとしつこいわぁぁぁあああああああああああっっっ!!!!!!!」


 ……と、実際いつも通りのパターンで大声を出して叫ぶレミリアの背後に控える”完璧で瀟洒なメイド”の十六夜咲夜は、まるで何事もないかのように実際メイド=サンらしい澄ました顔で立っていた。


 「お嬢様がマナイタなのはこの際どうでもいいですが……実は珍しくこの小説に感想がきまして」」


 前半部分に愕然となった後に「どうでもいいんかぁぁああああっ!!?」とツッコミを入れてから、後半部分の内容に気がついて「……感想?」と怪訝な顔をして従者の少女の顔を見つめた。


 「はい、読み上げますね?」


 言いながら咲夜が例の如くスカートの中から取り出したのは紙で折られた一羽の鶴であった、彼女は素早くそれを広げると元の長方形の形へと戻す。


 「……オリガミ・メールっ!!? ナンデェッ!!!?」


 ハガキではなくメッセージを書いてわざわざオリガミにするという面倒そうなものなのかが出てくる意味が分からないオジョー=サマである。


 そんな主人に対して従者の少女は「……忍殺のコミックに最近出てきたからでしょう?」と実際何でもない事のように言った。


 「………………」


 今更ながらにこの小説はすでに東方プロジェクトの皮を被った別の何かになってるわねと感じて呆れ返るレミリアである。


 「……それでですね……」 

-----------------------------------------------------------------------------

      やっぱりいつみてもおもしろいです!

      レミリアが可愛くて大好きです!

      またがんばってください

-----------------------------------------------------------------------------

 咲夜の読み上げたオリガミ・メールの内容に、レミリアは「へぇ……」と感心した声を出した。


 「……この私が可愛いねぇ、なかなか分かってるじゃないの?」


 まんざらでもなさそうな笑みを浮かべながら銀髪のメイド長を見上げる、その青みがかった銀髪の主人のどこか子供っぽい嬉しそうな顔を見下ろしながら「はい、私もそう思いますわ」と微笑む。


 「うふふふふ、そうよねぇ~」


 手の甲を頬に当てて満足そうな笑みを浮かべるレミリアの紅い瞳の見据える先は実際カメラ目線であった。


 「やはりオジョー=サマは今の路線をずっと貫けばよろしいのですわ!」


 だが次に咲夜の口から出てきた言葉に「……へ?」とその表情が崩れた。


 「日々イジラレながら周囲のボケにツッコミを続けるノーカリスマ、みんなから愛される吸血鬼こそ我らのオジョー=サマなのですわ!」


 両手を胸の前で組み少し陶酔したような口調で語る咲夜に「……あの~~もしもし~咲夜=サン?」と目を点にするレミリア。


 「そしてそんなオジョー=サマの姿を読み手の方々も可愛いと思ってくださるのでしょうね?」


 そうですよね?と同意を求めるようにウインクしてみせたのに、「おい! ちょっと待てやっ!!」と睨み返した時には、彼女の姿はそこになかった。


 「カリスマ溢れるお姿はゲームの本編のお嬢様にお任せしてですね、こちらのオジョー=サマはツッコミ系吸血鬼というネタキャラの道を迷う事無く進めばよろしいのですっ!!」


 次の瞬間には、レミリアの正面に立っていた咲夜が両手を大きく広げていたのである、その表情には実際悪意の欠片もまったくない。

 その顔を唖然と見つめていたレミリアは、身体をワナワナと震わせながらゆっくりとソファーから立ち上がる。 そして大きく息を吸い込むと実際怒った大魔神めいた表情で叫んだ。


 「ザッケンナコラ~~~誰が進むかぁぁぁあああああああっっっ!!!!!」


 その音量は実際〈紅魔館〉全体を地震めいて振動させたが、地下の〈大図書館〉で第六駆逐隊メインのお子様厳禁な薄い本を読んでいたパチュリー・ノーレッジ=サンは、「……今日も平穏な日ねぇ……」と何でもない事のように呟いていたのであったとさ。

 



 「……やれやれねぇ……」


 居間でテレビのワイドショーを視ていた境界"の妖怪”の八雲紫が呆れ顔で溜息を吐いたその理由は、またもやどこかの国で自爆テロがあったらしいとの話題であったからだった。


 「……大勢の人間を巻き込んで自分も死ぬ……そんな事したって何の意味もない無駄死になのにねぇ……」


 確かに世間には恐怖を与えられるかも知れないがそれだけである、そんなもので何が変えられるものではない。


 「まぁ……それも仕方なしか……」


 言いながらちゃぶ台の上の湯飲みに手を伸ばした。

 自分の頭できちんと考える事もせずに一時の感情のみで動き、他者の思惑に踊らされて、それが正義とちっぽけな自己満足のみを得て死ぬ……彼らに指示を出した者達はその死に感謝どころかムシケラが死んだ程度にも気に止める事もないだろうに。

 大半はそんな事を想像する能力すらないのが人間という生き物なのだから。

 だが、それも紫にはどうでもいい事であった。


 「……雨?」


 不意に聞こえてきた雨音に、彼女の式である八雲藍が洗濯物を出したまま買い物に出かけていると思い出して、手にしていた湯飲みを置いて慌てて立ち上がった。


 「……まったく、仕方ないわね」


 そう呟く紫の頭からは、先に考えていた事など消え去り庭に干してある洗濯物の心配でいっぱいになった。

 

