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図書館と観測者のブレイクタイム!  作者: 鳥路
第一章:略奪乙女と愛情の観測記録
9/30

観測記録8:夜ノ森小影編「魔狼の長と長い時間の振り返り」

「譲さん、譲さん」

時雨ちゃんが慌てた足取りで観測部屋に入ってくる

息を切らした彼女は息を整えた後、その翡翠色の目をこちらに向けた

「やはり、神様「は」何も干渉していないとのことです」

「神は・・・って」

「・・・別の何者かの介入が確認されたとの事。禁則は撤廃し、回収係から助手として異動命令がありました。そして連携して犯人を追い詰めるように仰せつかりました!」

「それじゃあ・・・!」

「はい。改めまして、赤城時雨です!あの場所の時のように、精一杯助手を務めさせていただきます!よろしくお願いしますね、譲さん!」

「ああ。よろしく頼むよ。君が一緒なのは心強いね」

生前の最後の事件である「始まりの島」

偶然居合わせ、コンビを組むことになった彼女と共に島の調査をしたのはまだ記憶にしっかり残っている

数千年ぶりの、本当の意味の再会と、もう一度コンビ結成は唐突にやってきた

「じゃあ、早速観測を始めていくよ。異常があれば・・・今は泳がせて」

「了解です。こちらから探りを入れてみますね」

「頼むよ。じゃあ、今日の観測は・・・」

今日の観測はとある異形の少年

「魔狼」と呼ばれる一族。その禁忌を犯した長の物語

「それでは、観測を始めようか」


懐かしい記憶を辿ろうと思う

これは、俺がまだあの時代で生きて、罪を犯す前の話だ


江戸時代後期のどこか

山奥に存在している小さな集落のはずれ・・・その中でも特段大きな家の中

三人の娘は、家中を駆けて「あるもの」を探していた

俺は、瓶の中に身を潜めて、三人をやり過ごそうと必死に息を殺していた


「かげちゃーん。どこにいったのー」


一番上の姉である小日向こひなた姉さまの声が聞こえる


小影こかげぇ!さっさと出てこないと、皆困るんだから!早く尻尾だしなさい!」


二番目の姉である小明こあけ姉さまの怒鳴り声と、荒い足音が通り過ぎる

それでも俺は必死に三人の追跡を逃れようとするが・・・


「小日向姉さま、小明姉さま。こんなところにいましたよ。小影ちゃん。今日は瓶の中ですか。可愛いですね、小影ちゃん?」

「・・・小朝こあさ姉さま」


けれど、三番目の姉である小朝姉さまはいつも俺を見つけ出す

当然と言えば当然だ。小朝姉さまは、千里眼を持っているのだから


「あらあら、こんなところにいたのね」

「小日向姉さま」


困った表情を浮かべながら、小日向姉さまは俺を抱え上げて、あやすように揺らす

もうそんな年齢ではない。幼子ではないのに、姉さまたちはいつも俺を子ども扱いする

全く、この時期でも百二十三歳になっていたというのに

まだまだ、百七十歳を超えた姉さまたちにとっては、子供だったのだろうか


「あんたねえ・・・一応、次期長の自覚をもって行動しなさいって何度も言っているわよね!」

「小明姉さま。わかっています。しかし、それでも、女の格好をするのは・・・」

「小影ちゃん。わかっているわ。貴方は男の子だもの。嫌なのはわかるわ」


小朝姉さまは俺の頭を優しく撫でてくれる

そして、俺を抱きかかえた小日向姉さまはいつも通り女装しなければいけない理由を優しく言い聞かせてくれる


「魔よけの為に、小影ちゃんが成獣になるまでは女装をしなければならないの。そうしないと、悪いものが小影ちゃんに取りついてしまうのよ」

「・・・むう」

「わかってくれとはいわないわ。けれど、貴方がいなくなれば、魔狼は途絶えてしまうの。父様もいなくなってしまった・・・もう、子孫を残せるのは貴方だけなのよ」


言い聞かせるように、小日向姉さまは俺に優しく語り掛ける

毎回、同じことだ

俺がいなければ・・・この集落は滅ぶ

そして、魔狼と呼ばれる異形の一族も・・・滅び絶える


「ごめんね、ごめんね。かげちゃんだけに全部背負わせてね。姉さまたちは、かげちゃんが立派な長になる日まで・・・頑張って支えるからね。だからかげちゃんも・・・我儘言わずに姉さまのいうことを聞いてほしいの。この集落の為にも」

