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図書館と観測者のブレイクタイム!  作者: 鳥路
第二章:紅鳥と友愛の観測記録
24/33

観測記録18:星月悠翔編「時越えアイドルと時間旅行直前金策プロジェクト(後編)」

それから私はあの方から頼まれた十五人の調査資料。その精査をしていました

資料は正しい未来を基準に

正しい未来が何なのかわかりませんが、生きている時間を基準にしたらいいのでしょう


「・・・調べても粗らしきものはないですね」


全員の資料は出揃った。あとはタイミングだ


「世界が終わるから、救う為に力を貸して欲しいと言って信じてもらえますかね・・・」


時の一族である修と彼方は信用してくれるだろう

彼方に心酔している冬夜と蛍も同じ。家の繋がりで相談役を雪季も大丈夫

朔也がリストにいるとは思っていなかったが、きっと信じてくれる

幸雪だったか。彼は筧兄弟と繋がりがある。説得は正太郎と正二に任せてもいい。頭の切れる男のようだし、きちんと状況を判断してくれるか


後は・・・正直不安要素が大きい

そんな中、部屋の扉がノックされる

自室の部屋は自動ドア。マスターキーは私と巴衛が持つので、開けてこないということは・・・

扉の鍵を開けて、その先にいる人物に声をかけました


「正太郎。どうされました?」

「少し心配になってな。入っても?」

「ええ。構いませんよ」


彼を部屋の中に案内して、座っていた椅子を勧める

もちろんそうなると、机の上に広げていたそれも目に入るわけで・・・


「・・・これ、時間旅行参加者の調査資料か?」

「ええ。貴方と正二、巴衛の分もありますよ?不名誉なことが書かれていないか確認します?」

「いや。いいよ。しかし合わせて十六人か。大所帯になりそうだな」

「ええ」

「写真、見ても?」

「はい。ベストショットを用意してあります。でも関係者でまとめていますので順番は入れ替えたらダメですからね?」

「わかってる・・・へえ、探偵さんもいるのか。久しぶりだなぁ・・・」


正太郎はそれから順に写真を見ていく

帝国花形役者の兄と帝国軍部の闇を受け持つ弟

軍工場にて兵器を作る技師と陸軍一の戦闘力を持つ軍人。そして私

村一つ潰した大罪の魔狼と「スペア」としての活躍も期待できる探偵

時の一族の一つである家に属する終刻の令嬢と黄昏の執事

市長の子息と従者の家系に生まれた兄。そして兄と対極の生き方をした双子の弟

終刻を担う家系の相談役を担う家に生まれた少年と終刻と黄昏を慕う研究者

そして時の一族。全時間の記録を把握している観測手と・・・


「この子・・・夏花によく似ているな」

「気になりますか?」

「そうだな。雰囲気が似ているのか・・・とても、目を離せそうにない」


そして、彼がかつて愛した女性のひ孫である四季月の守護者

目をつけると思っていたけれど、やっぱり目に留まりましたか


「写真はあげられませんが、名前だけ。彼女は新橋夏樹。貴方がかつて恋をした女性のひ孫です」

「夏花の・・・。そうか、ひ孫がいるのか。家族はいないし、親戚筋もいないと聞いていたから直系か」


ひ孫の写真を大事そうに握りしめた彼は、片目から大粒の涙を零しました


「・・・四季宮の子息がどう動いたかは知らないが、子供からは愛されていたと思いたい」


彼の口から飛び出たのは、私ですら掴めていなかった情報

新橋家に伝わる家宝・・・「四季月」

それは確か四季宮の家宝であったはずなのになぜ新橋が守っているのかずっと疑問に思っていたのです


「貴方、新橋夏花の婚約者のことを知っていたんですか!?」

「ああ。俺の歌をとても気に入ってくれて、地方公演の時は必ず屋敷にお呼ばれされていたんだ。それが、何か・・・?」


ヤバイ。一番恐れていた事態になっている

顔にも口にも出さないが、新橋の血に四季宮が混ざっているのがダメなのだ


四季宮が力を残すために数多の運命を捻じ曲げてくる

その影響を、一番に彼女が受ける

新橋夏樹の運命を捻じ曲げるとたくさんの弊害が出てしまう


まずは目の前の彼。筧正太郎を繋ぎ止める者がいなくなる。彼の消失を止められない

相良雪季の病死を止められない

一葉拓実が自殺するのを止められない

夜ノ森小影が起こす殺戮を止められない

筧正二の理性崩壊も止められない

四季宮修の運命改変を、止められない


頭に熱が上る感覚を覚える。これは考えすぎかもしれない。休息が必要だ


「・・・」

「悠翔?」

「・・・寝る。疲れた」

「え、ちょ・・・」


正太郎の腕を引いて、そのままベッドに倒れ込む

もちろん腕を引いた彼もだ


「・・・お父さん」


正太郎の体格はお父さんによく似ている。身長。体重。年齢だってさほど変わらない

だからだろうか。ついつい必要以上に話してしまうのだ

これを、言葉で表すのなら心を許すということでしょう


お父さん。僕は作られた兵器です

兵器に心なんてものがあっていいのでしょうか。私には、まだわかりません

もう少し、人と関わる必要があるのかもしれませんね


兵器にも心があっていい。作られたものにも、心が存在する

その答えを出すのは、もう少し後の話


