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ヘタクソな作者が書く、性格の悪い主人公の話です。
非デスゲでハーレム要素(予定)となっておりますので、苦手な方、興味ない方はご注意下さい。
この話はフィクションで、(主に作者の力不足が原因ですが)現実とは異なります。
「突然だが、お前に入学祝いがある」
ある日曜日の夕食中、両親と三人で鍋をつついてる時に父さんがこんな事を言い出した。
「本当に突然だね。出張でも決まった?」
これまでのパターンから想像して切り返すと、父さんは軽くうめいて母さんの方を向いた。
「おお、ここまで冷静だと可愛げがない。透はどうしてこうなったんだろうな、絵里?」
「ワンパターンだからでしょ。透はあなたと違って学習能力がありますからね」
救援を求めた相手から致命打を浴びせられ、父さんは「ぎゃふん」とだけつぶやいて黙り込んだ。
それを横目で見た母さんは、俺に優しく笑いかけてきた。
「本当は高校の合格のつもりだったんだけどね。思ったより入手に手間取っちゃって」
母さんが入手に苦労したものと聞いて俺は反射的に身構えたくなった。
そんな俺を見て母さんは何故か笑みを深めた。
「そんな警戒するものじゃないわよ。ただのVRMMOのテストプレイ権だから」
「……はぁ?」
俺は思わず聞き返してた。
今とんでもない事を言わなかったか?
VRMMOのテストプレイ権?
「……そんなもん、一体どうやって手に入れたの?」
VR機が一般家庭に普及したのはかなり前だし、VRMMOも少しずつふえてきている。
それに伴ってVRMMOの人気も高まってきてるので、テストプレイヤーに選ばれるのはかなり困難のはず。
ましてや公募じゃなくてコネとは。
「会社のオーナー一族に私のファンが多くてね。頼んだらOKしてくれたんだけど、公開テストプレイには始める時期があるって言われて」
言われてみればなるほどな理由だった。
母さんは世界的なファッションデザイナーの一人で、特に富裕層や芸能人にファンが多い。
会社経営者やその関係者に顔が利いてもおかしくはないんだった。
そして了承はもらえたもののまだ開発途中で、最近になってようやく公開テストプレイが決まったと。
……ん?
「最近? もしかして?」
心当たりが一つだけあった。
アルゴ社の新作VRMMO、「X-Continent」
それのテストプレイヤーを公募する通知がしばらく前にあった。
実際に出来る事が制限されているのが嫌で応募を見送ったんだけど、母さんたちがそこまで知ってるはずもなかった。
「そうよ。透がよくプレイしてるオンラインゲームの会社。テストプレイヤーに選ばれていないって言われたから、決めちゃった。正直、VRMMOってのはよくわからないんだけどね」
母さんが知らないのは無理もない。
VR機が普及してると言っても、脳の基礎力の鍛錬の為でゲームの為ではないからだ。
VRMMOという名は知られつつあるものの、あくまでもトレーニング機器の一種という見方が一般的で、「脳を鍛える為のVR機を遊戯に使うのはいかがなのものか?」という意見は根強い。
政府が気にする「世界学生対抗脳力検定」で、首位争いをする位置を保ち続けているという事で大きくはなっていないだけだ。
「MMOってのは簡単に言えば多人数が同時にプレイできるゲームって事だよ。一つのサイトを色んな人が同時に見たり、意見を書き込んだりできる、それのゲーム版みたいな? …… 上手く説明できた自信がないけど」
「いや、少なくともイメージは掴めたぞ」
ここで父さんがまさかの横槍返事。
「そうね。何となくだけど、わかった気がするわ」
「そっか、それならよかった」
多少なりは伝わったようでほっとした。
説明が上手くできたんじゃなくて、二人の理解力が高かっただけだろうけど。
って、俺、お礼を言ってない!
「言い遅れたけど、母さん、ついでに父さんも。プレゼントありがとう」
二人に向かって俺は頭を下げた。
「どういたしまして。喜んでもらえて何よりだわ」
「うむ。それよりどうして、父さんはついでなんだ?」
「え? まじめな会話を茶化そうとし続けたから、こういう扱いをして欲しかったんじゃないの?」
俺が真顔になって聞き返すと父さんはガックリと肩を落とした。
「……くそう、息子と愛のあるコミュニケーションを取ろうとしたのに、齟齬が生じるとは」
「あなたの場合、身から出た錆です」
俺が何かを言うより先に、母さんが叩き伏せてしまった。
確かに父さんの場合、本当に分かりにくいからフォローのしようがない。
「父さん、改めてありがとう」
「う、うん。お前が喜んでくれたのならそれでいい」
……ここで照れるのか。
この人、つくづぐ読めない。
「私達は明日からパリだ。戻るのは恐らく七月頃になる。製品版が発売したらそのままプレイするのもいいだろう。ただし、お前の高校での成績次第では禁止令を出すからそのつもりでいろ」
「ぐっ……」
今度は俺がうめく番だった。
「毎度だけどお隣の亜季ちゃんに頼んであるからね」
「……うん」
年上の幼馴染の綺麗で優しい笑顔を思い出す。
両親に出張が入るといつも様子を見に来てくれる、俺にとって頭が上がらない存在である。
最近あまり会ってなかったし、楽しみだ。
例え、両親の監視役を兼任していたとしても。
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