完璧主義者の隠し味、あるいは放課後の甘い共犯者
翌朝。教室の入り口で凛と目が合った。
彼女はいつものように、一分の隙もない制服の着こなしで、冷徹なまでに美しい「学年トップの優等生」の顔をしていた。
けれど、僕は知っている。
昨日、ゲーセンのクレーンゲームで見せた、あの執念深いまでの「ゲーマー」の目つきを。
「……おはよう」
「ええ、おはよう。……昨日のことだけど」
凛が周囲を警戒するように声を潜めて近づいてきた。
神様なら、世界中の人間に「凛は実はお菓子好き」と触れ回る嫌がらせもできただろう。でも、この教室で僕だけが彼女の『裏側』を知っているという事実は、どんな魔法よりも僕の胸を熱くさせた。
「……放課後、例の場所で。新しい『期間限定』が出たって、データで確認したわ。……一人で行くのは、その.....効率が悪いのよ。……付いてきなさい」
「効率」という言葉を隠れ蓑にした、彼女なりの誘い。
放課後、僕たちが向かったのは、学校から少し離れたコンビニのイートインコーナーだった。
そこでの凛は、まさに別人だった。
新作のチョコミントアイスを一口頬張った瞬間、あの鋭い目元がトロリと溶ける。
「……これよ。この糖分と、鼻を抜ける清涼感の黄金比。完璧だわ……」
手元には、ポテトチップスの袋と、スマホのパズルゲーム。
画面を叩く指の動きは、ピアノを弾く時と同じくらい正確で、かつ猛烈に速い。
「三宅さん……。君、本当にギャップがすごいな」
「……うるさいわね。普段の『三宅凛』を維持するには、これくらいの報酬がないと、計算が合わないのよ。……ほら、あなたも食べなさい。一口だけなら、分けてあげなくもないわ」
差し出されたスプーン。
神様、見てるか。
お前がくれた『心酔させるチョコ』なんかより、この溶けかかったアイスのほうが、一兆倍も甘くて、尊いんだ。
凛は、自分が「神様に選ばれた特別な存在」だなんて知らない。
ただ、大好きな甘いものとゲーム、そしてそれを笑わずに隣で見てくれる僕との時間を、心から楽しんでいる。
「……明日も、付き合ってくれる?」
アイスのカップを覗き込みながら、凛が小さく呟いた。
完璧な彼女の、完璧じゃない、愛すべき素顔。
僕は自分の「考える力」のすべてを使って、明日も彼女を笑わせる方法を導き出すことに決めた。
凛さんの意外な趣味!
完璧主義の彼女にとって、お菓子やゲームは、唯一「素の自分」に戻れる大切な時間でした。
それを主人公と共有できたことで、二人の関係は「憧れ」から「共犯者」へと進化しましたね。
神様も、このあまりにも人間らしい二人の姿には、苦笑いするしかないでしょう。




