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幻想郷エイリアン編

 チュンチュンと鳥の鳴き声が響く早朝の〈迷いの竹林〉を周囲を見渡しながら何かを探している様子で歩き回っている薄紫の長い髪の上に兎の耳を生やした少女がいる、”地上のムーン・ラビット”こと鈴仙・優曇華院・イナバである。

 「まったく……どこに行ったんだろう……?」

 彼女の目的は藤原妹紅と殺し合いに行ってくると〈永遠亭〉を出たまま昨夜から戻ってこない主人の少女、”永遠のお姫様”の蓬莱山輝夜を捜索に来たのである。 その気になれば仲間の因幡てゐに依頼し妖怪兎を動因できない事もないが、彼女に姫様捜索を命令した八意永淋曰く「どうせ、妹紅と相打ちにでもなってグロッキーダウンしているんでしょうし、そんな大袈裟に騒ぐ事はないでしょう」との事であった。

 そんなこんなでかれこれ一時間は歩き回っていた時だった、数十メートル程先に倒れている二人の少女らしき姿を発見したのは。

 「師匠の言った通りって事かぁ……」

 そんな事を呟きながら死体めいて倒れている二人に近づいてく鈴仙は、一応は自らが仕える姫の宿敵たる少女も救助するつもりでいるのは、流石に放置しておくのは気の毒だと思うからであり、輝夜も永淋もその事を咎める事はないと分かっているからだった。

 そして、倒れた二人まで後数メートルというとこまで来た時であった……。

 「えっ!? ちょ……これって……ナンデッ!? これってナンデッ!!? アイェェェエエエエエエエエッ!!!!?」

 その能力で相手の気を狂わせる紅い目の兎少女は、まるで自らにその能力を使ってしまったかのようにNLS症候群めいた症状で叫び声を上げて早朝の静かな竹林に響かせるのだった。



 毎度おなじみ、〈幻想卿〉のとある湖の傍に建つ紅いお屋敷の〈紅魔館〉では【運命ツッコミを操る程度】の能力を持ち、”永遠に紅く幼いツッコミ”や”紅色のノクターナルツッコミ”の異名で呼ばれる少女、レミリア・スカーレットが昼食も済ませ自室の椅子に座りテレビを観賞しながらくつろいでいた。

 「だぁぁあかぁぁぁらぁああああっ!! それはもうええ加減にせんかいとゆーとろうがっこのアホ文士ぃぃいいいいいいいっ!!  スッゾオラァァァアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!!!」

 エセ関西弁とヤクザ・スラングを織り交ぜた怒鳴り声を上げながら椅子から立ち上がる青みがかった銀髪のお嬢様、そんなレミリアの背後に控えた”吸血鬼のメイド”である十六夜咲夜は、「うふふふふふ……」と楽しげに微笑んでいたが、何かを思い出したかのような顔になり青と白のメイド服のスカートの中に手を入れて綺麗に折りたたまれた紙をレミリアに差し出した。

 「……ゼェゼェ……はぁ? スカートの中から新聞っ!!? ナンデッ!!?……ガハァ~~ゼーゼー……」

 酸素不足で激しく呼吸が乱れていても更なるツッコミを決しておろそかにはしないレミリアである。 そしてその所為で陸に上げられたチョーチンアンコウめいて呼吸困難に陥った彼女が再びしゃべれるまでには十五分はかかった。

 「……《文々丸新聞》……? 何々?……藤原妹紅とその宿命のライバルの蓬莱山輝夜、変死体?で発見される……?……ドユコト?」

 ルポライターとして活動する鴉天狗の少女が書いた新聞の見出しの文字を声に出して読んだレミリアは、怪訝な顔で従者である少女の顔へと尋ねてみた。

 「はい、お嬢様。 何でも二人とも胸の辺りを身体の中から食いちぎられたような状態で発見されたと……そして更に奇妙な事は遺体の傍にサソリのような不気味な生物の死骸も落ちていたらしいのです……まぁ、二人とも死んではいませんが」

 「まぁね、そんな程度で死ぬんならあの二人だって苦労はないわよね……にしても、何のこっちゃ……?」

 この屋敷の主である吸血鬼の少女はわけが分からないという顔をしながらも、何かどこかで見た事があるようなシチュエーションだと思った。 しかし、少し考えてみても思い出せず、まぁーどうでもいいかと再びテレビに視線を戻した。

