11・剣道
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部屋で十五分ほど待つとグレイスフル子爵が戻って来て、俺を訓練場へと連れ出した。訓練場にいる兵士達は整列して待っていた。横に二十で縦に十。計二百人がそこにいた。
「彼らが我が領の兵士達だ。ボロボロの兵士が二人いるが、気にしないでくれ。あの二人は特に厳しい訓練をこなしただけだ」
その二人、さっき喧嘩していましたよね?とは口に出さず、俺は目の前にいる兵士達に挨拶をする。
「お初にお目にかかります。シュウと申します。本日は何卒宜しくお願い申し上げます」
「「「「「よろしくおねがいしゃあっす!!」」」」」
「お前達、良い声だ!今後も同じようにやれよ!さて、シュウよ。お主への用は二つあってな。一つはあの鎧を作った事への礼と褒賞について。もう一つはこの軍についてだ。簡単に言えば、何でも良いからこの軍を強くしてほしいのだ」
「何でも良いから、ですか」
「ああ。装備でも、戦術でも、個々人の実力の底上げでも、何でも良い。出来るか?」
「……とりあえず、今の装備や普段の訓練をお見せください」
「それもそうだな。おい!お前達!訓練に戻れ!あと、さっきの特に厳しい訓練はするなよ!」
特に厳しい訓練、つまり喧嘩をしないように釘を刺してから、グレイスフル子爵は「解散!!」と叫んだ。
兵士達が散っていくのを見届けてから、俺は口を開いた。
「グレイスフル子爵、案内をお願いします」
「勿論だ。とりあえず、歩兵の訓練から見せよう」
一番多くの兵士が向かって行った先に俺達も向かう。少し歩くと、木で出来た剣や槍を振っている兵士達の集団が見えた。
「ふむふむ、なるほど」
「何か分かったか?」
「槍は詳しくないので何も言えませんが、剣はただ振っているだけですね」
「ほう……」
俺は槍は全くの素人だが、剣は自信がある。前世では小学校入学前から剣道を習っていた。警察官になったのもそれが関係している。前世で二十年以上剣の道を歩んでいた俺からすると、この兵士達の剣の扱いは素人のそれにしか見えなかった。
「では、軽くお手本を見せてくれ」
「かしこまりました」
剣道で使う剣は、小学生は百十一センチ以下、中学生は百十四センチ以下、高校生は百十七センチ以下、大学生以上は百二十センチ以下というように定められている。
俺はまだ二歳で身体が小さいので、大体百センチの長さの剣を選んで貸してもらう。俺が両手で持つには丁度良いが、なぜこのような剣がこの場にあるのか分からない。この剣は、大人が両手で持つには短く、片手で持つには少し長いのだ。
疑問ではあるが、今はお手本を見せる事を優先する。中段に構えてから、素振りを見せていく。
「おお…………」
グレイスフル子爵だけでなく、兵士達も訓練を中断して俺を見ていた。千九百十二年に様々な流派を統合して生まれた日本剣道形。その動きはこの世界の剣の使い方とは比べ物にならないくらい洗練されている。見惚れるのも無理はない。注目が集まってきたところで、素振りから、シャドーボクシングならぬシャドー剣道に切り替える。
「…………お粗末さまでした」
それからしばらくして、俺は剣を振る事を止めて、グレイスフル子爵と兵士達に礼をした。構え、目付け、腕の振り、足捌き、踏み込み、気合。今世では初めて剣を握ったため、前世でのそれほどは美しくなかったと思うが、人に見せても恥ずかしくないくらいには出来た気がする。
「……これだけでも、呼んだ甲斐があったな」
「グレイスフル子爵、何か仰りましたか?」
「何でもない。他の所にも行くぞ」
剣を返してから、俺はグレイスフル子爵についていく。少し歩くと、今度は兵士達が弓の訓練をしている場所に辿り着いた。