表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

討伐依頼、異世界より転生または転移し勇者。依頼者、村の村長 ~ 異世界から戻りし男の苦悩~むこうでは手練れの傭兵でした~外伝①

作者: クワ
掲載日:2026/01/27

「お前が悠馬か?」

「!! お前は誰だ!」

 狼狽した男の大声が村はずれの河川にこだまする。

(やはりそうだな、コイツも転生者か転移者のどっちかだ)

 証拠に日本語が通じている。


 話は数日戻る。

 酒場の喧騒で話しが聞き取れない。

「なんだよ、聞こえねえよ」

 佐藤 信長、これがこの男の名だ、一度異世界の傭兵家業に飽き飽きして日本に帰るも周囲に馴染めず、結局また戻ってきて傭兵をやっている。

 フードを被った初老の男性は、小声でもごもごと繰り返し話をする。

 やっと聞き取れた初老の男性の言っている内容をまとめると『ふらっと村に来た凄腕の勇者だが、魔物より村を守ってもらう代わりにと要求がどんどんエスカレートし、やりたい放題していてもうこれ以上耐えられないのでどうにかして欲しい』と言う話らしい。

「村人だって強いヤツいるだろう、束になってかかれば討ち取れるのではないのか」

「そうもいかないのですじゃ、ユーマはアンタと同じ異世界語を使う。よくわからない剣術や魔法の攻撃をするので、領主様の騎士や凄腕の傭兵たちでさえ返り討ちにあって、ポルモナ村は見捨てられたんですじゃ」

「領主も兵を出さないと」

「そうですじゃ」

 どうやら転移者か転生者がよくある神などから与えられた能力で暴君化しているらしい。

「当たり前だがただではやらねぇぜ」

「当然ですじゃ、成功報酬は一万ドラクマですじゃ」

「お、おい、マジか?」

 信長は驚いた、傭兵で約五年分の給金だ。

「わかった、やってやる」

 欲につられて二つ返事で承知した。



 ポルモナ村



「ねえ、ノブ、大丈夫? 依頼料からしてかなり危険なんじゃないの」

「まあ、この依頼料でユーマってヤツが雑魚だったら他の奴がすでに殺ってるだろうな」

「ノブは戻ってきたら殺伐としてきたよね。日本にいた時の方がよかったかな」

 サニアはチョット不満げに信長に噛みついた。

 このサニアは信長の昔からの相棒の妖精で、信長と一緒に日本に渡り、信長についてこの世界に戻って来ていた。

「傭兵なんてやってるからな。どうしても荒っぽくなる」

「ぶう」

 村に着くと、村長の意を受けた男女二人の若者が案内してくれた。


「まず、ユーマと言うやつはどんな者なんだ」

 男の方が会話を引き取り説明を始める。

「とにかく暴君です。気に入らないと所構わず剣を振り回し、酔いが回ると女性や子供だろうと殺傷します」

「特に歯向かった者には容赦が無く、今まで領主様の配下の騎士や傭兵、魔法使い、狩人、盗賊など色々な者が挑んできましたがみな惨たらしい殺され方をされました」

「一番ひどかったのは、あなたたちのような男女のコンビで、そのときは男をわざと殺さず、動けない状態にして笑いながら女性を犯し続け、その男女の叫び声が村中に響き渡り、みな震えながら耳を塞ぎ家に籠っていました」

「そんな、ヒドイ」

 サニアがショックを受け言葉を失う。

「それで、その二人は?」

「声が止んでもみな家から外に出ず、翌日出た所その男女は一糸まとわぬ姿で村の入り口の杭に刺さった状態で殺されており、さらし者にされていました」

「……」

 村人の女性は目を伏せて顔をそむけた。


「何か戦い方に特徴などないか?」

「それが、よくわからないのです。今まで見てきた剣術流派とか魔法系統とかではなく独自の戦い方をするのです」

(恐らくいつものヤツだな)

 信長には心当たりがあった、今まで倒してきた転移者や転生者に一定数いるパターンだ。

「技を出すときに聞いたことの無い言語で何か叫んだりしていなかったか?」

 信長はしれっと重要な質問をした。

「シネとかザマァとかよく言っています」

「他にはないか」

「そういえば……ロウトツと掛け声を出したのを覚えています」

(やはり!)

