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マリオネット

作者: クレオパトラ委員会

十分見直しをしたつもりですが、まだ不慣れなもので改行がおかしい箇所が

あるかもしれません。ご了承ください。


ジャンルはSFですが、難解な専門用語や

世界観説明はありません。

 ここはどこだ? 」

生きていてこんな台詞を実際に言う日がくるとは思わなかった。

 本当に気がつくと知らない場所にいたからだ。

いや場所といえるのかどうかも怪しい。天井も見当たらない。

例えるなら、テレビで怪しい人がインタビューするときの背景だ。そんな場所に俺は立っていた。

 落ち着け。落ち着け。この場合出口を見つければいいんだ。とりあえず歩いてみるとしよう。

俺は恐る恐る足を踏み出し歩き出した。しばらく歩き続けてみたが一向に景色が変わらない。

じれったくなって今度は走ってみた。結果は変わらず、

右方向でも左方向でも壁や出口がみつかることはなかった。まるでランニングマシーンだ。

ああ~いい汗かいたな~ なんて言ってられない。さて次はどうすればいい? そうだ。

まず本当に壁がないのか、確かめるべきだった。上下左右におもいっきり叫べばいい。

 「お~い」・・・・・・ 山びこ現象はなし。と言うことは

この場所は宇宙空間の様に無限に広がっている可能性がある。昨夜の俺は

 自宅の自室の自分のベッドで眠ったはずだ。いつもとなんにも変わらない。

家にはほかに誰がいた? 親父とお袋と弟だ。その日は来客は一切なかった。

家でずっとゲームをしていたから分かる。ゲームのやりすぎだなんだと

 親に説教されたことが同時に頭をよぎったがすぐにかぶりを振る。そんなことはどうでもいい。

それよりも結論だ。これは夢なのだ。人の人生は長い。

 一生のうちで何万回と眠るわけなんだから一度くらいやけにリアルで

なぜか意識がはっきりとした夢があったっておかしくないだろう。

というわけで諦める。じきに目が覚めるんだからここであがいても無意味だろう。

  俺は地べたに座り込んだ。

 


「やあ、目が覚めたようだね」

え? どこだ? どこから聞こえている? 思わず立ち上がり上下左右に視線を行き来させる。

 「ははは。 キミの近くにはいないよ。 僕だってどこにいるか知らないもん」

声変わりしていない男児の声のようだ。

 マイクやスピーカを通しているような聞こえ方をしているので近くにいないのは本当だろう。

 「おい、ここはどこなんだ? 一体俺はどうすればいいんだ? 」

どこにいるか分からないがとりあえず上を向いて声を出した。スピーカーは大体上にあるしな。

 「質問が多すぎるね。 いいだろう。全部答えてあげる。キミはただぼーっとしていればいい。それだけ」

 「はっ、そりゃそうだな。 ここは夢の世界だもんな。朝になったら俺は目覚めてこの場所から消えちゃうからな」

暗闇の場所に自分以外の声が聞こえたのが嬉しかったのかさっきまでの緊張が少しほぐれた。

 「う~ん、夢… まあ、あながち間違えでもないかな」

その濁し方が少し気になったが間違いじゃないならいいだろう。

俺は天の声の言うとおりぼ~っとすることにした。

 「よし。 キミも落ち着いていることだしそろそろ始めようか」

 「なにするを気だ? 」

「言ったろう。 別に何もしないよ。 キミは黙っていればいい。 んじゃ、スタート! 」

 天の声が叫ぶと同時に床が消え、俺の体は落下を始めた。



まるでエレベーターに乗っているみたいだ。

それよりも勢いがついているので怖いどころか、少し楽しかった。下を注視していると地面が見えてきた。

 が、止まる気配がない。おいまさか骨折とかすんじゃないだろうな? もしかしてお楽しみってこれ? 

ヤバイ。 ヤバイ。だれか止めてくれっ。俺は見事、脚から地面に『着地』した。

少し高い所から飛び降りたときにくる、足がビリビリする感覚はなかった。

なんだよ。なにもないじゃねえか。足の無事を確かめるためつま先部分を地面に打ち付けようとした。

 しかし足が動かない。俺は片方の足を動かそうとしたがそこも動かなかった。なにかで固定されているように、

どんなに力を入れてもピクリとも動かなかった。しかもなんだこのダッセエ服は? 

デザインに見覚えがあるがおそらくただ似ているだけだろう。なぜならばこれは夢だ。

 前を見てみたが特になにもない。レンガでできたような地面が地続きになっている。

ここは地獄か? 天国か? 

いやしつこいようだがこれは夢なんだ。だまっていりゃすぐ終わる。はやく始めろ。そして早く終われ。

突然、足が勝手に動いたかと思うと勢いよく走りだした。この速さは人間じゃない。

 足が右、左、右、左と勝手に交互に前に出る。その速さも常人以上だった。

走ってしばらく、高い壁が見えた。目測で五メートル。これは東京ドームのフェンスより高い。

このままでは激突してしまう。

 まずい。 まずい。 まずい。 止まれ。 止まれ。 ストップだ。 ストップ! 

