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俺は食事を終え、食器を流しに持っていくと自室に戻った。
それにしても「X-continent」のテストプレイか。
さっきまで想像すらしてなかったけど、せっかくのプレゼントだし切り替えてやっていこう。
俺はベッドに横になるとVR機をセットした。
VR機──正式名称はヴァーチャル・リアルティ・マシン。
簡単に言うならコンピューターが作り出した電脳世界を脳に直接的に提示する機械。
今、主流となってる製品は現実にそっくりな世界や五感も再現されるし、オンライン機能もついている。
使用料はインターネットとは別系統で請求がくる。
母さん達がよく遊んでる会社を把握しているのはこの為だ。
昔は椅子に座って馬鹿でかいヘルメット状のものを被るのが主流だったらしいが、今はベッドに横になって小さな帽子サイずを頭に載せて目をつむるだけでいい。
技術の進歩に感謝だ。
【 起動します 】
優しい女性の声が頭に響き、「脳力トレーニング」「ファンタジーアドベンチャーオンライン」「メール」「チャット」の四つの項目が浮かび上がる。
メールの項目に新着の表記があったから開くと、アルゴ社からで、「弊社新作のテストプレイに関して」だった。
要約するとテストプレーヤーに選ばれた事、明日の午前10時からサービス開始の事、
IDとパスワードを通知するからそれを入力しろって事だった。
そして届いた時間が夕食中……いくら何でもタイミングがよすぎて作為的なものを感じる。
父さんならやりかねないけど。
とりあえず「X-continent」のテストプレイに参加するって言ってた連中に、一言知らせておくか。
VR機はパソコンと違って電源を入れて二秒で起動できる上に、メールとチャットの機能もついている。
インターネットの閲覧ができないけど、それはパソコンメーカーから強烈な圧力があったからだという噂が絶えない。
MMOができてインターネットができないってのも変な話だもんな。
さて、と。
現実友人の孝志は携帯で知らせるとして……ミザール、フィオ、エレン、アリス、ティナ、セラ、リスティ、サクラ、オリビア、カイル、ナターシャ、トニー、権左右衛門、シルビア、と
……知り合いのテストプレイ参加者多いな。
新作のテストプレーヤーを募る時、既作のプレーヤーは選ばれやすいって聞いた事あるけど、本当の話なのかもしれない。
メッセージを入力し終えると、各アドレスに一斉送信する。
同時送信しても他者に送った分のアドレスが表記されないのもVR機の利点だ。
携帯と違って返事が来るのには時間がかかるだろう。
少しもったいない気もするけど、俺は一度VR機を終了させた。
VR機の連続使用時間は三時間までと決まっていて、
一度終了すると同じ人間は一時間起動できない。
と言うのも、VR機を起動している間、体は睡眠時と同じような状態になって空腹も便意も感じない。
ただし、寝ている時と違ってトイレに行きたくなって起きるという事も出来なくなる。
つまり気をつけないと糞尿まみれになる可能性がある。
どんな健康的な危険性を訴える言葉よりもこの一言が、多くの人間に無茶な使用を慎ませる効果があったようだ。
俺だってこの年でお漏らしとかゴメンだ。