「その時の構えは重心を下げ剣を前に突き出し、もう一方の手で剣を包み込むような仕草をしていなかったか?」

 信長は仕草を真似して男に示した。

 男は思い出したのかうんうんと興奮して頷く。

「そう、そんな構えです」

「ノブ、心当たりがあるの」

「なんとなくな」


 信長は男にユーマが何処にいるのかを尋ねると、以外にも川に行っているとの事だった。

「一日何度か自分で水を汲みに行きます」

(なんでも命令する訳では無いんだな)

「川のある方角は」

「それならこちらです」


 村人の案内に導かれユーマが行ったという川に向かって歩き出す。

「それらしい男があそこにいるが、アイツか?」

 水浴びをしている人間が遠目から確認できる。

 信長が体を傾け視線で指し示すと、男はそうですといって震えた。

「案内すまないな、何かあったら悪いから安全な所に避難してくれ」

「は、はい」

「安全を確認したら仕掛ける!」

「わかりました」

「走るなよ、相手に悟られる」

 そこまで言うと、男はこくりと頷き、ぎこちなく来た道を引き返した。


「ノブ、あの人たち見えなくなったよ」

「じゃあ、行くか」

 信長は音もなくゆっくりと男に近づいた。

 男――ユーマはこちらに素早く感づき鋭い視線を向けて来る。

(感づかれたか。奇襲はできねぇな)

 ユーマはこちらの気配で何かを察したのか剣を掴み素早く抜いた。


「お前は誰だ!」

 信長その質問に答えずになおもユーマに近づく。

 ユーマは剣を正面に構え、もう一度質問を繰り返した。

「お前が悠馬か?」

「!! お前は誰だ!」

 狼狽した男の大声が響き渡る。


「悪く思うな」

 信長は日本語で話した。

 この手の相手には日本語で対応することにしている。

「てめぇも俺を殺りに来たのか!」

 信長は無言で小太刀を引き抜く。

 それと同時に自分に能力アップの魔法をかける。


「先手必勝」

 ユーマは右手で剣を持つと腰の後ろに回す。

(ディーンの旅行記。アルンスマッシュだな)

 かつての国民的少年誌に連載されていたマンガの主人公の師匠にあたるキャラの技だ。

 この手の転移者や転生者にパターンがあり、魔法はともかく剣や槍などの訓練をしたことが無く使い方がよくわからないにも関わらず力だけ得られたので、とりあえず我流でめったやたらと武器を振り回す人間と、技を今までやったり見たりしてきたゲームやマンガ・映画・アニメに求める人間だ。

「アルンスマッシュ」

 声と共に光の刃が信長に向かってくる。

 信長はかつて日本にいるときに石倉という魔法使いから教わった魔法のうち、武器に属性を宿す魔法をかける。

 小太刀は眩しいくらいに青白く光り輝く。

 信長は体をずらしタイミングを合わせ斬り上げる。

 ビィーーー

 鋭くぶつかった二つの光は信長の小太刀によって針路を変えられ、あさっての上空へ飛んでいった。


「き、きさまぁーーー」

 ユーマは怒りの感情を隠すことなしに出すと、腰を落として剣を真っすぐ構え、左手で包み込む。

狼突(ろうとつ)だな。武士放浪記だったか日下の武士だったか)

 どちらか忘れたがこの新選組をモチーフにした両キャラも人気があり、突きという分かりやすい技のため使用する者に何度も会った。

 普通に走るヤツ、魔法で飛ぶヤツ、魔法を絡めるヤツ色々いたが、最終的に突きで貫くという終着点には変わりがないので、動きは比較的読みやすい。

(ただ、単純な突きなら……いままで討伐しに来たやつで読み切ったヤツがいるはず)

 牽制を兼ねて氷のナイフが複数襲い掛かる魔法を唱えた。

 ユーマは微動だにせず受け止める。

(魔法障壁か)

 氷のナイフは弾かれて地面に落下した。


狼突(ろうとつ)

 跳ねて飛ぶようにユーマが駆ける。

(どう仕掛けて来る?)

