死の呪い
「遥香。今日はどうする?」
クラスメイトの時田に遥香は声をかけられる。
今から遊ぼう、という誘いだ。
扉の所には他のクラスの女子たちがいる。
いつもなら遊びに行くが、今日は無理だ。
三時間目にいかれた女に脅迫されたせいだ。
授業をサボっていると、どこからか物騒な声が聞こえてきた。
声の聞こえる部屋に近づき中を見ると、首を絞められている女性がいた。
よくよく考えれば、幽霊が何かしたのかもしれないと思ったが、あの時は咄嗟に助けなければと体が動いていた。
俺と違って彼女には力がある。
変なことに首を突っ込んでしまった後悔している。
無視して遊びに出かけてもいいが、あの女子生徒は学園一の美女と呼ばれ性格までいいと言われている、天使鳳梨だ。
無視したら、次の日に何をされるかわからない。
(※勝手に作られた鳳梨の親衛隊に)
それに、あんな美女と話す機会がまた訪れるかわからない。
「悪い。今日は予定がある」
「そうか。じゃあ、また明日な」
「おう」
時田は他の男子たちと女子たちのところに向かった。
鞄に教科書をいれて帰りの準備をしていると、離れていても女子たちが俺がこないことにガッカリしている声が聞こえてくる。
(俺だって、本当は遊びたいのに)
でも、それ以上に「天使」と呼ばれている天使鳳梨の裏の顔の方が気になる。
指定された場所に着くと、既に天使鳳梨がいた。
いつもの天使のような笑みとは真逆の鋭い目つきをした彼女がそこにはいた。
こっちの彼女の方が好きだな、と思った。
「早速、本題に入るわ」
彼女はそう言うと俺に近づいてきた。
「あんた、このままだと死ぬわよ」
「は……?」
前言撤回だ。
彼女はいかれてやがる。
※※※
「あの瞳の蓮。どう考えても呪われてるとしか思えないわ」
この学校に入ってから、幽霊がみえる存在が自分以外にもいるか鳳梨は確認した。
同級生にも、先輩にも、先生たちにもいなかった。
それなのに、さっきの男子生徒にははっきりと見えていた。
首を絞められたことがむかつきすぎて、大事なことを忘れていた。
それに首を絞められたことは何度もある。
幽霊に憑りつかれた人間とかに。
逆にむかつきすぎて憑りつかれた人間をボコボコにしすぎて、やめさせるために絞められたこともある。
「最近よね」
放っておいてもいいが、この学校の生徒が呪い死んでいくのは勘弁してほしい。
きっと、あの男子生徒の周囲にも何人か呪われているものがいるだろう。
それにしても、いきなり幽霊がみえたら驚くはずなのに、あの男子生徒は普通に過ごしていた。
元々、肝が据わっているのか、それとも……
「ねぇ。何が最近なの?」
愛香がいつの間にか私の席の前に座っていた。
思っていたことが口から出ていて、それを聞かれたみたいだった。
「いや、最近。よく付き合う子たちが多いなって思ってね」
丁度、外でイチャイチャしていたカップルを指さす。
「あぁ。確かにね」
愛香はつまらなさそうに言った。
「もうすぐ、体育祭があるからじゃない?」
仁美が私の隣の席に座る。
「あぁ。あれね」
里穂は苦笑いをする。
「今年も鳳梨は人気かもね」
愛香のその言葉に私は笑うしかできない。
(クッソ。迷惑だわ)
心の中では悪態を吐いたが。
「あ、そういえば、最近休んでいる人って多い?」
呪いを調べるために話題を変える。
鳳梨と違って、三人は他クラスにも交友関係をもっている。
学校のことを知りたければ、大体三人に聞けばわかる。
「ん?なんで?」
愛香に逆に尋ねられた。
「いや。なんか、最近人が少なくなってる気がして」
鳳梨は適当にそれっぽい理由を上げるが、実際はどうかはわからない。
「そういえば、三組と四組の子たちがなんか、一斉に休んだらしいよ」
「え?なんで?」
里穂の言葉に仁美が驚いて声が大きくなる。
クラスにいた子たちの視線が鳳梨たちに集まる。
里穂は「うるさい」と言って軽く仁美の肩を叩いた。
仁美は「ごめん。ごめん」と謝った後に、もう一度「それで、なんでなの?」と尋ねた。
「その理由はよく知らないけど、噂で聞いたのは、ゴールデンウイークのときにどっかの幽霊スポットにいって呪われたんじゃないかって。まぁ、たぶん、深夜だったから風邪ひいただけだと思うけどね」
(それだな)
間違いなく、それが原因だと鳳梨は確信した。
どこの幽霊スポットかは知らないが、面倒くさい予感しかしない。
(遊び半分で行くなよな)
鳳梨が勝手に呪われた彼らに腹を立てていると、里穂が思い出したようにこう付け加えた。
「あ、そういえば遥香もその幽霊スポットにいったらしいよ」
「遥香?って、あの遥香?」
愛香は遥香っていう男子生徒を知っているのか、少し慌てている。
鳳梨は愛香がしている表情が何をさしているのかすぐにわかった。
幽霊たちと関わってきたから知っている。
というか、今も幽霊たちが楽しそうに愛香の表情をみてキャッ、キャッ、している。
あれは恋する乙女の顔よ、と幽霊の一人が言うと、他の幽霊たちにその幽霊はフルボッコにされていた。
(あー。もう、うるさいな)
幽霊たちの声がうるさくて、またもや読唇術を使って会話をしないといけない。
愛香の表情は確かに幽霊たちの言うように「恋する乙女」の顔ではない。
自分が気に入っている男が勝手に他の女子と遊んだことに内心怒っている顔だ。