「・・・小日向姉さま」


もう、長である父様はもいない

人間に狩られた父様は死んでしまった・・・だから、自然とこの集落唯一の男の魔狼である俺が次期長として指名された

長には、男の魔狼しかなれないから

幼い長に、父に長としての教育すら施されていない俺に期待する者はいない・・・しかし、それに縋るしか生きながらえる方法がない

だからこそ、姉さまたちはいつもこうして俺に「長としての振る舞い」を求める


この集落の魔狼を引っ張っていけるのはもう、俺しかいないから


・・・・・


それから五十年ほどの時が経った

百七十三歳・・・人として擬態する力も得て、自分の意志で尾と耳を出し入れすることが出来るようになった


女装から解放され、俺は若長としてこの集落に・・・まだ、認められていない

明後日、新年を迎える良き日に・・・俺は長としての初儀式に挑む

そこで、成功を収めることが出来たならば・・・立派な若長として、この集落を引っ張っていけるようになるのだろう


今日は勉強も何もない日。俺は今夜の夕飯に使う魚を呑気に釣っていた


「ふぁ・・・」


冬の寒い空気が、身を震わせることはない。けれど、やはりこの時期は凄く眠くなる

元々、なんとなく冬眠したくなるような時期なのだから

必死に意識を保ちながら、いつくるかわからない魚を待っていた


「かげちゃん」

「小日向姉さま。どうされたんですか?」


おっとりとした小日向姉さまは、いつも俺が何か悩んでいる時にふと背後に現れる

一番上の姉さまには、強気な小明姉さまも、何でも見える小朝姉さまも・・何も隠すことはできないのだ

川のせせらぎしか聞こえない川の側

俺の隣に腰かけて、小日向姉さまは釣りの様子を見守る


「ううん。お魚どうかなって思って。お隣さんに分けられそう?」

「はい。お隣さんの木の実と交換できるぐらいには」


そう言って、魚を入れた籠の中を小日向姉さまに見せる

十匹以上は釣れたと思う。何回かズルしたけれど


「長殿は、川に入って魚を取らないのですか?」

「こうやって、釣竿を使って魚を釣るのも風流なのですよ・・・八匹ぐらいは、その手段で取りましたが」

「ふふ。慣れているから当然ね。でも、かげちゃんは、本当に人の文化が好きね」

「はい。これも、この集落の文化をより良いものにする為の知恵ですから。これからもたくさん蓄えたいなと考えています」

「・・・また、柳栄村に行ってきたの?」

「少しだけですよ。昨日も、俊至としゆきと遊んできました。これも、俊至に教えて貰ったんですよ。あいつ、兎の耳が付いているんですよ。きっと・・・!」


きっと、同じだと続けようとした

けれど小日向姉さまは酷く悲しそうに目を細めた


「かげちゃん。あの村に近づいたらダメよ。あの村は・・・貴方が思っているより危険なの」

「そう言いますが・・・あの村、異形の者と共存できているのですよ?」

「あれは、私たちのように生粋の異形ではないの。あれは作られた異形よ!だからもう、近づいたらダメ」

「・・・小日向姉さま」

「お願い、あの村の男に、父様は殺されたの。私は、もう家族を失いたくないの」

「わかりました。もう、あの村には近寄りません」

「それでいいのよ。それに、人の文化はあの村以外で知ったらいいわ。万物を癒せる龍も、人の意志を操れる蛇もいない土地でなら・・・構わないから」


必死の形相だった小日向姉さまはその言葉を聞いて、いつも通り朗らかな笑みを浮かべる

それほどまでに不安にさせてしまったのだろう


・・・長としても、そして弟としても小日向姉さまの不安をあおる真似はしないと決めていたのに、なかなか難しい