 ユーマの剣先から光が漏れる。

(先にビーム系か! 二段構えだな)

 左に半身ずらしてビームをやり過ごすと、体重をかけた左足で地面を蹴り突きをかわした。

「おらぁ」

 やり過ごした後、がら空きになったユーマの背中に斬撃を加える。

「グゥ」

 ユーマは態勢を崩しその場に膝をついた。

 持っていた剣は斬撃を受け手放し、突きの勢いもあって遥か彼方まで飛んで行った。

 背中の切り口からは血が零れ出ている。


「二人ともやめて、ユーマ、お願いだからもうやめて!」

(この声は、先ほどの村人の女か)

 いつの間に女は戻ってきたのか、その場で奇声に近いような大声を出した。

 ユーマは女を見ると「お前も私だけは味方だのきれいごとを言っときながら、所詮は他の村人と同じで俺の事を殺そうと思っているんだろ!」と怨念のこもったような言葉を吐き出す。

「いや、そんなんじゃ……」


 女の弁明を鼻で笑い、ユーマは立ち上がりこちらに向き直る。

「ウォォォォォ」

 ユーマは炎を拳や体に纏わせる。

(今度はクラウンオブソルジャーの八咫 翔(やた しょう)っぽいな)

 これまた一時ゲームセンターを占拠した格闘ゲームのメインキャラの技を出してきた。

「珍しいな、月神 オロチのコピーをする奴の方が多いんだがな」

 慣れた動きでユーマの攻撃をかわしてゆく。

「てめぇ、かわすな、死ね」

 ポーズまでそのままだ、かわすなと言うのは無理がある。ましてや命がかかっている。


(来るぞ、大技)

 燃え上がる炎を素早くかわすと斬撃を加える。

「……」

 手ごたえがあったはずなのだが、大した傷になっていない。

「回復呪文か!」

 背中からの出血も止まっているようである。


 ユーマは腰に差してある鞘からナイフを二本引き抜き、両手とも小指の方に刃を出す握りで持った。

(よくある忍者がやる握りだな……いや、あの構え、歩き方……)

 信長はユーマに能力を下げる魔法を使い、その後炎の魔法を唱えた。

 ユーマはそれをかわして印を切った。

(邪剣伝説、イーグルアイ、影縫い)

 ユーマの姿が消えると、スッと影が寄せて来る。

「今だ!」

 バックジャンプを繰り出すと、先ほどまで信長がいた場所にユーマが地面から飛び出てきた。

「ゲームと違ってこっちは動くんでね」

 予測を裏切られ愕然とするユーマに袈裟切りを加える。

「ぐはぁ」

 ユーマは両手のナイフを落とし、ぼうっとした視線で信長を見た。


「覚悟はいいか?」

 ユーマはその言葉に答えず、よろよろとした足取りで川べりまで歩き、そこで腰を降ろした。

 流れ出した多量の血が地面を伝わり川へ流れ込み、わずかながら水の色が変化した。

「アンタは……誰だ」

「俺は、佐藤 信長」

 ユーマの息絶え絶えの言葉を受け、今度は名を名乗った。

「そうか、日本人が俺を止めてくれたか」

「?」


「転生前、俺は田中 悠馬(たなか ゆうま)と言う名だった」

「やはり日本人だな」

「ああ、そうだ」

「俺は、向こうではいじめられっ子だったんだ」

「それは激しいいじめだった……」

 悠馬は流れる水の流れを見ていた。

「それを苦に自殺をしてな、神様が憐れんで能力をくれた」

(俗にいうチートと言うやつだな)

「お前は自分で何か努力をしたのか?」

「する必要が無かった……それが悪かったのかな。よくいるだろう、高校で野球やサッカー、勉強でもいい、才能でそこまでやってきたはいいが、その上の段階で才能だけではどうにもならない状況……プロに入ったり、いい大学からいい会社に入った後消えるヤツ。今の俺がそうなんだろうな」

 悠馬は半ば自虐的に半ば悟ったような口調の言葉をだした。


「ゲームでチートを使って無双できると楽しめるヤツと飽きるヤツがいるが、どうやら俺は後者だったようだ」

「楽しんでたんじゃないのか?」

 悠馬はその質問に答えることなく自分の話を続ける。

「強い力が手に入ったら、みなチヤホヤしてくれた。最初は正直嬉しかった」

「だが、時が経つと段々と空しくなった。自分が努力して獲得した物ではなかったからだろうな」

「そうなると、周りは私を利用しようとしているだけかもって思ってな。昔の焼きそばパンを買いに行かされていた。当然俺の金で……そのころのことを思い出してな」

「かつての仲間だった女がお前に寝返った事から確信に変わった」


「ゴホ、ゴホ」

 悠馬は激しいむせと共に多量の血を吐いた。

「ユーマ!」

 かつての仲間だったと言われた女が近寄ろうとした。

「来るな!」

 悠馬は女を拒絶し、話を続ける。

「寄って来る女を抱いても風俗嬢や売春婦の女性とヤッてるみたいでな。みんなそうさ、最初だけ。俺を見ようとしない。下手をすると自己犠牲のヒロインさ……俺は悪党扱いだ」


