(10)
「初心者は東がいいよ」
エレンにそう教わった俺たち三人は東門を目指す。
俺とモミジが前衛、クレアが後衛という陣形になる。
俺が格闘、モミジが槍、クレアが魔法。
バランスも何もあったもんじゃないが、初めだから仕方ない。
「モンスターとの戦闘ってどうすればいいんですか?」
そう尋ねるモミジに
「慣れないうちは適当でいいさ」
と答えておいた。
呆れた顔をされたが、実際習うより慣れろ、でいった方がいいのだ。
言葉で説明したところで、その通りに出来るとは限らないし。
街を歩いていると、チラチラと視線が集まるのを感じる。
俺、というよりモミジとクレアに、だ。
二人とも美人だからな。
もっとも、仮想体が美人だからって現実もそうだとは限らない訳だが。
しかし、それでも仲良くなれて嬉しいと思うのは男の悲しいサガだからだろうか。
門をくぐって街を出ると、途端にデコボコな砂利道に変わる。
左右には多種多様な雑草が茂っているし、風も吹いてきて、作り物とは思えない。
「さて、採取採取」
無論独り言ではなく、同行する二人に聞かせる為のものである。
「え? ここでですか?」
モミジがきょとんとして聞き返してくる。
クレアも同感だと言わんばかりの表情だ。
「石とかが良質な装備を作るのに必要になるってパターン、実は意外とあるんだよ。もしダメでも、経験値稼ぎにはなるし」
「なるほど。手伝います」
モミジは力こぶを作って息巻き、クレアも笑いかけてくる。
初心者だからだろうか、素直でいい子達だった。
三人で手分けをして石や草を集める。
とは言え、街から出ていきなり道具袋をいっぱいにする訳にもいかない。
持てる数には限度があるのだ。
「ほんの二、三個でいいよ」
三人で合わせて六個ほど。
練習にはちょうどいい数だ。
「俺が持っておくよ」
「あ、はい」
全て俺が預かる。
ただ働きさせる訳にはいかないから、いいものが出来たら二人に進呈しよう。
女の子と仲良くなる努力は惜しむべきではない。
したり顔で注意してたものの、俺だって立派なナンパ男である。
ただ、ナンパ目当てでゲームをしているわけじゃないと言うだけで。
相変わらずテンポが遅い…




