夜ごとの訪れ
『部屋の照明を点け続ける』と云う方法で、睡眠を行う事が可能になった
しかし其れでも、恐怖が失くなった訳では無かった
既に、『怪談』と呼べる様な易しい物ではなくなり出して居る
同級生三人が『あれ』に命を奪われて居た
部屋の電気を点けたまま、布団に入る
両親も寝る時間になったらしく、部屋の電気が消えていく音がする
同時に、廊下を歩く足音が聞こえ始めた
足音は此の部屋の前を、一晩にわたり歩き続ける
意図が明白過ぎる為、僕は泣きそうになりながら眠ろうとする
睡眠は一時間もすると覚めてしまい
僕は足音を耳にしながら、ぐったりとした絶望を再確認する
都合上
五回から十回ほど、此の苦痛は繰り返される
或る時
平素なら僕の部屋で飼って居る猫を、居間に置いてきてしまった事が有る
気付いて迎えに行こうとしたが、折り悪く、両親が廊下の電気を消してしまった
『あれ』が歩き始める気配を感じて、僕は部屋に逃げ込んだ
少しして
猫のけたたましい悲鳴がこだまし、僕は眼を閉じた
耳を両手で塞いで、布団の中で丸くなって耐える
眠れない夜の時間が長過ぎて、時計を何度も視てしまったから
僕は、猫が三十分近く掛けて、ゆっくりと死亡した事を知ってしまった
そうした暮らしが、五日間ほど続いた頃
不眠から、僕は幻覚が視え始めた
僕の部屋にも本棚の影や、机の裏などに暗い場所は在る
小さな『あれ』が、そうした場所を埋め尽くす様に現れる様になったのだ
鉛筆などを押し当てると、それは小さな『あれ』の躰を軽々と貫通する
そうした実験の結果、僕はいま視えて居るものが幻覚だと断定して居た
だからといって、視えた事で感じる『恐怖』は現実のものだ
小さな『あれ』達は、常に顔を僕の側に向けて居た
僕を、監視し続けて居た
其れが数日続いた朝
僕は絶え切れなくなって、両親に尋ねた
「どうして二人は電気を消しても無事なの」
「猫が死んで、何も思わなかったの」
「───あの廊下の足音が、聞こえないの」
両親の顔から、みるみる表情が失われていく
二人が
廊下でして居たのとまったく同じ足音で、僕に近付いて来た




