月と目が合って笑う-相思相愛
私とあなたじゃ立場が違いすぎる。
大学生の私と経営者のあなた。住む世界も、流れる時間も、何もかもが違う。月に3回会えればいい方で、会えない日は電話に誘おうと思うけど、疲れているあなたのことを思うとその気も引けて来る。連絡を続けるのもなんだか申し訳なくて、途中でやめてしまう。
それでも会える日はやっぱり嬉しい。この日なら会えるかもって言ってもらえたら全力で時間を作るし、会っている時間はこの上なく幸せだ。
一緒にご飯を食べて、美味しいね、と笑い合ったり、手を繋いで、声を聞いて、抱きしめ合ったり。それだけで幸せなのに、キスなんてしたらもう、とっても大きな感情が押し寄せてきてしまう。
朝起きて隣にあなたがいてくれたら嬉しいけど、その分さよならの瞬間も寂しい。あなたまで悲しい気持ちにならないように精一杯笑顔を作って笑ってみるけど、家に帰ると涙で溢れることもある。
最初の方は「なんで会えないの」と自分勝手に怒ってしまうこともあった。友達の大学生同士のカップルを見て、彼らが一緒に旅行している姿を見たりすると、すごく羨ましいと思った。あなたは2日間おやすみを取る事も難しいから、旅行なんて夢のまた夢だ。
でも、ある夜その考えは根本的に捨て去られた。
忙しい合間を縫って会う時間を作ってくれたあなたの家に遊びに行った月が輝く夜、あなたは夢について話してくれた。
普段どこで何をしているかもわからないし、あまりそういうことを表立って言いたくないあなただけど、その1つの夢、目標に向かって忙しくてもひたむきに頑張っている、ということを聞いた。その時のあなたの目がとっても輝いていたのは素敵な話をしていたからなのか、それとも夜の空に浮かぶまん丸な月があなたの目の奥を照らしていたからなのか。
そして、私は飽き性で1つのことに向かって努力をするっていうことがあまり得意ではない。
だからこそ、そういう自分にはない人間性というか、そういう一面が尊敬できて大好きなんだ、と実感した。
もちろん不安にならないわけじゃない。大好きだから、一緒にいたいと思うのは当たり前だ。でも、そんな寂しい夜は月を見上げて、そのどこかにあなたの影を探す。あなたがどこにいようとも、この空の下で繋がっていると思うと少しだけ安心できる。
私はあなたになれないから、悔しいけどあなたの頑張りに共感することはできない。ずっと遠くから見てることしかできなくて、やっとの思いで会えた日は風のように一瞬で過ぎ去ってしまう。それでも次に会える日を待ちながら、あなたが頑張っているように私も毎日を一所懸命生きるのだ。




