笑い飛ばしてくれますように-明日の歌
いつからだろうか、あなたのことがわからなくなったのは。
扇風機の風を浴びながらベッドに横たわって、天井と睨めっこしながらそんなことを考える。今までのあなたとの思い出や過ごした時間を、意味もなく振り返る。
付き合ったばかりの頃は好きで好きで、大好きで、ずっと一緒にいるものだと思っていた。まるでこの世界に私とあなたしかいないような気がして、それでもいい気がして。
私が疲れて眠い日にはあなたが私の濡れた髪にドライヤーをかけてくれたり、あなたが仕事で忙しい時にはシンクに溜まっている洗い物を私がしてあげたり。お互いがお互いの足りない部分を補って、辛いことは半分、笑い声は1人でいる時の2倍だった。
初めてのケンカもあとから振り返ってみれば可愛いもので、2人で一緒にいるために乗り越えなければならないものだったと思えば嫌な思い出にもならない。あなたと見た桜の花びらもセミの抜け殻も、綺麗な夕日も繋いだ手も全部今までの日々の中に存在していて、繰り返すことも、でも蓋をされることもなかった。
そんな日常の中で少しずつすれ違っていった。家に入った時に揃えない靴とか、夏場でも2ヶ月に1回しか洗わないパジャマとか、私の話に相槌だけ打ってあんまりよく聞いてないところとか、少しずつあなたの嫌なところが見えていた。けど、見ないふりをしていた。だって大切な家族にも友達にもあなたのいいところたくさん自慢してて、今更また誰かと出会って、恋に落ちて、付き合ってとか面倒くさかったから。それに、嬉しいことがあった時は一緒に笑ってくれたし、一緒にいて楽しくないわけじゃないし、悪いところを見なければ良い人だったから。
そんな日々とか私の思いとかが、一本の電話で崩れ去っていった。
あなたの「別れよう」の一言で、全てがゼロになった。
それから何日も泣き続けた。夢にもたくさん出てきた。日常のいろんなところにあなたとの想い出があって、目を背けても私の脳裏にそれは刻まれていた。
好きだったはずの音楽も、好きだったはずのこの匂いも、今は無条件で嫌いになった。毎日が同じ色をしていて、口角も硬くなってうまく笑えなくて、私の頬に泣き跡だけがずっと残っていた。
ふと、あなたが置いていったTシャツが目に入った。捨てたと思ってたのに、まだここにあったんだ。
拾おうとしたけどなんか嫌で、足ですくってゴミ箱に入れた。




