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男子生徒

私は今日もいつもと変わらない一日をおくっていた。


学校の人たちには天使と言われ、毎日、毎日、ジロジロと顔を見られる。


それは昔からなので今さら何とも思わないが、幽霊たちは違う。


視える人が珍しいからか、毎日イタズラしてくる。


何回かは見逃すが、脅せば大人しくなるので基本は放っておくが、今日の幽霊は質が悪すぎる。


死んでしまったことは悲しいことだが、正直知らない人間が死んで、こっちの生活を邪魔するのは違うと思う。


そっちは死んで誰とも話せないから寂しいかもしれないが、何もないところで話したり、変な行動をすれば変人扱いされるのはこっちだ。


損をするのはこっちだ。


話をしたいのなら、せめて誰もいないところでするべきだ。


死んだからといって自分勝手に振る舞うのは許せない。


ほんの少し考えればわかることなのに、それすらできないのは配慮がない。


天使あまつか


先生に名を呼ばれるが、幽霊が耳元でずっとぶつぶつ言っているのと、後ろから声をかけられたので気づかなかった。


隣の子が席を叩いて教えてくれるまで気づかなかった。


「え?」


「天使。大丈夫か。体調悪いのなら保健室にいくか?」


授業を聞きたくても、幽霊のせいでそれどころではない。


先にこの幽霊を何とかしないといけない。


「はい。そうします。すみません」


体調が悪そうなふりをする。


保健委員がついて来ようとするが、大丈夫だと言って一人で教室を出た。


出るまでに、何度も大丈夫かと聞かれたが、素直に大丈夫じゃないと言っても誰も助けてくれるわけではない。


どうしようもできないことだ。


曖昧に笑いながら誤魔化すしかない。


鳳梨は保健室に向かわず、誰もいない教室に入り幽霊の首を掴む。


「ねぇ。あんた。何様のつもり?」


天使のような笑みは消え、鋭い目つきに威圧的な態度で幽霊に問いかける。


幽霊は首を絞められ何も話すことができずにいた。


「あんたはさ、死んだらさ、好きに生きていいとでも思っているわけ?それとも。生前からそういう人間だったの?普通さ、考えたらわかるよね?知らない人間に顔を近づけられるのが嫌だってことくらい」


鳳梨の言葉に幽霊は口を金魚のようにパクパクとさせるだけで、声を発することはできなかった。


別にそれだけなら注意すればいいが、この幽霊は呪いの言葉を吐いていた。


死んだからいいと思っているのかわからないが、その行為を許すことができない。


「まぁ。いいや。あんたに聞いたところで何も変わらないし。あんたみたいなやつはさっさとあの世に逝くべきよ。私が手伝ってあげるわ」


首に力を入れようとした瞬間、扉が開いた。


幽霊に腹を立てすぎて、周囲への警戒を忘れていた。


というか、授業中だったので大丈夫だと油断していたのが大きい。


まぁ、入られても幽霊は見えないし問題はない。


体調が悪くて、と笑って誤魔化せばいいかと考えていると、「おまっ!なにしてんだ!」と怒鳴られた。


なにが、と思っていると急に体当たりをされた。


体がよろけ、幽霊を掴んでいた手が緩み逃げられた。


体当たりした人物を見ると、スリッパは赤で同級生だとわかる。


服から男で、この学校にこんな生徒いたかと記憶を頼りにするが、全く思い出せない。


そもそも、この学校は一学年九クラスある。


鳳梨は七組で、もし一組から五組のクラスだったら校舎が違うため知らないのも無理はない。


それよりも、この男子生徒は鳳梨が掴んでいた幽霊が逃げると安心したような顔をした。


間違いなく見えているようだ。


(なるほどね)


幽霊に逃げられ腹がたつよりも、勝手に勘違いして邪魔をされたことの方が腹が立つ。


鳳梨は怒りを抑えようと髪をかき上げ、これからどうしようかと考えていると、突然男子生徒に後ろから首を絞められた。


気絶させようとしているのだろう。


彼には鳳梨が極悪非道な人間にでも見えているのだろうか。


男子生徒はなかなか気絶しない鳳梨にさらに力を入れて落そうとしたが、突然視界が反転したと思ったら背中に強烈な痛みが走った。


「わぁ~。すごいわ。昔見たドラマのセリフを思い出したわ。ほら、あれ、「私の首を絞めた人間はあんたが初めてよ」ってやつ。どう?うれしい?」


(嬉しくねーよ)


男子生徒は鳳梨の殺気立った目つきに恐怖を感じた。


「特別に私もあんたの初めてを奪ってあげるわ」


鳳梨の右手に霊力が集まる。


普通の人には見えないが、男子生徒には霊力が集まっていくのが見えていた。


「ここでの出来事は忘れなさい」


鳳梨は男子生徒の頭を掴み、記憶を消す。


いつもならそれで、消された人間は倒れ、次に起きたら記憶はなくなっているが、なぜか男子生徒は倒れなかった。


「は?え?なっ!?」


何度、頭を掴みなおして記憶を消そうとしても男は意識を保ったままだった。


鳳梨は男の頭を両手で掴みなおし目を合わせて、彼の瞳の中を覗いた。


その瞳の中には黒に近い赤い光を宿した蓮の花が咲いてあった。


「あんた、いったい何者?」


(それは、こっちのセリフだっつーの!)


男子生徒は鳳梨の手を払いのけたかったが、強すぎて払いのけることができなかった。


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