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雨がやんで虹がでた時きっと-アイツを振り向かせる方法

高校生になれば最高の学園生活が始まって、運動も勉強も恋愛も順調、人生サイコー!!!


 ・・・だと思っていたのは1年の4月までの話。

 2年前のこの日、私はアイツに告白した。

 好きになったのはそれよりも前。高校入試の日に学校の廊下で見た時に一目惚れして、入学初日教室に足を踏み入れると、なんとアイツが1番前の席に座っていた。座席表を確認すると私の席はその後ろで、「運命」って本当にあるんだなって実感した。

 そこから仲良くなるのに時間はかからなかった。コミュニケーションが得意な私は積極的に話しかけ、出身中学、兄弟構成、好きなスポーツ、休みの日は何をしているか、アイツのことをどんどん知っていった。知るたび好きな気持ちは増えていって、あの頃の日記を見ると、「好き!好き!好きだ好きだーーー!!」なんて書いてある。今読み返すと苦笑いしてしまうほどのめり込んでしまっている。

 だがしかしそう思うのも無理ない。私と話している時にしか見せない笑顔があったり、授業中私がしたミスを華麗にカバーしてくれたり、みんなに優しいけど私にはなんかもっと優しくしてくれてる気がしたし・・・、アイツだってちょっぴり悪いと思うんだ。


 みんなが高校生活に慣れてきた5月、席替えがあった。それはつまり、アイツと席が前後ではなくなったしまうということだ。その日は学校に行く前神社に行って神様にお願いして、電車でおばあちゃんに席を譲って、先生にいつもより大きな声で挨拶してみた。

 もちろん狙うはアイツの隣。力を込めてくじを引く。紙を開くと

「8番・・・。」

 急いで前の座席表を見ると先に書かれていたアイツの名前を見つけた。そしてすぐにその2列右斜め前に「8番」の文字を見つけた。ついでに1番前の席だった。

 2列も前・・・、しかも1番前・・・。せめて後ろなら授業中ずっとみていられたのに、なんで前なの・・・。

 私の願いも虚しく、席はとっても離れてしまった。しかし私は諦めない。プリントを配る時は左から後ろを向いてアイツに視線を送る。その度アイツの笑顔が見えて幸せな気持ちになるが、その笑顔が私に向けられたものではないことを確認して失望する。


 ある日の帰り道、アイツと接点が格段に少なくなっていることについて考えながらとぼとぼ歩いていた。どうすればたくさんアイツと話せるだろうか・・・。すると後ろを歩く2人組の会話が聞こえてきた。

「部活何にするか決めた?」

『まだ決まってないー!明日までなのにやばい・・・。』

え、入部届って明日まで⁉︎どうしよう、何も考えてなかった・・・。

「早く決めないとだねー。私野球部のマネージャーやってみようと思ってるんだよね。一緒にやらない?」

『私もやってみようかな。弟、野球やってるしママも喜ぶかも。』

その時4月にした私とアイツの会話が鮮明に蘇ってきた。確かアイツはバスケ部に入るって言ってたな・・・。


 思い立ったら即行動派の私は翌日バスケ部顧問のおじいちゃん先生にアイツが入部届を出したか確認しに行った。

『ああ、確か入部届を出してくれていたよ。それがどうかしたかね?』

「じゃあ私も男子バスケ部マネージャーとして入部させていただきます!これからよろしくお願いします!」

『そうかい。今マネージャー1人しかいなくて、なんせワシがこんなんじゃからその子の仕事量が多くて困っとったんじゃよ。どうぞよろしくね。』

スキップしながら職員室を出る私の後ろ姿に『青春じゃねぇ・・・。』と独り言を残していたのは最近知った話だ。


 それからというものの私の毎日は薔薇色だった。マネージャの仕事もこなしつつ、日々の生活でアイツと話す機会が増えた。「単純接触効果」とは言ったものでアイツの気をこちらに向かせるどころか、私がアイツのことをどんどん好きになってしまっていた。特に最高だったのは試合中のプレイヤーの写真を撮る仕事で、顧問の先生に「ちょっと1人の子を撮りすぎじゃよ。」と怒られることもあった。