「この儀が終わったら、少しだけ人の世に溶け込むために商人として村を数年離れるんでしょう?」

「はい。今の集落の文化では、これからの時代の変化に置いて行かれてしまいますから。集落だけでも稼げるように、したいなと・・・」

「うん。私も、小明も小朝も皆、かげちゃんのことを応援しているからね。帰ってくる日を楽しみにしてる」

「ありがとうございます、小日向姉さま」


小さい頃のように、頭を優しく撫でられる

昔から、小日向姉さまにこうしてもらうのが、俺も姉さまたちも大好きだ

俺を産んでから、母様は亡くなってしまった

だからか。俺にとって小日向姉さまが母様のような存在なのだ

優しくあり、厳しくある。母親のような姉さま

俺は姉さまの期待に応えたくて、ここまで頑張ってきた

周囲に色々言われようとも、俺を育て上げてくれた大事な姉さま

今度は俺が、姉さまに返す番。姉さまの為に、皆の為にこの集落を守るのが俺の長としての役目だ


「今度の風呼びの儀、頑張らないとだね。長。皆に認めてもらえるように」

「はい。姉さま」

「それじゃあ、私はお家の事に戻るね。お魚、楽しみにしてる」

「はい!沢山釣ってきますね!」


そう言いながら、家に戻る姉さまの後姿を見守る

儀式前の昼下がりの日は、こうして過ぎていく


・・・・・


新年を迎えた当日である子の刻


「長の初仕事、頑張ってね。かげちゃん」

「見守ってるからね。失敗したら許さないよ」

「姉さまたちは小影ちゃんの舞をしっかり見ていますね」


姉さまたちに着付けを手伝ってもらい、錫杖を片手に祭壇へと上がっていく

これが、魔狼の集落に伝わる風呼びの儀

新年の風を集落に呼び込む儀式でもあり、長が風の精霊と契約する儀式でもある


毎年舞うのは、契約更新と契約履行を兼ねている

代々、魔狼の長は風の精霊と契約し、その力を集落全体に浸透させている

生活の為に、そしてその身に宿す刃として・・・精霊との契約は不可欠だ


「・・・夜ノ森小影。長としての役を、果たしましょう」


半透明の羽衣が炎に照らされ、小さくきらめく

着物は風に揺れ、俺の動きに合わせてはためいた

これを、三日三晩・・・寝ずに続けなければいけない

緑色の光が、炎とは別に周囲に舞う


これが風の精霊。初めて見た・・・


余裕があればそれを茫然と眺めただろう

その幻想的な光景に心を奪われそうになるが、必死に心の中を軌道修正させる

今は儀式の途中。余計な事を考えている場合ではない


「舞え、舞え、彼方から此方へ。来たれ、来たれ、新たな風よ」


錫杖が鳴る音。服の装飾として付けた鈴が小さく鳴り響く


「柔らかさを生む風よ。どうか、恵みを運びたまえ」

「遥か遠くから来る風よ。どうか、知識を運びたまえ」

「激しく荒れ狂う風よ。どうか、我らの安息を守りし力と成れ」


父様が残してくれた文献に残された祝詞を唱えながら、疲れても舞い続ける

三日目の夜が過ぎ去るその瞬間まで、ずっと・・・

どうか、どうか。この集落に新たな風を・・・と願いながら


「・・・父様、母様。見ていらっしゃいますか。私たちの弟は、立派に長として成長いたしました」


それを、小日向姉さまたちが涙を流してみていたことは知らない

儀式を終えた後、疲れで眠った俺は・・・起きてすぐに小朝姉さまと話し合い、人間の世界に早急に飛び込んだ

しばらくしたら戦争が始まると不穏な単語を告げられたから・・・やるなら早いうちがいいだろうと思って

すぐに帰ってくるだろうと考えた俺は、小日向姉さまと小明姉さまに、手紙の挨拶を残して旅立った


そしてこの選択は、数百年先まで後悔を引きずる結果をもたらす

