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大晦日の幻想郷編

今回はまったりとした?幻想郷の大晦日の風景を書いただけです。


 東方幻想曲物語 幻想郷の大晦日編


 12月31日、今年も後数時間という時刻に洗濯物を入れていた十六夜咲夜が主のレミリア・スカーレットに「ちょっと来なさい!」と連れ出されて紅魔館の門まで連れて行かれた。

 「ねえ、これは何?」

 「……お嬢様が特別休暇を出した美鈴の変わりに短期で雇ったバイトの門番、大魔王モンバーンですけど……?」

 「…………へ?」

 怪訝な顔の咲夜の答えに自分が指差したものを確認すると、凄い威圧感を放ち門の前に立つ長い顎鬚の老人だった。 レミリアは少し焦った顔で「違う、違うわ。 こんなのはどうでもいいのよっ!」と別の場所を指で指す。

 「……これとかこんなんのとか失礼な……」

 ムッとした表情になるモンバーンの隣にある物を見た咲夜は「ああ」という声を出してレミリアにその名前を教える。

 「それは門松というお正月飾りですが……あ、ちなみのその門にかけてあるのはしめ縄と言ってですね……」

 「それくらい知っているわっ!!」

 主人の吸血鬼に大声で怒鳴られた咲夜は一瞬キョトンとした後で「知ってるなら聞かないで下さい」と言うとレミリアはワナワナと身体を震わせた。

 「あのね咲夜! 紅魔館うちはまがりなりにも洋館なのよ、よ・う・か・んっ!! それがこんないかにも和風っでいう飾り付けしてどうするの!? 違和感ありまくりでしょうがぁぁぁああああああっ!!!!」 

 大声で一気にまくし立ててゼェゼェと息切らすレミリアを少し心配そうに見つめながらも、咲夜はきっちりと答える。

 「……いえ、特に違和感はないと思いますが?」

 「……はぁ?」

 「うむ、余も違和感はないと思うが?」

 そこで話に割って入った大魔王モンバーンも咲夜に同意したのに呆気に取られるレミリア、これが違和感ないとかこいつらおかしいんじゃないのと疑う。

 「おーー! これって門松じゃん、正月らしくていいね~~」

 「あ、本当ね」

 そこへ偶然通りかかったチルノの大妖精の会話が聞こえてきた、レミリアは一瞬硬直した後に超高速でチルノと大妖精の方向へと身体を向ける。

 「……あんたら……本当にそう思ってるの?」

 突然声をかけられた二人の妖精は少し驚いた顔をして互いに顔を見合わせた後でレミリアに向き直るときっぱりと言った。

 「おう、いい感じだと思うぞ~?」

 「はい、そう思いますけど」

 あまりにも当然という二人の妖精の答えにレミリアはもう愕然とした顔になるしかなかった。

 「……私なの?……おかしいのは私の方なの……?」




 博麗神社の鳥居の前に槍を構えた鎧武者がいるのを見た魔理沙は驚いたものだったが、それが霊夢だと分かると更に驚き「何をしてるんだよ……」と尋ねた。

 「これを見れば分かるでしょ魔理沙?」

 そう言って霊夢が指差したのは彼女の脇にある立て看板で、そこには”妖怪立ち入り禁止!!”と書かれていた、その意味は何となく理解出来るが何で今更と思う。

 「いい魔理沙! お正月っていうのはね、神社にとっては初詣に来る参拝客おさいせんで稼ぎ時なのよっ!!!!」

 「参拝客と書いてお賽銭って読んだ!!?」

 「そんな時に妖怪なんかがうろついていたら参拝客が逃げちゃうでしょう? だから今年は是が日でも妖怪達の進入は阻止してあげるわ!!」

 気合の声と共に槍をブン!と振る霊夢を見て、そんな格好で突っ立てたらそれはそれで参拝客が来ないだろ、そもそもそうやって一晩中突っ立てる気かと思い呆れる。 もっとも霊夢がやりたいなら別に止める理由は魔理沙にはないので何も言わない。

 下手な事を言って、ならあんたも手伝いなさいよとか言われるのも面倒だ。 今夜は年越し蕎麦を食べながら紅白を、そして行く年来る年でも見ながらまったりと年を越そうと決めている。

 「そっか、じゃあがんばれよ霊夢~~」

 魔理沙はさっさと箒に跨ると詰めたい冬の空へと舞い上がって行くのだった。




 紅魔館の妖精メイドの一人であるフェア・リーメイドは大図書館で息も絶え絶えに床に倒れ付している紅美鈴と小悪魔を発見して何事かと驚く。

 「…………な、何なんですか……あの……コミ……ケ……って……グフ……」

 「……コミケ……?」

フェアの声が聞こえたのか、それともただのうわ言なのか美鈴の放った意味不明な単語に怪訝な顔になる。

 「……大丈夫よ、その二人は始めての”戦場”で力を使い果たしただけだから」

 机の上に乗せたダンボール箱から何やら薄い本を取り出し整理しながらパチュリー・ノーレッジの戦場という言葉にますます分からなくなる、現在の幻想郷で異変が起きたという話は聞かないから文字通りの戦場というわけではないだろうとは分かるが。