・・・・・


悠翔から「正太郎は私に合わせてあまり食事を摂っていないようなので、貴方の裁量で食事を持って行ってあげてください」と頼まれたのは今日の晩のこと

確かに外で食べている俺と正二に比べたらあまり食べていないだろう。正二の話だと少食だけど、前以上に食べていないらしい

状態としてはかなり悪い状態だろう


しかし、正太郎には悪いが・・・そんな彼の状態を「悠翔が気がついた」ことに喜びを覚えた

生きていたら博人も朔也も喜んだだろう


「博人。朔也。あいつ、ちゃんと人の心配できるようになってるぞ。ちゃんと、心を得ている。少し、ずれているけどな」


夜食を片手におそらく悠翔の部屋にいるであろう彼の元へ向かっていく

マスターキーで悠翔の部屋を開けると、いつも座っている机には資料が散らかっているだけで誰もいない

しかし明かりはついているし、誰かはいるはずだ


「よっすー。あ、正太郎。ここにいたのか!ご飯片手に来てみた。ほれ!雑草ちらし!野草サラダ付き!」

「ああ、朝比奈さん・・・今、起き上がれそうにない」

「いいよ巴衛で。苗字嫌いなんだ。それで起き上がれない理由ってのは・・・ああ、悠翔か。珍しいな、眠りこけるなんて」


正太郎にしがみついて、子供のように眠る彼を見守るように、俺もベッドに腰掛ける

悠翔は作られた兵器。人造人間と呼ばれる彼は食事も睡眠も必要としない

本来の設計なら疲労も感情も存在しないただの兵器だったはずなのだが・・・

この星月悠翔と名付けられた個体だけは異なるのだ


感情の片鱗を持ち合わせ、疲労を少なからず感じ、疲れが貯まれば睡眠を行い疲労回復に努める

百体ある個体の中で、唯一「人らしい」存在だと言えるだろう

それを見た博人は彼だけを別枠で育成をしていった

本当の父親のように、息子のように親子関係を築き、人の心を得るために教育を施していったのだ

博人が生きていた時代に出版されていたらしい児童向け小説「ラインハルトの冒険」その主人公。小人ラインハルトの物語に準えながら


「・・・本当に、博人も何者だったんだろうな」


この時代で働き始めて少したち、資料を探しに本屋に行くと・・・ラインハルトの冒険。その完結セットが売られていた

昭和時代で工場勤めをしていた男が、平成時代に売られている本の内容知っている

時間旅行をしている身だから言えるだろう。きっと、彼も時間旅行者だ

運が良ければ、この時代で生きている博人に会えるかもしれない


それから・・・給料が入ったら借金返済しているというのに何買ってるんですか!?と怒られるかもしれないけれど、完結セットをプレゼントしてやろう

読み手はもういないけれど、俺が代行してもいい

あの日の続きを、するんだ


「巴衛・・・博人さんというのは?」

「悠翔の父親。空襲で死んだんだ。こいつが戦っている間にな」

「そうか・・・」

「背格好はお前によく似ているし、懐くのも理解できるよ」

「俺が・・・」


正太郎の手が無意識に頭へ伸びていく

優しい手つきで悠翔の髪を梳くように手を動かした


「しっかりしているから忘れがちだけれど・・・まだ子供なんだよな。お父さんって甘えたいぐらいの」

「精神年齢は小学生ぐらいだからな。体は一応、十五ぐらいの少年設定だ。少し小さいけどな。小回りが利くようにと調整したらしい」


「母親は?」

「元々いない。悠翔は作られた生命体なんだ。母親の胎から産まれたわけじゃない」

「っ・・・」


正太郎の反応が変わる

どうやら人造生命だということは、まだ言っていなかったらしい

悪いことをしてしまっただろうか

しかし、いつかはわかることだ

・・・それが、少し早くなった程度。それにこいつはその程度で態度を変えるようなやつじゃないことも短い付き合いだがなんとなくわかる


「じゃあ、お父さんも実の父親ではないということなのか?」

「・・・いや。自分の遺伝子情報から作り上げたから遺伝子学的には父親だよ。けど、その辺りの話はお前にはわからないだろう?」

「そうだな。複雑なのは、ちょっと」

「だろうな。まあ、簡潔にいうと、博人はちゃんと悠翔の父親だ」

「そうか。ちゃんとお父さんがいるんだな。育ての親も、産みの親も・・・捨てるような親はいなかったんだ。よかったな・・・」


正二が少しだけ語っていたが、筧兄弟が幼少期の頃。実家の花屋が経営不振で潰れたそうだ

それからすぐに、両親だけが夜逃げしたらしい。二人の幼い子供を置いて

正二もだったが、正太郎自身にも置いていった両親に思うところがあるらしい


「羨ましいな。悠翔は。お父さんにたくさん愛されたんだろうな」

「ああ・・・少し、羨ましいと思うほどにね」

「んぅ・・・」


胸に頭をすり寄せて、甘えた声を出す

博人がよく言っていた行動だ。眠った時の癖かもしれない

それから、開いた手で俺の腕を引く。どうやら正太郎だけでは足りないらしい


「全く。仕方ないな、このちびっこは・・・」


いつもならからかわないでくださいと鉄拳が飛んでくるところだが、今回は悠翔自身が誘ってきているのだ。ここは逆に乗ってあげないと、後で鉄拳だ

俺もベッドで横になり、三人川の字になって眠る

なんだか親子になったみたいだな。その時は正太郎が俺の奥さん?