俺の願いもむなしく、体の暴走は止まらなかった。その代わり飛んだ。

それはもう下にトランポリンでも仕込んであるんじゃないかと思うほど、かなり高く跳びあがり壁を飛び越えた。

 壁があと二メートルほど高くてもまだ余裕がある。地面に着地すると、またすぐに走り始める。

今度は何だ? なにか茶色い物体が動いている。スピードが緩まる気配はない。

そのまま茶色い物体に向かって近づき、激突したかと思うと目の前が暗転した。気がつくと前にいた暗い部屋にいた。

 「ははは。 びっくりした? プレーヤーはまだまだ慣れていなかったみたいだね~」

 「おいおい、こりゃ」

 「あっ、もう分かっちゃった? 」

ああ、もちろんさ。おれは新発売のゲームソフトしかやらないその辺のオタクとは違うぞ。

 昔のゲームソフトもメジャー所はだいたいプレイしてある。これでわかりゃなきゃおかしいだろう。これは赤い帽子をかぶった配管工を主人公にしたゲームだ。壁をよけ、敵を踏みつぶす。ひたすら前に進みゴールを目指す。そしてラスボスのでかい亀を倒せばゲームクリア。国内外で大ヒットし、売世界一売れたゲームとしてギネスブックに登録されているほどだ。体の自由が利かないのはキャラの名前とマリオネットを掛けているつもりなのだろう。黙っていればよいというのはそういう意味だったのか。

 


「じゃあ、次があるからそれまで休憩しててね~ 」

おれは休憩と聞いてふと気付いた。あんなに走ったのに、ジャンプもしたのに息切れ一つしていないのだ。そういえば来た当初も壁を見つけるために走ったのに全然疲れなかった。夢だと決める裏付けはたくさんある。

 じゃあ次というのはどういうことなんだ? 考えているうちにその、次がやってきた。

降りた場所はさっきと同じだ。あ、コンティニューしたのね。 次のプレイは順調に進んだ。

 途中突っかかる場面はあったものの無事ゴール。暗い部屋に戻ると

 「お疲れ~。 今日はここまでだよ~ 」

と言ったきり、二度と何かを喋ることはなかった。俺もいつのまにか眠ってしまった。

次の日は、さらにサクサクとステージが進んだ。どうやらこのプレーヤーはのみこみが速いらしくステージのつくりや敵の配置も毎回変わっているにも関わらずゴールまで要する時間も少しずつ短くなっていった。しかしまだ解決していない事実がある。

 「おい教えてくれ。 これは夢じゃないんだろう? 」

 「だから~ 最初からそう言ってるじゃないか~ 」

最初、妙に濁していたのはそういうわけか。まあいいや。ここはうるさい親もいない。余計な生理現象もない。それに加えてすきなゲームの世界で暮らせると考えるとここは天国だから。

おれは特段、普通の生活に戻りたいとは思わなかった。

 プレーヤのミスやファインプレイに一喜一憂しながら、着々とラスボスクッパへとの決戦へと近づいて行った。他人のプレイを応援したり、プレイについて指示をだす。しかしそれは伝わらない。そのもどかしさがたまらないのだ。陸を超え、海を越えいよいよボスの待つラストステージに到達した。



ラストステージとだけあってプレーヤーも慎重になっているため、全力で走ることはない。

ボスの待つ部屋につくまでかなりの時間を要した。まあ無理もない。

流れる音楽もこれまでのふわふわした曲調から恐怖心を煽るような曲調になっている。

 目の前でみるボスは率直に言うと気持ち悪かった。でかい鼻。でかい口。でかい体。

すべてでかいという意味ではバランスがとれていたが、ぎらついた目と常にあいた口のせいで

 全体から見える印象を悪くしていた。

さてこいつを倒すには後ろにあるスイッチを押せばいいのだが、プレーヤーはそれを知らないのか全く動こうとしない。おい。どうした? どうせなら後ろへ下がるとかしろよ。

そうこうしているうちにボスは近づいてくる。歩くたびに小さく地響きが起きる。俺とクッパの距離が一メートルぐらいになるとクッパはゆっくりと手をのばし、俺の首をつかんで持ち上げた。このボスってこんな行動とったか? せいぜい投げ飛ばすくらいじゃないのか? ボスは片方の手を添えると俺の首をおもいきり絞めつけた。

 「かっ…離せっ」

自分では大声をだしているつもりだが、声がうまく響かず乾いた声になってしまう。

俺は自分の手でボスの腕をつかんだり、つねったりしてみたが痛くもかゆくもないようだ。

 「やばい…このままじゃ…死ぬ…」

すると天の声がした。

「体験ツアーはこれで終了。楽しかったでしょ? とりあえずお疲れ」

目の前がだんだんと曇っていき、俺の意識は途絶えた。







「被験体三番、死亡が確認されました」

モニターの前に座っていた白衣の男が、後ろで見守っていた黒スーツを着た中年風の男にそう伝えた。中年風の男はコクリとうなずくと、すぐそばにいる、夫婦と思われしき男女をみた。旦那の方は感謝の言葉を述べなが頭を下げ、妻は何も言わず頭を下げた。

部屋を後にし、二人は家路へと向かう。俯きながら歩いている妻を励ますように夫が言った。

 「これで良かったんだ。これで 」

 「でも」

 「これしか方法はなかったんだ。 働きもせずにゲームばっかりしよって。 あいつもゲームの中で死ねて幸せだろうよ」

旦那はフッっと鼻で笑う。妻はそれを寂しそうな顔で見つめていた。


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