 「……うふふふふふふ、今年は大豊作だったわねぇ」

 ほとんど屍と化した美鈴と小悪魔とは対照的にパチュリーは満足げな笑みを浮かべていた。




 冥界の白玉楼の屋敷の大掃除を終えた魂魄妖夢は「……ふう」と大きく息を吐いた、すでにおせち料理の食材の買出しも終わっているので後はそれらを調理するだけである。 

 庭師という役職ではあるが何だかんだと雑用をさせれている事に不満はない。

 「幽々子様はよく食べるから今年も多めに作らないと……」

 一度に食べるというよりは、暇になればお腹空いたとつまみ食いをしているというのが西行寺幽々子である。 そんな主人を妖夢は情けないとは思わず、寧ろそれだけ冥界が平穏である証拠であると好ましいと考えている。

 「妖夢~~~年越し蕎麦はまだぁ~~~~!?」

 屋敷の置くから幽々子のそんな情けない声が聞こえてきて、やれやれと肩を竦める。

 「まだ夕餉には早いですよ幽々子様~!」

 そう言いつつも厨房へと足を向ける。

 「……本当にのんきなお方だ、だからこそお仕えしているのかも知れないが」 

 間もなく始まる新しい年でも花を咲かせる事はないであろう桜、西行妖をふと見つめた妖夢はそんな事を呟いてみる妖夢だった。



 幻想郷の空を特ダネを求めて飛行するのは鴉天狗の射命丸文だ、しかし、新年を迎える最後の準備にせわしない人間の姿はあっても、大きな事件というものはないようで無駄足だったかなと思い始める。

 外界では年末ともなれば犯罪や事故が増加しテレビのニュースを騒がせるとどこかで聞いた事があるが、この幻想界では、少なくとも幻想曲物語このカケラではそんな事もなく平和そのものである。

 「……まあ、その方がいいんだろうけでねぇ……」

 呟きながら冬の早い日も落ちかけてずいぶんと冷えてきたなと思い、今日はもう帰ってのんびりしようと決めた。



 日もすっかり落ちて、月明かりが守谷神社の境内を照らす。 その中の今では東風谷早苗とこの守谷神社に祭られる神の神奈子と諏訪子が三人でちゃぶ台を囲み年越し蕎麦を楽しんでいた。

 「外界では今年も激動の年であったか……」

 一昔前のブラウン管のテレビで流れている今年一年を振り返る番組を見ていた神奈子が誰にともなく言う、人と人が無益な殺し合いを繰り返したり、誰のものでもない大地を巡りつまらないいがみ合いをしてみたり、飢える民を放置し人殺しの武器を作っていたり……それは幻想郷の妖怪達が起こす異変よりも遥かに愚かで残極な行為だと神奈子のは思える。

 「……これも人々が信仰を忘れ去ったせいなのでしょうか……?」

 「買いかぶり過ぎだな早苗よ、神とてそうも万能ではないわ」

 神がいるだけで世界が平和になるなら人間の愚かな行為の繰り返しなどとっくの昔に根絶されている、人の世界は人の手で創られ紡がれていくものであり、神などそれを手助けするに過ぎない存在なのだ。 

 そこまで考えて、ならば人の技術が進歩すれば神が必要なくなるのは必然であったのであろうかと気がつく。 しかし、神が人間を支配し導こうというような傲慢を神奈子はしたいとも思わない。

 「外の世界の人間達はいったいどこに行こうというのかな?」

 その諏訪子の問いに神奈子は答えない、ただ滅びの未来でなければいいがなとだけ思った。 

 「人が神を信仰し、神はその信仰で得た力で人に恵みをもたらす、その半永久的に続くはずのサイクルが崩れた世界……今の人間に恵みをもたらすのはただ一方的に搾取される資源の力……」

 人間である早苗には何か思うところがあるのだろう、真剣な顔になり考え込んでいた。

 「やめておけ早苗、いずれにせよ幻想郷に来た我らにはどうする事も出来ぬ話だし、さっきも言ったが神とて万能ではないのだ」

 「そうだね神奈子、私達は私達の手の届く範囲の人間に恵みをもたらすだけだよ早苗?」

 「……そうですね、諏訪子様……」

 その時、ゴーンという鐘の音が聞こえた。

 「……除夜の鐘、今年も本当に終わりですね?」

 古い年が終わり新しい年が始まるという長い人間の歴史の中で幾度も繰り返された儀式、今この時に幻想郷の、そして外界の人間達はどのような思いでいるのであろうかと想像してみて、そんなものは人それぞれかと思う。

 ただ、次に来るべき年が良きものであるのを願うのは皆同じであろうなと、そんな風に考えてみる神奈子だった。


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