(11)
「はぁ!」
俺の拳がスライムの体を吹っ飛ばす。
「やぁ!」
隣でモミジが可愛らしい声を上げながらスライムを突いてる。
クレアが火の魔法で残る一匹を牽制している。
俺たち三人は今、レベル一のスライム三匹と戦闘していた。
スライムを殴り飛ばせるというのは意外で、シュールだった。
「おら!」
吹っ飛ばしたスライムを更に蹴りつけるとスライムは消滅した。
攻撃する時、声を出す必要はない。
ただ、その方が気分が出ると言うか、威力が出る気がするのだ。
二人も無事、自分の受け持ちのスライムを倒した。
ドロップしたのは『スライムのかけら』。
珍しくも何ともないアイテムだ。
初めだし、こんなものだろう。
「二人は何かドロップした?」
「あ、はい。スライムのかけらというものを」
モミジもスライムのかけらか。
何もドロップしない場合もあるから、幸先は悪くないな。
「私は『水性魔物の玉』というものが出ましたが……」
恐る恐るといった感じで申告したのはクレア。
「いきなりレアアイテム出た!?」
俺は驚いて叫んでいた。
「え? レアアイテムですか?」
きょとんとしてるクレア、そして何故か腑に落ちた、という表情のモミジ。
「この子、運は本当にいいんですよ。運のよさだけで生きていけるくらい」
「え、大げさだよ、モミジ」
ため息混じりにしみじみと呟くモミジ、わたわたと手を振って誤解をとこうとしてるかのクレア。
「いや、クレアが運いいのはもう分かった」
普通、最初の戦闘でレアアイテムをドロップしたりしない。
「そ、そうですか?」
クレアは何だか納得がいかないという顔をしている。
「出来れば一緒に組合を立ち上げたいくらいだ」
「え? え? そんな、ステイルさんはいい人だと思いますけど、まだ知り合ったばかりと言うか」
クレアは顔を真っ赤にして両手をぶんぶんと振ってる。
何だろう、俺が口説いてるみたいな雰囲気になってきた。
「うん、でも考えてみてくれ。もちろんモミジも」
「はい。ステイルさん、意外と手が早いんですね?」
モミジがからかうように微笑みかけてくる。
「おう。ただし美人に限る」
「あら」
俺が胸を張って答えると、モミジは愉快そうな顔でちらり、とクレアを見た。
「え? え? ステイルさん、私達にナンパには気をつけろって言っておいてナンパですか。幻滅です」
プンプンという擬音語が当てはまりそうな態度で抗議してくるクレア。
俺とモミジが期待した通りの反応だ。
視線を交し合うとにやりと笑いあった。