なんせ俺が、生きた小日向姉さまたちと話したのは、儀式前の少しのあの会話だけとなってしまったのだから


俺が旅に出た数年後に・・・集落は滅びる

柳栄村の猟師・・・そして裏に潜んでいた黒幕である「蛇の憑者神」と呼ばれた青年の手によって姉さまたちは殺されたのだから


その話は大きな目的をもって姉さまたちを・・・集落を潰す計画を立てて、逆上した俺に殺されるまで読んでいた姑息な蛇の口から語られるべき物語

だから、俺はここで筆をおこうと思う


「・・・温情だと思えよ。巳芳智」


怯えた丑憑きの女を連れた、煤で汚れた蛇の子孫

あの日、奴の子孫を助けたのも、そして見逃したのも・・・


「将来的にやってくる厄に備えておくといいさ。俺は、もう助けないからな」


筆を置き、広げていた紙を棚の中にしまう

それから部屋を照らしていた灯りを消して、彼女が眠る場所の隣で獣化する

冬も厳しくなってきた

今日もまた、変な寝相で寝ている俺の愛しのご主人様が冷えないように尾で包んだ後、俺も眠りについた


・・・・・


ある時間軸だけ、俺は生きた姉さまたちと一時的に再会できる

時間制限で別れることになるが、それでも姉さまたちと酷い別れをした過去はやり直せる

それを果たせるのは夏樹が、俺を「本当の意味」で選んでくれた時間軸だけだ


恩返しの時間軸?ああ。あれは、正太郎を選んだ先に待っていた、酷い終わりの選択肢

その中で、俺を選んでくれただけの話だ

俺だけを選んだ時間も、あの時間も・・・共通点は俺たちの目の前に辰の少女と神語りの男が現れること

それだけは、変わらないでいてくれる


けれど、巴衛が作り出した小さな子狼はいない。それは少し寂しいけれど、仕方のない話

なんせこの時間は、正太郎が生きているのだから。彼がおかしくなる理由がないのだから


これは人間不信を拗らせつつも、人間世界で商人として生き、おかしな探偵と巡り合った先

最愛の少女・・・新橋夏樹と紡ぐ未来の話を、少しだけ


「起きてよ、小影。もう朝だよ」

「・・・夏樹か」

「うん。てか重いし暑い。人間に戻って」

「え、あ・・・ああ。わかった」


折角身体を冷やさないように獣化して温めてやっていたというのに、邪魔扱いとは薄情な奴だ

そんな俺の優しさなんて露知らず。鬱陶しさを隠さずに、夏樹は俺をジト目で見ていた


「・・・昨日、夜遅くまで何やってたの?」

「ん、ああ。昔の振り返り。思えば何百年も生きたなぁって」

「まだまだ先は長いよ、小影」

「まあな」


二つに分かれた尾を出し、彼女の前に跪く

元より長くてうっとおしかった尾は、さらに伸びた

これも長として「完成した」証明らしい。小日向姉さまたちが言っていた


「ほれ、好きなのだぞ」

「・・・憎いね。このもふ」

「生き毛皮と呼ばれるほどのふわふわ感だ。お前の手入れのお陰だぞ」

「んー・・・小影、放っておくと全然手入れしないからね。本当にこのもふをもふさ半減で放置とか本当に頭もふ・・・」

「夏樹、語彙力死んでるぞ。それに、あの・・・その、気分が襲いたくなるから、変なところ触らないでくれぇ・・・なぁ!?付け根はだめだ付け根はぁ!?」

「もふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふ・・・・」


職人の手つきで早朝から変なところを撫でまわしてくる夏樹の手先

その指の動きだけで理性が飛びかけるし、起こしてしまうだろうから必死に声を殺す

こんな情けのない姿、目の前にいる彼女以外には一生見せるつもりはない


「もふいね小影」

