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幻想郷ウルトラ列伝?編


 正月の三が日も終わりひとまずは平常運転へと移行した〈紅魔館〉では、この紅い屋敷で唯一の人間でありメイド長の職にある十六夜咲夜が屋敷内の長い廊下を掃除していた。 典型的なデザインの青白のメイド服を纏った銀髪の咲夜が少し困ったような表情で箒を掃く手を動かし続けているのは、そろそろ昼食の支度をしなけれあいけない時間なのだが、掃除は掃除で作業が遅れ気味だったからでる。

 「……ふむ、こうなれば奥の手を使いましょうかね……」

 誰にともなく呟くと一旦掃除の手を止めた、そして精神を集中し僅かに険しい顔となる。 その時に妖精メイドの一人であるフェア・リーメイドが「あ、メイ……」と声をかけてきた。

 「時よ、止まれ。 【ザ・ワールド】!!」

 「……ド長……あれ?」

 フェアの言葉を遮るかの様なタイミングでの咲夜の言葉の次の瞬間に、彼女の姿はフェアの視界にはなかった。 いきなりの事に状況が分からずに目を白黒させていると、背後からの「……ふ~~」と息を吐く音に振り返ってみれば、そこには手で額の汗を拭うメイド長の姿があり、更に周囲の掃除も終わっている事に気がつくフェア。

 それでようやく状況を理解する”妖精メイド三人衆”の一人である少女である。

 「メイド長が【時間を操る程度の能力】を使ったのね……」

 簡単に言えば自分以外の時間を止めてその間に掃除を完了させたという事である、どうやらゲーム本編では多用しているのだが、この二次創作しょうせつではそれなりに妖精メイドが仕事をこなせるのであまり使うこともないのは、いかに勤勉な性格であってもいらぬ苦労はしたくないからであろう。

 「……フェア、悪いけど掃除道具の片づけをお願いね、私はすぐに昼食の準備があるから」

 フェアのその小さな呟きではなく時を止めている間に彼女の存在に気がついていた咲夜は、メイド長の立場にある者らしく部下である妖精の少女に指示を出した。

 そんな日常の平和な光景の繰り広げられている〈紅魔館〉の屋根の上に一人の少女が不敵な笑みを浮かべて立っている、黒い髪に赤と白のメッシュの入った頭部にはちょこんと二本の角が見え、身に纏っている白いワンピースのスカートには矢印の様な奇妙な模様が描かれていた……。

 「くっくっくっくっ……」

 邪悪な悪魔めいた笑いを浮かべる彼女のは人正邪という名前を持つ妖怪天邪鬼である。

 「ふふふふふ……って!? ちょい待てやこのアホ文士っ!!!! キジンのキの字がおかしいぞっ!!? 私は鬼人・・正邪だぁぁぁああああああああああああああっっっ!!!!!」

 怒りに目を吊り上げた正邪の怒鳴り声が冬の空の下に響く渡った。



 〈人里〉から〈博麗神社〉への途中にある〈魔法の森〉の入り口にある〈香霖堂〉という古道具屋は、森近霖之助という名の半妖の青年が経営する店だ。 その店に”境界の妖怪”の八雲紫が今日来店した目的は、この店で売りに出されていたあるものを買い取るためだが、それは別にその品物を紫がほしいからではない。

 そんなものがこの〈幻想郷〉にあってはいらぬ問題を引き起こしてしまうのではないかと考えて然るべき対応をしようという判断であるのは、八雲紫という妖怪がこの〈幻想郷〉を大事に想う由縁である。

 「……え? 売れてしまったの?」

 様々なものが雑多に置かれ道具屋というより倉庫めいた印象の店内で長い金髪を端をいくつにも束ねた紫が少し困惑した顔で聞き返すのは、まさかあんな物を買おうと思う者がいるとは想像してなかったからである。

 「ああ、昨日にね」

 カウンターの椅子に腰掛けた銀色のショートボブに眼鏡をかけた知的しそうな顔立ちの青年は淡々と事実だけを述べる、商売人としては愛想のない態度ではあるが、彼のそんな性格は承知しているので紫がムッとなる事はない。

