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Design  作者: 相野仁
7/13

(6)

 今度は能力スキルの同時発動を試してみよう。

 例えば歌いながら突いたり蹴ったりできないか?

 踊りながら突いたり蹴ったりできないか?

 ……どちらも無理だった。

 現実で言うところの舞踊拳とかはできないらしい。

 次に歌と踊りを同時に発動させてみる。

 お、いける。

 歌と踊りが終わるとアナウンスが響いた。


【ステイルが称号:見習い道芸人を獲得しました】


 道芸人かー……効果はLPが1%ダウン、SPが1%アップ。

 これは微妙だな。

 育てても強くなるか分からんし……育てるけど。

 今試せそうな事は大体、試し終わったし、そろそろ街に入ろうかな。


「あのー、すいません」

「ん?」


 気づいたら目の前に一人の女性が立っていた。

 金色の髪に青い眼、俺より頭ひとつ分程度低い身長。

 カウガールを彷彿させる露出度の高い服装で、胸はふくらんでるし、むき出しになってる白い肩や足が眩しい。

 腰に剣を下げてるし、この状況で話しかけてくるって事はプレイヤーだな。

 この姿、前に見た覚えがあるし。


「間違ってたら悪いんだけどさ、アンタ、ステイルじゃない?」

「おう。……そっちはもしかしてミザールか?」

「ああ!」


 ミザールは可愛いと言うより豪快と言った方がいいような笑顔を見せた。


「よかったよ。街にも入らずに色んな能力スキルを試すような変態がアンタ以外にいなくて」

「探せばいるだろうよ。ミザールだって自分自身を操作するってのに、相変わらず露出の高い格好じゃないか」

「ハハッ、どうあろうが自分の好みを変えるなんざ、アタシの性には合わないね」


 確かにミザールはこんな性格だった。

 豪快なようで意外なところで頑固だったりするのだ。


「まあ俺にしてみれば眼の保養になるから別にいいけどさ」

「お? アンタも男の子ってわけかい?」


 俺の軽口に対してミザールは悪戯っぽく笑うと、密着してきて胸を当ててきた。


「こーいうのさ、男は嬉しいんだろ? どうだい?」

「いいな。仮想体アバターじゃなかったら最高だ」


 ムニュッとした柔らかい感触が俺の左腕に伝わってくる。

 俺はできるだけ平静を装って答えると、ミザールはつまらなさそうに舌打ちして離れた。


「何だよ、もうちょっと嬉しそうにできないのかよ」

「嬉しかったよ。ミザールがどれだけ魅力的でも、作り物には限界があるという事さ」


 ここで機嫌を損ねてもまずいので、褒めておく。

 嬉しかったというのは別に嘘でもないしな。


「ふーん。ま、鼻の下伸びてたし、嘘じゃないって信じてやるよ」

 

 ミザールは俺の口あたりを見てニヤリと笑った。

 表情に出さないようにしたつもりだったんだけどな……脳に直接的に繋がってるだけにこういうのは難しいのかもしれない。


「とりあえず、フレンド登録しとこうぜ」

「おう」


【ミザールさんからフレンド登録申請が届きました。承諾しますか?】 



 女性アナウンスが響いて、はい/いいえの項目が浮かんだのではいを選ぶ。

 これでミザールがログインしてるかどうかが分かるようになったし、ゲーム内でメールとチャットもできるようになった。


「で、アタシは街に入って他のメンバーと合流するけど、アンタはどうする? 一緒に来るかい?」

「いや、ミザールと会えたなら後でもいいだろう。自分なりのプレイをする事にするよ。他の人たちにはよろしく言っておいてくれ」

「はいよー」


 ミザールが手を振ってきたので、軽く振って応える。

 同時にログインすると言ってもバラバラの地点に飛ばされるのが普通なのに、いきなりミザールと会えたのは運がよかった。

 ミザールと同じ組合ギルド──今作で言えば共同体クランのメンバーと会う難易度がグッと下がる。

 俺は俺で街に向かって歩き出したら、今度は黒髪と銀髪の二人組の女性が何か言いたげにこっちを見ていた。

 あれ、また知り合いか?


「あのー、失礼ですけど、ステイルさんでしょうか?」


「はい、そうです。どちらさまでしょうか?」


 ミザールとの会話に入ってこなかったところをみると、“聖剣”のメンバーか?

 そう考えいると二人組はホッとしたように頷きあうと、左の黒髪の女性が代表して口を開いた。


「私たち、実は二人とも初心者でして。それで、ステイルさんは初心者にも親切だとうかがったので探していたんです」

「ははあ、なるほど」

 

 何となくではあるが、事情は分かった気がする。

 ネットの掲示板あたりで俺が初心者に親切にしてた事、器用貧乏プレイをするタイプで

まず色んな技能アビリティを試しているであろう事が流れたんだろう。

 ある意味、一番探しやすい人間の一人だったな、俺。


「そういう事ならステイルです、よろしくお願いします」

「あ、はい。お願いします」

 俺が頭を下げると、二人の女性たちは慌てて、バラバラに頭を下げた。

 何だか初々しくて新鮮だな。

 よくよく見るとどちらも俺と同世代のような顔立ちをしている。

 黒髪の方は眼も黒、銀髪の方の眼は紫色だった。

 純国産美少女とファンタジー風美少女といった感じだ。


「あの……本当にご迷惑でないでしょうか?」

 

 おずおずと不安げに銀髪の方が切り出してきた。


「はい。最終的に俺を得させてくれるなら」

「な、なるほど。頑張ります」

「善処します」


 悪戯っぽく笑いかけると、二人は安心したように微笑み返してくれた。

 例え仮想体アバターでも、綺麗な女の子たちに微笑みかけられるのはなかなかいい気分だった。


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