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展開が遅くてすみません…。
また終了後、一時間再起動できないのは脳への負荷を考慮されての事だ。
VRと現実の切り替えを短時間に連続して行うと、脳がパニック状態になり判断力などが低下する──通称ヴァーチャル酔いを起こすと判明している。
VR機メーカーの次の命題がヴァーチャル酔いを起こさないVR機の開発らしいし。
メールを送信したばかりの携帯が鳴る。
画面を確認すると孝志からだった。
「もしもし」
『もしもし。俺、俺だよ』
「ああ。警察呼ぶわ」
『何でだよ! 電話しただけじゃないか!』
「昔、犯罪者の間で流行ったフレーズを知らんのか?」
『俺、詐欺師じゃねーよ! お前の幼馴染だよ!』
相変わらず弄りやすい奴だ。
「犯罪者と言ったんだ。詐欺師とは言ってない」
『詐欺師でもない! 俺が何したってんだよ? さっきから酷すぎじゃね?』
「俺に電話かけてきた」
『はぁ? お前、さっき俺にメールしてきたじゃんか。何で電話かけたらダメなの?』
「いちいちかけてくんな。メールで返せ」
『だから、何で電話ダメなのさ?』
一旦話すとなかなか切ろうとしないからだよ。
心の中でだけ返事する。
口にしたところで文句を倍にして返してくるだけで少しも反省しないのだ。
弄る俺に非がない訳ではないけど、主にこいつへのストレス発散が目的である。
こいつ、頭は悪くない、と言うか勉強は俺より出来るはずなのになんで学習しないんだろう。
「で、用件は? さっさと言え。五秒で言え」
『え、おいっ。……ベータ版の事だけどさ、お前嫌がってたのに何でテスターになってんの? むしろどうやってなれたの?』
「俺だってなる気はなかったさ。ただ、入学祝いだって言われただけで」
『ええ!? あ、もしかしておばさんか?』
このあたりの察しのよさはさすが幼馴染と言ったところか。
孝明も母さんの仕事と人脈は把握しているから当然と言えなくはないけど。
コネなんて大っぴらに言うもんじゃないけど、こいつには明かしても大丈夫だろう。
「うん。じゃあな」
『待て待て! さりげなく切ろうとしてんじゃねー。もっと話そうぜ』
これだよ、悪意がないから余計にいらつく。
しかし今回は話を打ち切るのを納得させる理由を用意していた。
「いやでもさ、他の人らにもメール送ったんだわ。ぼっちじゃないならわかるな?」
『ぼっちじゃねー! そっか。それじゃ、またメールするわ』
「おう」
“携帯で”したのだと上手く勘違いしてくれたようだ。
他の面子はどっちに返してくるかわからんし、そもそもまだ見てない可能性が高いけどな。
何にせよいつもの十分の一以下の時間で切れてほっとした。
どれだけ弄っても構って欲しそうに寄ってくる、憎めない奴であるものの、テンションの高い男と一時間以上も電話したくない。
一話ごとの文字数の調整が難しい……。