 寧ろ、急用があったとはいえこの件を後回しにしていた事を失敗だったかと思う。

 「それで……いったいあんな物を誰が買っていったのかしら?」

 別に守秘義務があるでも、の世界の個人情報保護法も無関係な〈幻想郷〉の住人である霖之助はいともあっさりとその問いに答えた。

 「ん? ああ、十六夜咲夜だけど」

 「十六夜……あの〈紅魔館〉の十六夜咲夜が……?」


 


 青い冬空の下に「アイェェェエエエエエエッ!!!?」という正邪の悲鳴が響き渡ったのは、〈紅魔館〉の屋根の上に立つ彼女の尻に《銀のナイフ》が突き刺さったからだ。

 「……まったく、誰かと思えばあなたですか、奇人正邪……」

 正邪の背後三メートルほどの位置に、いつの間にかメイド服姿の少女が立ち威嚇するような目で睨みつけていた、正規の来客ではなく勝手に屋根の上に登っているような不法侵入者に容赦する気はない。

 「あだだだ……て! い、十六夜咲夜……いつの間にっ!?……てか、あたしは奇人じゃないって言ってんだろぉぉおおおおおおっ!!!」

 刺さったナイフを抜いても痛みの残る尻を擦りながら叫ぶ正邪の赤い瞳には涙が滲んでいるのは、痛みのためか奇人呼ばわりされた悔しさか、はたまたその両方か。

 そのいずれかであっても、咲夜には関係ないし知ろうという発想も浮かばない。

 「……くっ、あたしがここにいるのをどうして……」

 「誰に言ってたのか知りませんが、あれだけの大音量で叫べば誰でも気がつきますよ?」

 「くっ……そういう事か! 謀ったな、あの書き手アホめっ!!!!!」

 何が謀ったななのか分からないが別に知りたいとも思わない咲夜はスカートのなかから取り出した数本の《銀のナイフ》を指の間に挟み構えた。 まだ昼食の支度も途中だった彼女には、これ以上の無駄話で時間を消費する気もなかった。

 目の前にいる少女は確かに”東方輝針城”の黒幕ではあったが、それも”輝く針のリリパット”こと少名針妙丸と《打ち出の小槌》を利用しての事であり、正邪自身はたいした力を持たない妖怪なのだ。

 だから、油断はしないものの台所に出現した黒い悪魔を退治でもするかのような余裕の表情をしてみせる咲夜である。 そんなこの屋敷で唯一のニンゲンの少女に対して正邪が「くっくっくっくっ!」と笑い出す様子は、とてもピンチな状況にあるとは思えないものであった。

 「咲夜ぁ! このあたしを、この小説セカイの鬼人正邪様を”輝針城”や”弾幕アマノジャック”のあたしと一緒にしない事だっ!!!!」

 アニメの悪役めいた邪悪な笑い顔で叫ぶ正邪の右手には、いつの間にか短剣のような形状の黒い物が握られていた。 しかし、シルエットこそ短剣を連想させはするが、明らかに刃物ではないと分かる。

 「……!?……それはっ!!?」

 「そして……こいつだぁっ!!!!」

 やはりいつの間にか左手で握っていた人形を咲夜に見せ付ける、人形とは言ったがそれは人型ではなく恐竜のような外見の物であった。 そして正邪がその人形の足の裏を短剣状の物体の先端へとくっつけた瞬間発生した黒い光が、あっという間に精じゃの身体を包み込んだ。

 「これは……!!」

 咲夜が驚愕の表情を浮かべた時には光は消え正邪の姿もそこにはなかった、その直後にズシンという激しく響く音とともに激しい揺れが襲いバランスを崩しそうになるのを何とか堪えた。


 

 「……うにゃ……?」

 朝はいつもの時間に起床し朝食も摂ったレミリア・スカーレットが自室の天蓋付のベッドで眠っていたのは、どうにも身体がだるく横になったらそのまま眠ってしまったからだったが、不意にそれを妨げられて猫の鳴き声めいた声を出していたのは自分では気がついてはいない。