 



 黒一色に染まった空から激しい雨が降り注ぎ、時折閃光と地鳴りめいた雷鳴が響き渡る。


 「うふふふふ……あはははははっ!! ざまーみなさいな、レミリア・スカーレット=サンっっっ!!!!!!」


 そんな中に傘も差さずにずぶ濡れになりながらも、自らの神社の屋根の上に立ち天に向かい歓喜の叫び声を上げている”楽園の素敵なシャーマン”こと博麗霊夢の姿があった。

 未明から降り始めた大雨のために、宴会の準備をしていた妖精メイド達はすでに撤収し境内は人っ子一人いない。 誰がどうみても今夜の宴会は中止であると分かる状況である。


 「これぞ! まさにブッダが信仰さいせんを守るための降らせた雨よっ!! あんたはそのブッダの力に屈したのよレミリアっ!!!!」

 

 まったく根拠のない事……というか、神社の巫女なのにブッダとかいいのだろうか?とようなを自信たっぷりに右腕を掲げて言い放つ。

 そんな霊夢の表情は、実際最後に惨めな死を迎える事になる悪の宗教家のそれであった。

 だが、天はその悪の宗教家……もとい霊夢の叫びに応えるかのように激しく閃光を放ち轟音を響かせ、そして…………。


 「アイェェェェエエエエエエエッッッ!!!?」


 ……という少女の悲鳴を響かせた。

 その後に、変わらずにうるさい音を立てて雨が打ち付ける神社の瓦屋根の上には、直前まで霊夢という脇巫女の少女であった黒い塊がブスブスと煙を上げながら転がっていた……。

 まあ……インガオホーでナムアミダブツである。



 

 レミリアは気がつくと砂利だらけの川辺にいた、向こう岸がまったく見えないそれは一見すると海にも思えないくはないが、彼女には川だと確信出来る。

 何故なら、そこには”アマノ・リバー”と書かれた立て看板があったからであった、そして自分の格好も普段のレースの服ではなく薄紅色の和風の着物であった。


 「まぁ……夢よねぇ……」


 はっきり言って、実際分かり易い状況である。

 その直後に背後に気配を感じたレミリアは、咄嗟に振り向く……事はせず、どっちかというと降り向きたくないという気持ちで溜息を吐く。

 普通の状況でありレミリアが普通の少女であれば、半ば夢と分かっていてもここで後ろにはどんな顔の男性がいるのかと期待するだろう。 しかし、これはへっぽこ二次創作の小説セカイであり、彼女もまたツッコミ系吸血鬼という全然まったくさっぱり普通の少女ではない。


 「じゃかましいわ~~~スッゾオラ~~~~!!!!」


 ヤクザ・スラングを交えたツッコミをするレミリアが、それでもまだ振り返ろうとしないのは、はっきりいってそこに何がいるかが分かりきっているからだ。

 というか、ドクシャ・予想力を持っている読み手の方にも予想は付いているかも知れない。

 しかし、いつまでもこうしていても先へ進まずに夢から覚める事も出来ないのもまた事実なので、渋々という顔でゆっくりと振り返るとそこには……。


 「ドーモ、オリヒメ=サン。 ヒコボシです」


 ……と、予想通り”七夕”という文字の刻まれたメンポを付けた実際ニンジャめいた男が合掌し見下ろしていた。


 「……はいはい、ドーモ、ヒコボシ=サン……つーか、この”ニンジャのスレイヤーっぽい男”って汎用性高いな、おい……」


 完全にナゲヤリな様子でアイサツを返すと、彼が唐突にジュー・ジツの構えをとったのをレミリアは怪訝に思う。


 「オリヒメ死すべし! 慈悲はないっ!!」


 そう叫ぶなりヒコボシは地面の砂利を蹴って跳びかかってきたのを、驚きながらも回避し叫ぶ。


 「アイェエエエッ!? ナンデェっ!? いきなりの戦闘開始展開ってナンデェっ!!!!?」 


 現代の日本には間違って広まっているが、本来は一年に一回宿命のライバルであるオリヒメ・ニンジャとヒコボシ・ニンジャがアマノ・リバーの川辺で壮絶な殺し合いを繰り広げる日がタナバタなのである。

 古事記にもそう書かれている。


 「んなわけあるくぁぁああああああああああっっっ!!!!!」


 その直後にジゴクめいたチョップ・突きが鼻先を掠めてヒヤリとなる、夢だとは分かっているのだが、何故か食らったら死ぬと思わせるような現実感があるのだ。


 「ふはははははっ!! 楽しい! 楽しいぞ、オリヒメ=サンっ!!!!」

 「わたしゃ全然楽しくないわぁぁぁああああっ!!!!!」


 歓喜の声と共に攻撃を繰り出してくるヒコボシに言い返しながらどうにかそれらを回避していくレミリア、そんなゴジュッポヒャッポの攻防はいつ果てるともなく続いたのであったとさ……。


 「おい! こら! こういうのは普通は目を覚ましてオチがつくもんだろがぁぁああああああっ!!!!?」



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