(7)
黒髪の方はモミジ、銀髪の方はクレアと名乗った。
二人は現実での知り合いでログインしてすぐ合流に成功し、掲示板での情報を頼りに俺を探してたのだと答えた。
「所持金は千ゴールド、初期装備は選んだ技能に準じる」
このへんは説明するまでもない事だろうけど、何から説明していけばいいのか考える時間が欲しかった。
二人は神妙な顔をして聞いている。
説明は歩きながらでいい、との事なので街に向かっている。
「基本的にモンスターと戦ってレベルや熟練度を上げる。お金は主にモンスターからのドロップや採掘したものの売却、クエストのクリア報酬で手に入る」
「そのへんは普通のRPGと変わらないんですね」
確認するようにつぶやいたのはモミジだった。
モミジは積極的に発言するしっかり者といった感じで、クレアは大人しくて少し人見知りをするようだ。
「アルゴ社が変化好きな会社って言っても、さすがに基本は王道的だよ。気をつけなきゃいけないのは決闘かな」
「決闘ですか……?」
きょとんとした二人の顔を交互に見ながら俺は説明を続ける。
「プレイヤーへの攻撃、嫌がらせは原則禁止されてる。でも、決闘を申し込んで受けた場合、決闘場に移動して戦う事になるんだ」
「えっと、決闘は拒否できないんですか?」
「いや、できるよ」
二人はホッとした顔を見せた。
けど、そんなに甘くない。
「決闘を応じさせる為にあの手この手使ってくる奴いるからね。トッププレイヤーって言われる連中もいるし」
「……えっと、決闘を受けた場合のデメリットはなんでしょう?」
おずおずとクレアが聞いてきた。
「条件にもよるけど、所持金と装備品、アイテムを奪われるかな」
「ええ、ひどい!」
憤慨して声を強めたのはモミジで、クレアも眉をひそめ不快げにしている。
「決闘だとそこらの雑魚モンスターよりも経験値が稼げるし、儲かったりする。だから決闘プレイヤーって呼ばれる奴はいくらでもいるんだよ」
「そ、そんな……」
二人の表情は目に見えて暗くなった。
「暗黒天使とかはトッププレイヤーを狩り続けて最強の一角を維持してるし……まあ、あの連中はトップ級プレイヤーしか標的にしないから、二人にとっては安全だな。もっとも、
初心者を中心に狙う奴もいるから要注意だ」
「防ぐ手段はないんですか?」
質問してきたのはモミジだったけど、クレアも同じ思いだったんだろう。
二人から縋るような目を向けられ、俺は少し気まずい思いをした。
何とかしてやりたいけど、システムとして認められているうちは難しい。
「一つ、挑発には絶対乗らない。二つ、知り合いを増やす……特に強い人と知り合いになっておくと効果あるよ。初心者狩りをするような奴にはね」
「なるほど……ちなみにステイルさんは?」
興味津々といった様子で質問してくるモミジに思わず苦笑した。
「俺は二つ目のパターン。大して強くないし。自慢する事じゃないけど、トップ級と仲いいから、喧嘩売られる事は少ないかな。タイミングが合えば二人にも紹介するよ」
「それはありがたいです」
二人はぎこちないながらも笑みを浮かべてくれた。