 「……まったく……何なのよぉ……」

 眠い目をこすりながらも身体を起こしてベッドから床に降りると、枕元に置いてある帽子を被るのも忘れて窓の方へと向かった。 そしてまだまだ半開きの眼で外の様子を伺ってみて、一瞬にして眠気が吹っ飛び紅い瞳が驚愕に見開かれたのである。

 「アイェェェエエエッ!!!? 〈紅魔館うち〉の前に大怪獣っ!!!? ナンデェェェエエエエエエッ!!!!?」

 そこには特撮映画にも出てきそうな怪獣が今にも襲い掛かってきそうな雰囲気で立っていたのである、典型的な肉食恐竜のような巨体の頭には一本の角を生やしたその姿をレミリアは最近テレビで見た記憶があったがすぐに思い出せない。

 「それは確か……用心棒怪獣のブラック……」

 「ストップよ、咲夜! それ以上は言ってはいけないわっ!!」

 屋根の上の咲夜がその正体を知っていたのは主人の吸血鬼少女と一緒に偶々観ていたのを記憶していたからだ、そしてその名を口にしようとした彼女を制止した声は正邪のそれである。  

 「……成程、そういう事ですか……」

 「そういう事だ、サクヤ=サン! あたしは今はダーク・レイム=サマの部下って事なのさっ!!」

 怪獣と一体化しその視点から見下ろしている〈紅魔館〉は実際ドール・ハウスめいていた、その気になればいつでも屋根の上の咲夜ごと踏み潰せるという余裕が彼女を愉快にさせ増徴させていた。

 一方の咲夜は驚きはしたもののその表情は絶体絶命のピンチに陥っているとは思ってはいない、まだ余裕があるという表情と声でふと思い浮かんだ疑問をぶつけてみる。

 「そうですか、ところで……彼女の部下にはエリカ=サンというのがいたと思うのですが?」

 そんな態度が正邪は気に入らないが律儀に「……エリカ=サンは退職しました……」と教えてやった。

 「成程、そうですか……」

 納得がいったという顔で呟きながらスカートの中に手を突っ込む、そして取り出したのは先とは違い《銀のナイフ》ではなく、正邪の持っていた短剣状の物を取り出したがこちらは銀色をしていた。

 それを見た正邪――というか黒い体躯の怪獣――が驚愕し「ちょ……そ、それって……」と声を上げた。 咲夜はにやりと口元を歪めて嗤うと短剣状の物体を掲げてみせた、すると底の部分が開き中から銀と赤の人形が一体飛び出しメイドの少女は地面に落とす事なくそれを右手で掴む。

 それから間髪入れずに先程の正邪と同じく人形の足の裏を短剣状の物体の先端に当てれば、白く眩い光がその身体を包み光が消えた後には彼女の姿はなかった。

 代わりに天空から舞い降りて来た一人の巨人が怪獣の頭部に蹴りを見舞いった、その奇襲攻撃に「アイェェェエエエエッ!!?」と叫び地面に倒れる怪獣と見事に着地して見せる巨人の振動で揺れる紅魔の館。

 「アイェっ!? 今度かウルトラの銀河っ!!? ナンデェェエエエエエエッ!!!?」

 地震めいたその揺れを窓のふちに掴まり堪えながらも、ツッコミは忘れないレミリアである。

 「ば、馬鹿な……何でそれをあんたが持ってるんだいっ!!?」

 立ち上がりながら叫ぶ怪獣・正邪、油断なくファイティング・ポーズをとる銀河・咲夜は「昨日、〈香霖堂〉で見つけて購入したのですよ」と正直に答えてやる。

 「売ってたのっ!!? 〈香霖堂〉でっ!!!!?」

 「そうですよっ!」

 そんな馬鹿な!というように声を上げる怪獣・正邪の視線の先で銀河・咲夜はその両腕を胸の前の交差させた、すると銀と赤のボディーの各所にある青いクリスタルのような部分が発光し始めた。