 時は過ぎて7月、高校の近くでお祭りがあった。夕方まで体育館で練習があったので、私はバスケ部の同期みんなで行くことにした。ということはもちろん、アイツもいるということだ。

 実は今日アイツに告白しようと思っている。なんとかしてアイツと2人っきりになって、そのタイミングで気持ちを伝える予定だ。

 練習に向かっている途中、アイツを見つけた。

「おはよ。」

『お、おはよ!』

「今日お祭り楽しみだね。」

『ね、朝電車乗ってる時ちょっと雨降ってたけど、止んでよかったわ。』

「今日ずっと晴れてるといいなあ。」

「だね、あ、虹!」

 告白を控えて緊張しまくっている私とは裏腹に、アイツは虹を見て嬉しそうにしている。


 太陽が傾いてきた頃、私たちはお祭りへと向かった。道中も、着いてからも、私はなるべくアイツの近くにいるようにしてそのタイミングを伺っていた。


 『あれ?雷鳴ってね?』

 部員の1人がそう言ったのも束の間、どしゃぶりの雨が降ってきた。出店の主人が商品をしまい、道ゆく人が足早に祭り会場を後にしようと急いでいる。

 

「ねえ。」

 私は走り去ろうとしてしまうアイツに声をかけた。だって今日言うって決めてたから。せっかく決めてきたのに、今言わないとすっごく後悔してしまうから。

「好き、初めて出会った時からずっと。」

『え⁉︎あ、え、今⁈⁇⁉︎』

「うん、今。」

『ええー・・・、いや、ちょっと、一回あっち行こ。』

 アイツは鞄から取り出した練習着を私にかけて、屋根のあるところまで手を引いてくれた。


 そこからはもう駅へ向かう人で道は大混雑。告白の返事を聞く暇もないまま、自宅へ帰ってきてしまった。

 その日の夜、私はアイツに電話をかけた。コール音が私の心臓をどんどん早くしていく。

『もしもし。』

4コール目で、大好きなアイツの声が聞こえた。

「・・・もしもし!」

『さっきマジで雨やばかったな。』

「ね、制服ずぶ濡れだよ。」

『俺も帰って母ちゃんにめっちゃ怒られたわ。』

「あ、練習着、洗って返すね。」

『いつでも大丈夫だから、何着もあるし。』

「・・・、あのさ、なんで電話したかわかってる?」

『まあ、ちょっと。』

「なんだと思う?」

『・・・、さっきの返事だろ?』

「うん。」

『なんだろ、うん、今は頑張りたいことあるから、ちょっと難しいかも。』

「そっか。」

『俺、不器用だからさ、部活も勉強も恋愛も全部両立できないと思うんだ。』

「そんな不器用なところも好きだよ。」

『うん、ありがとう。そう言ってくれるのはすっげぇ嬉しいし、そもそも頼れるマネージャーとして尊敬してる。めっちゃ周り見えてるし、俺らが欲しいものすぐ気づいてくれるし、あ、あとスポドリの配分完璧。先輩が作るやつ濃過ぎて毎回喉燃えてる気分になる。』

「何だそれ。」

『まあこうやって話してても楽しいわけだし、これからもクラスメイトとして、頼れるマネージャーとして、友達として仲良くしてほしい。』

「わかった。じゃあこれからもよろしくね。」

『うん!よろしくな。

 じゃあ、また明日。』

「うん、またね。」


 切りたくなかったけど、切れてしまった。

 翌日、朝練に行くとアイツは何事もなかったように話しかけてくれた。それからも授業でわからないこととか、部活のことで相談があれば電話をし、その度いろんな話で長電話になった。正直2年たった今でも電話ってなるとドキドキしちゃって、かける前は絶対に深呼吸する。

 それくらい私はずっと好きで好きでたまらない。部活を引退したタイミングか、受験が終わったタイミングでもう一度告白しようと思っている。だから今は気長にそのチャンスを待つだけだ。


 今の目標はただひとつ。アイツを振り向かせることだけ。


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