泉1
『木崎原ー・・・・・・木崎原は今日も休みか。』
自分のクラスの生徒の出席を確認する担任の前原先生。前原先生は、鈴花の不在を確認すると、すぐに次の子の出席を確認した。
鈴花が登校して来なくなってから、今日で二ヶ月が経った。私は二つ前の鈴花の席を見る。そこには、鈴花が椅子に座って笑っている姿が目に映った。
『流川ー。流川泉!』
先生に名前を呼ばれ、私は慌てて返事をした。
私は流川泉。鈴花とは幼稚園の時からの幼なじみだ。
どこへ行く時もいつも一緒で、ケンカする時もあったけど、すぐに仲直りする程仲良しだった。なのに・・・。
私は真崎さんにいじめられるのが怖くて、いじめられている鈴花から離れた。すぐにでも話しかけようと思ってたのに、体が動かなかった。
鈴花が学校に来なくなったから、私は後悔した。
なんで私は鈴花を見捨てたんだ。鈴花は親友なのに・・・。
私はそれから、鈴花にメールや電話をしたり、鈴花の家にも行ったりした。
しかし、鈴花は私を受け入れてくれなかった。当然だ。親友を見捨てた私なんかを、鈴花が受け入れるはずがない。天罰が下ったんだ。
鈴花がいなくなってからのクラスは、相変わらずだった。
鈴花がいなくなり、真崎さんはまた新たにターゲットを変えた。クラスの中で一番大人しく、気弱い女の子、上田さんだった。
真崎さん率いるいじめ軍団は、上田さんにバスケットボールを投げつけている。上田さんが泣きながら許しをこうているにも関わらず、真崎さんは何度も何度もいたぶっている。
『またか。もういい加減にしてほしいよね。』
私とよく一緒にいる美樹が、真崎さん達に聞こえないくらいの小さい声でボソリと話す。
私もそうは思ったものの、どうすることもできない。真崎さんに逆らったら自分もあんな目に・・・。
私は教室を飛び出し、トイレへと駆け込んだ。壁に寄りかかって、スカートのポケットの中に入っているピンクの携帯を取り出し、電話帳を開いた。
私はこうして毎日、鈴花にメールしていた。返事が返って来ないことはわかっていても、やっぱり親友だから放っておくわけにはいかない。
『やっほーo(^o^)o
鈴花、元気?
ご飯ちゃんと食べてる?
気が向いたらでいいからメールしてくれたらうれしいなー(^o^)/』
私はメールを送信した。送ってすぐに、携帯の端に涙がこぼした。
『鈴花・・・・。ごめんね・・・・。』
私は授業開始のチャイムが鳴ってるにも気づかず、ひたすらトイレの個室で泣いていた。