 「……ってっ!! ちょっと待ていっ!!!! いきなり決め技とか反則ってかお約束無視だろぉっ!!!! こーゆーのは普通もっと格闘で戦ってから……」 

 困惑と焦りを浮かべた怪獣・正邪の抗議は、「そんなものは存じませんっ!!!!」という言葉に遮られ、同時にS字に腕が開かれ光線が放たれた。 

 「ひ、ひぇぇええええええええええっっっ!!!!?」

 恐怖に悲鳴を上げる怪獣・正邪の黒い身体に容赦も慈悲もない必殺の光線が直撃してあっけなく爆発四散させたのであった……ナムアミダブツ。

 「…………目が覚めたらいきなりウルトラな怪獣バトルとか……ナンデ……?」

 唐突に自宅の前で行われた光景を現実のものと受けいれられず呆然と呟くレミリアは、自分がまだ夢の中にいるのだろうと思いたかった。  




 「……やれやれねぇ」

 〈紅魔館〉から少しはなれた湖の畔で大きく息を吐いたのは八雲紫だった、彼女の手には爆発で吹き飛ばされたのを回収したのであろう、黒い短剣状の物体が握られていた。

 どうにかして咲夜から”あれ”を譲って貰おうと交渉しに来てみれば、銀色の巨人と黒い怪獣のバトルに遭遇してしまったのである。

 「……さて、どうしたもかしらねぇ……」



 〈幻想郷〉の某所にある〈黒博麗神社〉にこのセカイとゲーム本編とも違うセカイの博麗霊夢であるダーク・レイムの住居である、この小説セカイの〈幻想郷〉を恐怖と絶望で包もうという建前の元に嫌がらせを行う彼女は、今は地下にある〈煉獄の間(仮)〉にいた。

 蝋燭の明かりだけで照らさせる薄暗く不気味な部屋の木製の床に立ち見上げているのは、天井からロープで吊るされた鬼人正邪だ。

 「ひぃぃぃいいいいいっ!!! お、お許しをダーク・レイム様ぁぁああああああああああああっ!!!!!」

 怯えた顔で滝の様な涙を流しながら必死に叫ぶ正邪を見つめるダーク・レイムは愉快そうに嗤う。

 「安心しなさい正邪、何も殺そうとかは考えてないからぁ★」

 実際邪悪な笑顔のダーク・レイムに左手にはリモコンが握られていた、黒と白の脇巫女服の少女がボタンのひとつを押すと正邪の真下の床がスライドして空いた四角い穴から不気味な蛸の足めいた触手が何本も伸びてきた。                     「あひぃぃぃいいいいいいっ!!!?」

 その光景によからぬ想像しか浮かんでこない天邪鬼の少女はその恐怖に必死になって身体をバタつかせるが、そんな少女の抵抗を嘲笑うかのようにニュルニュルと伸びてきた触手が先の戦闘でボロボロになった白いワンピース姿の正邪の胴体や手足に巻き付いたり、履いていたサンダルを脱がせたりした後…………。

 その足の裏や脇の下をコチョコチョとくすぐり始めたのであった。

 「ぎゃはははははっはひぃぃぃいいいいいいいいっっっ!!!? ちょ……や、やめひぇぇぇえええええええええええっっっ!!!!!?」

 静かであった〈煉獄の間(仮)〉に憐れな少女の大きな泣き笑いが響く、その赤い瞳から大量の涙を流して悶える正邪にダーク・レイムは「……名づけて”触手擽りの刑”ね、初陣であいさつ程度のつもりだったからこれでもソフトなのを選んであげたんだから、感謝しなさいよ?」と実際拷問人めいた顔で言ったのであった。


  


 ちなみに、咲夜の持っていた銀色の短剣状の物体は交渉の末に紫が買い取った後で然るべき処置がとられたのであった。 


最後登場のお仕置き部屋はまだいい名前が思いつかないので(仮)で、思いついたらそれに変更する予定です。

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