・・・ご飯も今は義肢に慣れていないから作らないだけで作ったものはとてもおいしいと正二が言っていたし、家事は万能。話し相手としても十分だ


「お前が女だったらアリかな」

「いきなりなんだ」

「いや。だからこんな風に親子三人川の字をするなら?」

「・・・巴衛は男色の気があるのか?」


若干引いた顔をこちらに向けてくる。悠翔が腕を掴んでいるから逃げるにも逃げられない


「違う違う。まあ、そういう捉え方もできるかもね。俺の人生を引っ張ってくれるのなら、女でも男でもいいよ。できれば女の子がいいけど」

「一緒に歩きたいとは思わないのか?」

「思わない。俺は誰かの指示を受けている方が楽だから」

「・・・」


こちらに悲しい目を向けてくる

なんだかんだで苦節あっただろうけど、こいつもまた・・・ちゃんとした兄弟がいて、誰かに必要とされて、必要とした人生を歩んでいた

話し相手にはちょうどいいけれど

正太郎も、俺の理解者にはなってくれそうにない


いつか現れると思うか、悠翔

俺の罪を受け入れて、俺に罰を、生きる理由を与えてくれる存在が・・・現れるって

悠翔に倣い、俺も目を閉じる

久々に静かな眠りは、意外と早く俺を夢へと誘ってくれた


・・・・・


飛行船で暮らし始めて半年が経過しようとした


最近、悠翔の姿を見ない

歌の練習と演技の練習を合間合間に見てはいるけれど、それ以外は基本的にどこにもいないのだ

俺は悠翔に与えられた仕事である畑いじりをしながら、彼の帰りを待つ


やっと、野菜が食べられるようになった

初期投資は大きかったが、今後は持続的に栄養と食料を供給できる

実った野菜を眺め、食べられそうなものは収穫していく

義肢もずいぶん使えるようになったし、料理だって今は作れるようになっている

今日の晩ご飯は何を作ろうか


「正太郎」

「巴衛。どうした?」

「悠翔が「話があるから食堂集合」だってよ。ん?野菜収穫してたのか?」

「ああ。冬野菜がたくさん収穫できている。今日は何を食べたい?」

「煮物で。お前の作る煮物、優しい味で好きなんだよ」

「お褒めいただき恐縮です。たくさん作るから野菜運ぶの手伝ってくれ」

「はいはい。それが狙いだと思ってましたよー・・・」


野菜が入った籠を巴衛に手渡し、二人で野菜を抱えて食堂へ向かっていく


「こんなに多いとはな。今度運搬用エレベーター作ってやろうか?」

「借金返してからなら歓迎するよ」

「それなんだよな。やっと半分。なかなか大変だ。お母さんも家計を支えてくれてありがとうな。筧だけに」

「誰がお母さんだ。それになんだその寒いダジャレは・・・」


空気が一瞬にして凍る感覚を覚える

しかし巴衛は平気そうな顔でそのまま話を進めていく。気にする素振りぐらい見せて欲しいものだ


「まあ、五階から一階の運搬用エレベーターは廃材で作れると思うから予算のことは気にすんな。少しでも楽しようぜ」

「それなら、お言葉に甘えるよ。頼むぞ、巴衛」

「もちろんさ」


二人、他愛ない話をしながら二階食堂へ

そこではすでに悠翔と正二が待っていた


「悠翔、待たせたな」

「いいんですよ。正太郎。巴衛もご苦労様です。さ、野菜を保管庫に入れたらいつも通り座ってください」


