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出撃、フラン艦隊編


 最初は何が起こったのか、彼には理解できなかった。

 紅美鈴が明らかに異常と言えるニンジャめいた戦闘能力を発揮したかと思えば、次はまるでνガン〇ムめいた装備を付けた咲夜の登場である。


 「……どうなっている……?」


 ゾンビ達の後方で戦いを眺めているつもりであったトーホ・マッポは、序盤から計画が狂ったのを感じたが、まだこれからいくらでも修正出来ると思っていた。             

何故なら戦力差は圧倒的であり、たった二人が異常な強さを発揮してもやがて疲労で倒れるであろうとは容易に想像がつく。

 しかし、その楽観的な思考を打ち消すかのような轟音が響いたのは、その時であった……。

 「……なっ!? 何……!?」

 不意に轟音が響き、直後に起こった爆発でゾンビが十数体消し飛んだのは、レミリアには実際砲撃に見えた。 咄嗟にその砲撃に主の姿を探そうと視線を巡らせると、隣に立っていた咲夜が双眼鏡を差し出しながら湖の方向を指さした。

 

「…………」


 どこから持ってきたのかを今更問わないのは、どうせスカートの中から取り出したのだろうと分かるからである。 だから無言で双眼鏡を覗いてみると、湖の上に立つ数人の少女の姿が見えた。

 そう比喩とかではなく本当に生身の少女が水面に二本の足で立っているのだ、しかも彼女達は全員が大砲や艦船の一部にも思える装備を身に着けている。


 「……ナンデ?」


 双眼鏡を覗いたまま唖然となるレミリアに、「うふふふ、あれこそ我が精鋭艦隊よっ!」と答えたのは、フランドールである。 自信たっぷりで不敵な声に双眼鏡を降ろして妹の方を見ると、彼女はいつのまにか海軍の白い制服を纏っていたのであった。


 「……はい?」


 呆然と目を点にする姉を気にもせず、フランドール……いや、フランドール提督は右手に持った携帯型の無線機を使い指示を出す。

 「アイサツはそれでじゅうぶんよ『長門』! 次は本気で行きなさいっ!!」 

 その提督からの指令を装備に内蔵された無線機を通して受け取った『長門』は力強い声で「了解しました、提督!」と返事をして通信を切ると背後の仲間を振り返った。

 「提督からの命令だ! 本気で行くぞっ!!!!」

 かつてビック7と呼ばれていた頃の気分を思い出しながら仲間達に号令をかけると、彼女達も「「「「おおっ!!!!」」」」と気合の入った声を上げ、一斉に砲撃を開始した。

 かつての姿にくらべればその艦砲も人間サイズにまで小型になっていても、その迫力ある音も威力もなんら劣りはしない。 着弾し凄まじい炸裂音がひとつ鳴るたびにゾンビ十数体を文字通りに消し飛ばしていった。



 「……くっ!? よもやこんな……東方でこうも堂々と艦〇れネタを使うとはどこまで東方を愚弄するかっ!!!!」


 激しい苛立ちの籠った声で吐き捨てながら、トーホ・マッポは新たに表れた敵の戦力を確認する。


 「『戦艦・長門』を旗艦に『戦艦・陸奥』……それに『戦艦・大和』に『戦艦・武蔵』かっ!! だが……何故そこに駆逐艦が、『駆逐艦・漣』が混じっているのだっ!!?」


 大口径の主砲を持つ戦艦に混じった一隻の駆逐艦は明らかに編成において異質な存在だったが、その理由はトーホ・マッポにはまったく思いつかなかった。


 「ちゃっかり自分の嫁艦入れやがったな、あの書き手アホぉぉぉおおおおおおおっっっ!!!! つーか! この小説は東方であって艦こ〇じゃねえからなぁぁああああああああっっっ!!!!!」


 幾度も繰り返される爆音をも打ち消さんばかりの大音量で響いたレミリアのツッコミの叫びは、いつの間にか彼女らに接近していた数体のゾンビを実際弾き飛ばして爆発四散させたが、流石に咲夜を初めとした〈紅魔館〉の住人は耳を塞ぎはしたもの平然としたものである。


 「うむ。 流石はフランの育て上げた精鋭艦隊だな!」


 感心した風のパチュリーの声に「……いや、感心して……?」と怪訝な顔をしたのは、その声も口調もまるで男のものに聞こえたからだった。 何となく……いや、百パーセントのいやな予感を覚えて彼女を見ると……。


 「ドーモ! 私がパチュリー・ノーレッジ(代理)です!」


 ……と、合掌しお辞儀をしたのは、パチュリーの服を着て”代理”と刻まれたメンポを付けた忍殺風の男であった。


 「やっぱりかぁぁぁあああっ!!!?……つか本物パチェはどこに行ったのよぉぉおおおっ!!!?」


 もはや訳が分からないと錯乱し始める主人の問いに、「……パチュリー様でしたら……」と右の人差し指を立てる仕草をするメイド長は、まったくもって落ち着いた様子だ。


 「つい先ほど、”ちょっと”博麗神社例大祭”に行ってくるわ”と言って小悪魔のツカサと出かけられましたよ?」


 言いながらまたも迫って来た一体のゾンビに対しさりげなく《銀のナイフ》を投げつける、頭部と男の大事な部分にナイフが突き刺さったゾンビは「あばぁ~~~さよなら~~~~!!」と爆発四散。


 「…………はい?」

 「お嬢さまも聞いていたはずでは?」


 そう言われれば”十月の十六日は例大祭に行くわ”と確かに言っていたような気はした……が、この非常時に何を考えてるのだと親友である魔女に怒りを覚えた。


 「……って言うか! 小説これの時系列におかしいでしょうがぁあああああああああっっっ!!!!!」


 このトーホ・マッポ編が始まったのが九月の終わり、話の時系列的には数日しか経っていないはずなのに、何故唐突に十月の十六日になっているなどと、明らかにメチャクチャである。

 だが、咲夜の方はまるでレミリアの言っている事の方がおかしいとでも言いたげに首傾げて言った。


 「まぁ……今更そんな細かい事は気にしないでいいかと……」


 唖然となったレミリアの後方に着弾があって爆発音を響かせたのはその直後にだった、そしてそれは彼女のカンニンブクロが破裂したような音にも聞こえた。


 「いいわけあるくぁぁあああああああああっっっ!!!!!」


 そんなこんなでまたツッコミの咆哮を響かせるオジョー=サマであった。

 ちなみにこの時、「……あらら? 照準が狂ったかー」と『漣』が呟いていた事は、もちろんレミリアの知る由もない事であった。

 

 

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