 「………………」

 「あらあら……」

 大画面の液晶カラーモニターに映っていたのは昔の映画で宇宙に進出した人類が凶暴な宇宙生物に襲われるというもので、ちょうど宇宙生物に幼体を寄生され繁殖に利用される憐れな犠牲者のシーンであった。

 「……ねえ、咲夜……?」

 「何でしょうか?」

 「これって……確かサソリみたいな生き物に幼体を……だっけ?」

 出来れば違ってほしいなと祈りつつ聞いてみるレミリアだったが、銀髪で青い瞳のメイド長は「はい、フェイス・ハガー=サンです」と淡々とした口調で肯定した。

 「……はぁ~~~」

 これはまたろくな事にならいだろう予感……いや、確信したレミリアは疲れた顔で盛大に溜息を吐いた。

 同じ頃、天邪鬼の妖怪の鬼人正邪は〈紅魔館〉の裏庭にいた。

 「くっくっくっく、〈紅魔館〉の吸血鬼共もこの正邪様がよもやすでに潜入しているとは夢にも思うまい」

 前回の話からダーク・レイムの部下となった正邪がこんな所にいる目的は、レミリア・スカーレット以下、紅魔の屋敷の面々をギャフンと言わせて前回の仕返しをして来いという指令を受けたからである。

 「さてと、どういう手を使って……?」

 その時、背後に気配を感じ振り返った正邪は、次の瞬間に驚愕に目を見開く事になった。

 「……ちょ、おい……うそだ……アイェェエエエエエッ!!!?」



 死した者達が穏やかに眠る〈命蓮寺〉の墓地を一人の少女が歩いているが、彼女は別に墓参りに来たというわけではない。 水色のショートボブに特徴的な青と赤のオッドアイの瞳、そして手に持っている茄子色の番傘には不気味な一つ目とでろんと長い舌を垂らした口、”愉快な化け傘”の多々良小傘である。

 「……今日は静かな日だなぁ……ふ~お腹空いたなぁ……」

 人を驚かす……しかし、それ以上の事をするでもない唐傘お化けの少女は、何気なく白い雲のゆっくり流れる青い空を見上げながら誰にともなく呟いた。



 「……は? 鬼人正邪の惨殺死体? 〈紅魔館うち〉で……ナンデ?」

 自室で今度は刑事ドラマの再放送を観ていたレミリアにその報告をすればおそらくはそういう反応になるだろう事は、咲夜には予想のついていた事であった。 だから「おそらくは、ダーク・レイム=サンの指令を受けて〈紅魔館ここ〉に嫌がらせをしにでも来たのかと……」と用意していた答えを返した。

 「いや……それはそうなんでしょうけどさ、私が聞きたいのは誰が正邪を殺したのかって事よ、咲夜」

 「そうですねぇ……」

 再び主人に問われて考え込む咲夜、まず妖精メイドは除外される、もちろん彼女らに無礼な侵入者は容赦なく攻撃せよとは命じてはあるが、妖精の戦闘能力では正邪といえど相当に数の差がない限りは勝つのは無理だろう、そしてそれだけの数の妖精メイドが戦っていて気がつかない咲夜ではない。

 次に門番の紅美鈴だが、例え敵であっても無駄な戦闘は極力回避したり逃げる敵を追う事をしないあの中華風装束の少女が惨殺などをするとは考えにくい、この小説セカイではツカサの名前を持つ小悪魔にしてもそこまでするとも思えない。 

 妹様ことフランドール・スカーレットやレミリアの親友であるパチュリー・ノーレッジならあるいはという可能性はあるが、その二人は今日は自室や〈大図書館〉から一歩も出ていないのは、先程おやつを運びに行った時に確認済みであった。

 その事を話してみると、「……じゃあ、誰なのかしらねぇ?」とレミリアも首を傾げた……まさにその瞬間だった、ガシャン!パリンッという音を響かせて何かが飛び込んで来たのは。

 「お嬢様っ!!!!」

 「へっ!?……ちょ……何!?」

 素早くレミリアをかばうように前に出る咲夜、その主人の少女は突然の事に状況が理解出来ずに目を丸くしていた。 その少女二人の眼前にいるのは黒い身体を持った二体の生命体のようである、何故”ようである”かなのは、その二体の生物の全身に