「何で、お前はこの土地を離れなかったんだ」

「さあな、何でなんだろうな」

 悠馬は顔を上げて空を見上げた。


「イジメや差別を受けた者は脳や精神にダメージが残る。決して幸せにはなれない」

「神には夢を与えてもらった事は感謝している」

「ただ、それなら、転生前にイジメを止めさせてほしかった」

「もっと頭がよく身体が強い、当たりの親ガチャにしてほしかった」

「どうせ異世界に飛ばすなら、つらい記憶を消してほしかった」

 悠馬は、そこで言葉を紡ぐことを止めた。


 頬には血糊を溶かすかのように多量の涙が滴り落ちた。

「ノブ……」

 悠馬の体から荒い息遣いが止まると同時に瞳から流れ出る涙も止まった。

「彼、最後まで自分が悪かったって言わなかったね」

「……そうだな」

「イジメのせいで人格が変わっちゃったのかな。そしたら何か空しいね」

 サニアは寂しそうに悠馬を見ていた。


 悠馬が息を引き取ったと確信して、息を殺しながら隠れて見ていた村人たちが大挙して押し寄せてきた。

「コイツ、やっとくたばったか! 調子に乗りやがって」

「もう怖くねぇーぞ」

 ズガ、ドカ

 村人たちは、悠馬の遺体にこん棒や剣を激しく打ち付ける。

「ほらよぉ何か言ってみろよ」

 ガツ、ボカ


「もういいじゃない。もうやめて! ユーマの事これ以上傷つけないで」

 男たちは女性の意見を聞くことなしに暴行を続ける。

「うっうっ」

 しまいには女性は泣きくずれた。

「なあ、何もそこまでしなくても……」

 信長の言葉に村人が激しく反応した。

「アンタに何が分かるんだよ。俺の嫁がコイツに犯されたんだぞ!」

「……」


 暴行は止むことなく、その様子を見て村長は悠馬が亡くなったことを確認すると、信長とサニアに向かってうやうやしく頭を下げた。

「本当に、ありがとうございます」

「いや、依頼でしたからね」

「はい、報酬はしっかりと払わせていただきます」

 信長たちは村長宅にいざなわれた。


「食事を用意させていただきました。どうぞ召し上がってください」

 確かに美味しそうな食事であり、村の状況からかなり奮発して出したのだろう。

(俺らが死んでたら、悠馬のご機嫌取りに出されたんだろうな)

