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萎えた傷を癒すのは-ロージー

 もうそろそろ、このバイトともお別れだな、と思っていた。大学4年の4月、就職先も決まり夏からインターンが始まるためこのバイトともあと4ヶ月の付き合いになってしまった。大学2年の秋からここで働かせてもらって、働き始めた頃より時給も上がったし、結構いい役職にも就かせてもらったし、何より人として成長させてもらった。入ってきた時よりだいぶ大人びてしまった私に疲れを覚えつつも、ここまで頑張ったなぁと思う自分もいる。


 そんなとき、後輩の紹介で入ってきた2歳年下で春から大学2年になった男の子が入ってきた。第一印象はとにかく元気な子、だった。ずっと笑顔で、一緒にいるだけでこっちも何かと元気になれた。ニカっと歯を剥き出しにして笑うときに見える八重歯が少し可愛くて、2つ下なだけなのになんだか可愛さを感じた。

 バイトの日が被ると「今日は何してたんですか!」「明日は何するんすか!」とか聞いてくれるし、「その仕事、力必要ですよね。俺やっておきます!」「ずっとそれやってますよね、俺やっておくんで休憩行っちゃってください!」とか、意外と良く気がついてくれる。


 ある日その子から連絡が来た。

〔お疲れ様です!明日って何してますか?〕

〈おつかれ〜

 何も予定ないからバイト変われるよ〉

〔あ、俺明日シフト入ってないです!〕

〈どうした?〉

〔よかったら明日普通に会いませんか〕

〔と思って〕

〔連絡したんすけど〕

〔だめですかね〕

てっきりバイト変われるか、の連絡かと思ってびっくりした。

〈いいけど、何するの?〉

〔カフェとか行って話したいです〕

バイトについて何か相談だろうか。

〈わかった、いいよ〜〉




 翌日、その子と待ち合わせたカフェに向かうとすでに到着していた。

 自分のドリンクの会計を済ませ、席に向かう。

「お疲れさま〜。」

『お疲れさまです!今日急だったのに、ありがとうございます。』

「大丈夫だよ、どうかしたの?」

『いや、あの、普通に仲良くなりたくて誘っちゃいました・・・。』

「そうだったの?てっきりなんかバイトのことで相談かと思ってた。」

『バイトは全然何もないです!むしろ順調です!』

「それならよかった笑」

 

 それからたくさん話をした。休みの日は何をしているかとか、好きな食べ物の話とか、昨日見た夢の話とか。とっても楽しくて、人柄の良さを感じた。

 ただ、バイトの相談だと思っていたため、この後別の予定を入れてしまっており、解散することになった。

「今日ありがとう、意外と楽しかった。」

『俺はめちゃくちゃ楽しかったです!よかったら次は好きだって言ってた水族館、一緒に行きましょ。』

「うん、また連絡するね。」


 解散直後すぐ連絡が来た。

〔ほんと楽しかったです!もう寂しいです。〕

〈私も楽しかったよ、ありがと〜〉

〔水族館、いつ行きますか〕

〈土曜日なら空いてるけど〉

〔行けます!!土曜にしましょ!!!めっちゃ楽しみっす!〕


 私も鈍感な方ではないし、過去に恋愛もいくつかしてきた。だから彼からの好意に気づいていないわけではない。ただ、直近の恋愛があまりいいと言えるものではなく、しばらく恋愛はいいかな、という気持ちだったのだ。

 しかしなぜか私は彼との次の予定をなぜか楽しみにしていた。


 水族館に行ったこと、というか、言ってしまえば水族館デートはとても楽しかった。魚やペンギン、アザラシを見て癒されたし、それを見てはしゃいでいる君が可愛く感じて、なんだかすっごく愛おしかった。夜ご飯を食べにイタリアンレストランに行った。元彼ともきたことがあって知っている店だったので、お店選びでグダるのも嫌でここを提案した。

『こんなおしゃれなレストラン知ってるんすね〜・・・。』

「うん、前に1回来たことあるからね。」

『ふーん・・・、前に来た時って、誰とですか。』

「直近で付き合ってた元彼だよ。そんなこと聞いてどうすんの。」

『俺、聞かなきゃよかったです。なんか今、めっちゃ悔しいです。』

「ええ、なんかごめんね。」

『いや、俺が悪いです。勝手にこんな気持ちになって。』

 そんな思いになってくれた彼がまた愛おしいと感じた。


 食事をして、それから近くの海沿いを散歩した。

「最近夜もあったかいね。」

『そうっすね、俺もう衣替えしちゃいました。』

「バイト中も半袖だもんね笑」

『あそこ暑いんすもん!笑』

「ちょっとこのベンチ座ろっか。1日中歩いてたから疲れちゃった。」





「ねえ、なんで今日は誘ってくれたの?」

 少しの沈黙の後、彼は口を開いた。

『一緒にいたいって思うんです。あの、つまり、好きなんだと思います。

 笑ってる顔見たらすっげえ嬉しいし、悲しそうな顔してたら辛いし。さっきも元彼の話してる時すっげえ寂しそうな顔してて、うわー悔しいな、俺なら笑顔にさせてあげるのに、って思ったんです。』

「そっか。」


 正直、いまは恋愛をするのが怖い。もう傷つきたくないし、大切にしてくれない人に自分の時間を割きたくない。

 でも、この子には一か八か賭けてみたいって思った。この傷を癒すのはあなた以外考えられなくて、だからあなたに寄り添ってみたい。それに好きって言われて、すっごく嬉しい。私をこんな気持ちにさせてくれるの、この子しかいないんじゃないかな。


「そう言ってくれてすっごく嬉しい。ありがとう。


 私も好きだよ。」

『ほんとっすか!!!!いや、俺いま、振られるかと思って、めっちゃ緊張したっす。』

「でさ、好き同士だから、なに?私たちどうなるの?」

『うわー恥じー・・・。えっと、付き合ってほしいです。』

「うん。よろしくお願いします。」


 付き合った瞬間、私たちは2人とも笑顔だった。だって、2人は恋人になったから。


『ちょっと俺、めっちゃ嬉しいっす。ほんと、初めて見た時からすっげぇ可愛いって思って、バイトで色々教えてくれてる時も優しくて、だから、ほんとに本当に嬉しいです。大好きです。』

「そう思ってくれて私も嬉しい。ありがとう。」


 それから毎日が幸せだった。何をしてもしていなくても、あなたがここにいてくれるだけで心が熱くなる。こんなこと言うの恥ずかしいけど、運命だなってすごく感じた。


 これからもずっと、私のそばにいてね。

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