「・・・ああ。お前の為のモフだ。存分にもふれ。先端の方を」

「付け根あたりが一番もふいのに」

「・・・却下だ。お前がきちんとこの神社の主になってからなら、考えてやらんこともない」

「はいはい」


そう言って夏樹はやっと身を起こしてくれる

彼女の兄が唐突に旅に出ると書置きしてから早四年。俺たちは共に暮らし続けている

ある時は、友人として

ある時は、飼い主と主人として

ある時は、ちゃんとした夫婦として

互いを守り、守られの関係を築いて俺たちは今日も生きている


「・・・もうすぐ、神楽を舞うんだな」

「うん。小影も同時期に舞いに行くんでしょう?」

「ああ。家のしきたりでな。お前の神楽を見守ることはできないし、三日三晩付き合わせるつもりもない。三が日は雪季と修と楽しくやってくれ」

「うん。正太郎さんも、正二さん・・・あと、拓実さんも来てくれるって。彼方ちゃんたちは残念ながら、家の方の用事があるからって・・・仕方ないけど、少し、寂しいかな」

「・・・そうか」


少し寂しそうな彼女の頭を撫でまわす


「頑張ろうな」

「うん。勿論」


たった一言。今はそれだけでいい

今、互いに甘えている場合ではないということは俺と夏樹が一番わかっている

甘えるのは、これが全部終わった後だ


朝五時。俺たちの一日はこうして始まっていく

朝の仕事を終えてから、一日のほとんどを練習に費やする


受け継いだもの。果たさなければいけないこと

そして・・・互いの心に宿る者たちへの鎮魂の想いも込めて


俺たちは、当日に向けて修練を続けていく

「観測終了だね。お疲れ様」

「あの、譲さん。なんで彼は別時間軸の記憶を?」

「それは、彼の特殊能力の話だよ。彼の持つ能力名は「アンブロシアの叡知」見て、体験した記憶をすべて記憶する能力。不老不死の彼には少し酷な能力かもしれないね」

なんせ、何千年という時を過ごさなければいけない

その記憶は鮮明に彼に残る。どんなに辛いものでも、悲しいものでも

「そして、彼は時間軸の記憶を跨いで引き継げる。それはきっと、彼らの間ではとんでもない情報をもたらしただろうね」

「なるほど・・・」

「でもまあ。時の一族を無視して考えるのなら・・・必要な欠片さえ揃えれば、未来の予言ができる「アリアドネの紬糸」とか、生き物と対話し、使役する「ルミナリアの奇蹟」とか、好きな時間に飛べる「ノルニルの砂時計」辺りがぶっ壊れているから・・・影が薄いと言えば薄いね」

「・・・堅苦しい名前が揃っていますが、星紋と大して変わりませんよね?」

「そうだね。でも「カサンドラの偽証」や「トワイライトの灯火」のように、一点特化というものがあるように・・・「トロイメライの一糸」や「アストライアの薄羽」のように多岐に渡る応用が可能な能力も存在しているよ」

誰がどんな力を持っているのかは・・・ここでは語らないことにしよう

まあ、二人ほどバレているような気がしなくもないけれどね

「彼は不老不死の運命を持ちながら、恨んでいたはずの人と恋に落ちた。そして彼女と有限の幸福を過ごしていく。それでもきっと彼にとっては幸せな時間だろうね」

締めに入ろうとしたら、時雨ちゃんがまだ残る疑問を口に出してくれる

「しかし、譲さん。彼の集落を滅ぼした巳芳さんというのは・・・」

「そう、だね・・・口で説明するのも面倒だし、明日の観測は彼にしようか」

「え」

「それでは、明日の観測記録は巳芳智君のものを。あの村に復讐を誓った、蛇の青年。その最後の物語を・・・観測していこうか」


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