 そう思うと食欲が湧いてこなかった。

「戦い終わった後なので、食欲がありません。子供たちにでもあげてください」

 信長は村長にそのように伝えた。

 サニアは信長の心の内を察し何も言わなかった。

「村長は、困ったような嬉しいような複雑な表情を浮かべ、報奨の袋に詰まった大量の金貨を目の前に置いた。

 信長は中の枚数を確認すると、村長に別れの挨拶をし、村を後にする。


「ねえ、ノブ」

「ん?」

「悠馬さんの遺体の所行こうよ。さすがにあれでは可哀そう」

「そのつもりだよ」

 信長とサニアは複雑な表情を浮かべて歩き出した。


 遺体の周りには先ほどの暴行していた男たちはすでに帰ったようでおらず、逆に子供や大人しそうな人たちが数人いた。

「君たちは?」

 信長を見て、みな恐怖のあまりビクッと反応する。

「安心して、私たち彼を埋めに来たの」

 サニアの言葉に子供たちは困惑し、大人しそうな人たちに視線を向ける。

「なぁに、元々同じ国出身だったようだしな」

 信長はそう言って周囲を安心させた。

「ところで、ここに埋めたら掘り返されたりするか?」

 先ほどの怒りの度合いから見て可能性として聞いてみた。

「あり得ます」

「どこに埋めたらいい」

「それなら……」

 彼らの話を聞き、森に悠馬の遺体を運ぶことにする。


 遺体は下手な持ち方をすると崩壊するほど激しく損傷しており、気を使いながら運搬した。

 その間、誰一人口を開かなかった。

 森に着くと、一本の大きな木の根元を指さし「ここにしてください」とお願いをされた。

「何かこの木とユーマは関係あるのかい?」

「先ほど泣いていた女性がいたのは覚えていますか?」

「ああ、可哀そうだったな」

「あの人がここで倒れているユーマさんを助けたのが、村に来たきっかけでした」

「彼、ユーマはどこから来たの?」

「わからないんです。記憶を一切失っていたので」

 サニアの質問に子供たちは困り顔で首を振る。

(転生前の記憶が蘇ったせいで新しい記憶が排除されたのか? どういう理由だか分からないが新しい記憶の方が残っていたらよかったのにな)

「ところで今話に出た泣いていた女性は一緒に来なかったのか?」

「あの人は……恐らくですが、村長に叱られているでしょう」

「そうか……」

 ポルモナ村には村なりのルールがあるのだろうと思い、それ以上詮索することを控えた。


 スコップや鍬を入れて穴を掘り始めた。

「ユーマさん、私を助けてくれたんです」

「私が不治の病に侵され、お医者様から余命いくばくもないと言われて人生を悲観していた時、それを聞いたユーマさんが命がけで火山に巣くうドラゴンの肝や魔物がはびこる高山に生える薬草を取って来てくれたんです」

 今まで言葉を発してこなかった大人しそうな女性がぽつりぽつりと口を開き始めた。

「……そうか」

「みんなこの人に色々な罪を擦り付けている。最後はいい人だったとは言いません」

「ただ、この人が村を出て行かないように女性を用意したり食料を出したりして接待したのは私たちポルモナの村人なんです」

「嫁を犯されたって言った人いたでしょう。ユーマさんとあの人が奥さんが付き合っていたのは、あの人が結婚する前、ユーマさんに捨てられ失意の所をあの人が口説いて結婚したんです。ユーマさんがもてあそんだというのかな。そんなカンジ」

「みんな自分勝手。この人もポルモナの村人たちも……」

 女性の目が寂しそうに悠馬を見つめた。


 ザク、ザク

「これくらいでいいだろう」

 信長が悠馬の遺体を穴に置くと、みなで上から土をかけてゆく。

 土をかけ終わると、額の汗をぬぐって墓標代わりの石を置いた。

「終わったな」

「ありがとうございました」


 信長とサニアが村人たちに別れを告げて、以前いた都市に引き返すため歩き出すころには日は傾き、振り返ると茜色の日差しを受け墓標の石の影が木まで伸びていた。

「結局、自分を見失っちまったんだろうな」

「ノブも気を付けなくっちゃね」

「ああ」

「でもノブはこちらの世界に飛ばされただけだから、ひょっとしたら違うかな」

 そう言ってサニアが笑った。



 それから数カ月後



「サニア、酒場で情報収集するか」

「ノブがお酒を飲みたいだけでしょ」

 呆れたサニアがジト目で信長を見る。


 カランカラン

「いらっしゃい」

 喧騒と酒の匂いが充満する中、適当なテーブルを確保し注文をだした。

「さてと、久しぶりで楽しみだねぇ」

「まったく、ノブったら……」

 隣のテーブルから酔っぱらいの大きな声がいやがもう耳に入る。


「そういえば聞いたか! ポルモナ村……魔物に襲われて滅ぼされたらしいぞ」

「マジか! あそこには歴戦の勇者がいたはずだが?」

「滅んだってことは戦死したんじゃねぇかな」

「まあ、それもそうか」

「お互い気を付けねぇとな」

「ああ、まったくだ」

 信長とサニアは顔を見合わせる。


「まあ、守り人がいなくなっちゃね」

「結局は、村人もどうしようもなかったしな」

「被害者ぶっていたけど、おかしな悠馬さんを一緒になって作っていただけだったしね」

「悠馬、名誉の戦死扱いになったな」

「悠馬さん、もっと若い段階で色々気付けたら幸せになれたのかもしれないんだけどね」

「二人ほど慕っている娘がいたしな」

「ほんっとその娘のどっちかと村を出て行けばよかったのに」

「俺たちのようにか」

「フフッそうね」

 信長とサニアが向かい合って笑いあう。

「はい、お待ち」

 元気のいいお姉さんがビールと果実酒を運んで来た。

「よし乾杯だ」

「おー」

 酒の匂いと共にゆっくりと時間が流れて行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