モザイクがかかっているからである。

 「なんでやねぇ~~~~~んっ!!!?」

 当然の如く勢い良く椅子から立ち上がったレミリアのツッコミが響く。

 「小説なのにモザイク!? ナンデっ!!? 意味がわからんわぁぁぁああああああああああっっっ!!!!!!」 

 両手とついでに背中の黒い翼をワナワナと震わせるレミリアに、スカートの中から《銀のナイフ》を取り出して身構えていた銀髪の従者は極めて冷静に答える。

 「おそらくは……単にあれ(・・)の姿とかを描写するのが面倒になったのかと思われます……」

 「ただの手抜きくぁぁぁあああああああっあのドアホ文士ぃぃいいいいいいいいいいいっっっ!!!!!!」

 素人が見ても隙だらけの主従漫才が繰り広げられる間に謎の黒い生物が攻撃を仕掛けて来ないのは、あまりに奇怪な行動に何かの罠かと思っているのか単に主従漫才が愉快なので見ているのかは、当人達以外には理解不能な事である。

 「……まぁ、この際それはどうでもいいですし、この無礼な侵入者をさっさと倒してしまいましょう」

 「どうでもよくないでしょうぉぉぉおおおおおおっ!!!!」

 背後からの主人の絶叫を気にする様子もなく《銀のナイフ》を床に投げ捨てた咲夜が次にスカートの中から取り出したものは、メタリックな銀色をした拳銃のような物であった。

 「……はい?……てか! それって……ナンデッ!!?」

 それが銃なのは間違いない、だが銃身にエネルギー・ゲージめいた光があるその地球製のそれとは明らかに違うデザインをレミリアは確か何かの映画の中で見た記憶があった。

 「以前に倒した狩猟宇宙人のスギィ・チャーン=サンの持ち物です、お嬢様」

 半ば錯乱しかけているレミリアの質問に律儀に答え、”妹紅死す!? 恐怖の狩猟宇宙人vs巫女編で遭遇したエイリアンの名前を出しながら、冷たさを感じさせる青い瞳に獲物を移しながら銀色の銃を構えた。

 「慈悲はない、ハイクを詠めっ!!」

 「詠めるかぁぁぁああああああああああああああっっっ!!!!!!」

 この短い時間にいったい何度目なのかというオジョー=サマのツッコミの絶叫と共にトリガーが引かれ、銃口から蒼く眩い閃光が放たれた。 その光は触れた黒い生物らは瞬時にバラバラにし、更には斜線上の壁をも破壊せしめた。

 「…………ふぅ、ナムアミダブツです……」

 「…………」

 閃光が収まると、小さく息を吐きながら銃を降ろす咲夜と、その後ろであんぐりと口をあけてボーゼンとなっているレミリアの姿。 謎の黒い生物を脚の欠片を残して消失せしめた蒼い光は、レミリアの部屋の壁に象でも通れそうな大穴を空けていた。

 「……私……今日はどこで寝たらいいのかしら……?」

 



 ゲーム本編ともこの小説とも違うセカイの博麗霊夢……ダーク・レイムの居城と言うべき〈黒博麗神社〉の地下にある〈煉獄の間(仮)〉とは、ダーク・レイムの命令の遂行に失敗した者に制裁を加えるために存在する部屋である。

 その部屋の天井からロープで吊るされているのは、〈紅魔館〉で惨殺されていたはずの鬼人正邪であった。

 「しかし、登場二回目にして早くも【ネタキャラなので絶対に死なない程度の能力】に目覚めるとは……」

 吊るされた正邪の姿を呆れたような感心したような顔で見上げるダーク・レイムに「何なんですか~そのヘンテコな能力は~~~!!!?」と正邪。

 簡単に言ってしまえば蓬莱山輝夜や藤原妹紅ら蓬莱人のそれとは違い、ギャグキャラゆえに何があっても死ぬ事がないという不死性の事だ。

 「えぇぇええええええっ!? あたしっていつからギャグキャラにぃぃいいいいいいいいいっ!!!?」

 洪水のような涙を流しながらダーク・レイムではなく何故か天井へ向かって叫ぶ正邪に、「ま、ニンゲンも妖怪も諦めが肝心よ?」と冷たく言う白と黒の装束を纏った暗黒の脇巫女。

 「…………まぁ、いいわ。 さてと、今回はどんなお仕置きがいいかしらねぇ?」

 サディステックな黒い笑いを浮かべるダーク・レイムと、「アイェェェエエエエエエッ!!!? どうかお許しをぉぉおおおおおおおっっっ!!!!!」と泣き叫びながら必死に懇願するセイジャ=サンだった。

 ちなみに今回のお仕置きは、大量の氷を放り込まれた実際凍死するくらい冷たい水のプールでの八時間耐久のカンチュー・スイミングであったとさ……。

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