0.1
主人公も頑張るし、作者も根気強く連載頑張っていこー!
「俺の子供を産んでください!」
「すみません、出来ません!」
男性からの告白を思いっきり断る。この世界に来てから一体何度目か分からないが、何故私程度の人間に告白するのだろうか?
これは、自分が生きていた世界とは違う世界に来た元男性の物語。
落ち着くまでに大層な時間がかかる、そんな現女性の物語である。
・・・
ぴちょん
何かが額に落ちてきた感触で意識が上る。
そして、意識が上る感覚になつかしさを覚え、それが違和感にもなる。
(・・・意識が、ある?)
僕は・・・たしか・・・病にかかって・・・それで?
かつて僕は元気に生きていたはずなのだが、突然体調が悪くなり病院に行ったところ不治の病と診断された。
社会人になってこれから脂が乗ってきたり、本格的に結婚を考えようと思っていた時期だったのに余命を告げられた僕。当然絶望を感じた。
これまでの自分の人生はいったいなんだったのか?
そんな思いを抱え、きっと死にそうな顔をしていたのであろう僕に対して、大学病院の先生は言った。
「・・・今、国内で2回目となる冷凍睡眠、コールドスリープの被験者を募集しています。この不治の病は確かに不治ではありますが、まったく研究が進んでいない訳ではありません。」
「え?」
「ご両親と早い別れになってしまいますが、半世紀後には治療が可能になっている可能性があります。どうでしょうか?」
「コールドスリープ・・・」
最新の量子コンピューターによって実現可能になったらしいコールドスリープ。そんな噂を聞いたことはあったが、まさか自分が入ることになるとは思わなかった。
だけど、僕にはそれに頼るしか道が残されていない。どうせ両親とは1年ちょっとで死別することになるんだ。だったら入院するまでの間に色々な手続きを済ませて最後の親孝行をすれば大丈夫だろう。
それに今は人生100年時代。50年後に目覚めたらよぼよぼになった二人に会える可能性も高い。
そう考えた僕は話を受け入れて、両親や友人達に別れを告げた。
勿論泣いた。友人たちとは最後に飲み会(僕は飲まなかったけど)をして、両親には最後の親孝行として僕の持つ全ての資産を譲ろうとした。
だが、父親からそれじゃあお前が目覚めたときにどうするんだと言われて、預金に3人分の旅費だけ残して残りは定期預金に入れた。
大きく体調を崩すことなく両親との最後の思い出を作った僕は、「50年後にまた会おうぜ!」という精一杯の写真を皆に置いて、眠りに着いた。
以上が僕が眠る前の話だ。
そんな僕がこうやって思考していられるということは、50年経ったのだ。僕の病気が治る時代に・・・!!
「・・・?」
期待を込めて目を開けようと思ったが、目が開かない。まさかずっと眠ってたから目が退化した?いや、この感じは何かくっついているような・・・、まさか目ヤニで目蓋がくっついてる!?
前説明では生理反応が限り無く0になるから思うより汚れていないと思うよ、と言われていたのに・・・!
気合を入れて目に力を込めると少しパリパリという音がしながら少しずつ開いていく。
そして薄目程度に開いたところから勢い良く目が開いた!
「・・・・・・え?」
目が開いた僕に見えたのは薄暗い洞窟。
記憶の最後はコールドマシンの蓋だったのに。
意味が分からない。だが、僕の脳は現実逃避的にとある事を思い浮かべた。
(そういやなんかの作品で、目覚めたら文明が壊滅状態だったとかあったなぁ)
それが浮かんだ僕は自分の寝ていた床を見る。コールドマシンどころか、病室の床ですらない。柔らかい草?だった。
「じゃあ違うか」
(!?誰??)
今知らない声がした。もしかして僕以外に誰かがいるのだろうか?
だ、誰かいますか?
「だ、誰かいますかぁ?」
・・・?僕の声がしない?いや、今確かに喉が震えた感覚があった。でも僕の声は聞こえない。その代わり僕が喋ったのとまったく同じ台詞が、高い声で聞こえる。
・・・・・・まあ、論理的に考えればそういうことだろう。だがコールドマシンにそんな機能があるのだろうか?喉を使わなさ過ぎて自然と裏声みたいになるとか。
「論理的に考えろよ」
つい自分の口から漏れてしまった。高い声で。
そう、論理的思考だ。ロジカルだ。僕は自分の裏声を知っている。ヘリウムガスを吸った時の声も知ってる。それはどちらも今の声とは違った。つまり・・・。
目線を上に向けて一息つく。ではロジカルにチェックメイトと行こう。
両手を自分の股間に持っていく。
無
無
無
無
無
僕の負け。ロジカルの勝ち。
「・・・・・・どういうことだぁ・・・・・・・」
人間、本当に意味不明なことだと叫ぶことが出来ない。
コールドスリープしていたはずの僕は、何故か洞窟の中で女性になって寝転がってました。
いみふ。