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お題シリーズ2

恩 大きすぎるお返し品

作者: 仲仁へび



 全てをなくす前は……。

 よくある冒険物語のような出来事にあこがれていた。

 異世界に行って、チートをもらって、かわいい女の子に囲まれて、楽しく過ごす。


 けど、現実はそんないいもんじゃない。

 未練があった。

 会いたい人がいた。

 やりたい事が残っていた。


 それなのに、突然別の世界に呼び出された。


 ふざけんなよ。

 どうしてくれるんだよ。


 だから、召喚者とか言う奴にそう食ってかかった。


 でも、召喚主は強大で手も足も出なかった。


 未練を残したまま放り出された世界は、やけに広くて冷たかった。


 見知らぬ土地を歩き回って途方にくれていた俺は、一人の少女に助けられた。


 治安を守る組織に目を付けられて、「怪しい奴だ」とか言われて、質問責めにされた時だった。


 やけを起こす前に手を差し伸べられたのは奇跡だっただろう。


 あと3秒遅かったら、どうしてたか。


 俺は、その少女に何かしてあげたかった。


 けれど俺が何か出来る事なんてない。


 彼女の方がよっぽど物知りで、たくましくて、根性があったからだ。


 仲間も大勢いて、権力もあって、地位もあり、富みもある。


 心も体もずっとずっと俺より強い。


 俺は返すべき恩を、胸にしまいこんだ。


 それから、月日が流れて色々な人に助けられ続けた。


 なんとかやっていける。


 そう思った日に、俺の使命が判明した。


 俺がこの世界に送り込まれたのは、一人の少女を殺すためだった。


 世界を敵に回した大罪人。


 この世界を統べるものを敵に回した卑劣な犯罪者。


 その人物は、俺に最初に手をさしのべてくれた彼女だった。


「あなたも、私を捕まえようとするの」

「いいや、俺は君を助けに来た」


 だから追う者として、彼女の前に立ちはだかった俺は、ようやく恩を返す事ができたのだ。


「全てを奪われた後、この世界の未来もなくそうとしていた俺を、君が助けてくれたから」


 世界中から疎まれないと返せない恩なんて、ある意味大きすぎて扱いに困るよな。



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