今から何が始まるのか。どうやら巴衛も聞かされていないようで、二人顔を見合わせて首を傾げる

野菜を収納した後、いつも通りに席に座り話を聞き始める


「まずは三人とも、今までご苦労様でした。借金返済の目処が立ったのでそのご報告を」

「・・・いや、まだ半分あるんだけど」

「その半分を私が返せるようになりました」


そう言って、悠翔は机の上に色々と紙を広げてくれる


「芸能事務所・・・契約書?」

「半年前にスカウトされまして。それから細々と仕事をさせて頂き、遂には借金返済ができるほどにお金が貯まりました。はい、拍手―。パチパチ」

「「「なんだって!?」」」


「芸能人ってなんだ!?」

「食べられる?」

「そもそもなんだ芸能事務所って!?」

「・・・話はそこからなんだね」


それから俺たちは悠翔から芸能人がどんなものか、アイドルというのがどういうものなのかを教えられる


「これも正太郎が歌を教えてくれたからですよ。ありがとうございます」

「い、いや・・・しかし。そうか。うん。公演は絶対に観にいくから「さいりうむ」とやらをブンブン振らせてくれ」

「・・・なんか間違っている方向に進んでいる気がするのは気のせいか?」

「間違いではないと思います」


巴衛と正二の心配そうな視線を裏に、新たな一歩を踏み出した悠翔の成長を喜ばしく思う

その成長をきっと、お父さんも見守っているだろう

その日、俺たちは借金生活を卒業した


これからは、新たな客人を迎えるために貯金をしていく生活

今まで以上に大変かもしれないが、余裕がある分気分的には楽かもしれない


「さあ、みなさん。来る日に向けてがっぽがっぽ稼ぎますよ!稼いで改修!」

「了解!じゃあ俺は早速お仕事にいこうかね」

「僕も、最近は食べ歩きだけじゃないんですよ。ちゃんと就労していますから、たくさんお金、入れますね」

「俺は畑を増やしにいくよ。これからはもっといるだろう?」


それぞれ、やるべきことをしていく

来るべき日は、もう近い


・・・・・


それからまた数年の時を重ねた

アイドル活動は順調。巴衛も十分成果を出しているそうです

・・・・正二はまた同じ道。正太郎は専業を続けてくれています


ある程度の予算を確保できた後に、本格的に始まった時間旅行

たった四人だった飛行船も、気がついたら十六人

賑やかで騒がしくて、疲れることが増えた日々

けれど、悪くはありません


今日もまた、飛行船は賑やかに

廊下を、ちびっ子たちが駆け抜けていました

どうしてこうなったぁ・・・!


「彼方!髪の毛で「じんぞーせいめー」できるの作ったの!褒めて!」

「僕も手伝ったんだよ、かなねえ。褒めて?」

「はいはい。よしよしよしよし・・・凄い凄い。なんてもの作ってるのよ・・・蛍は知っていたけど小さい頃から巴衛の技術力も凄まじかったのね・・・」

「ぬあー!」

「んぅ・・・」


白色の髪を持つ活発な少年と金色の髪を持つ気弱そうな少年は時間旅行の客人の一人である冬月彼方さんに撫でられて嬉しそうな声で叫び出します

最も、白い方は巴衛。金色の方は鹿野上蛍と元の姿は成人男性なのですが・・・

現在はそれぞれ九歳と八歳になっています。それにしては幼いですね二人とも


なぜこうなったか・・・ことの始まりは数時間前

食事に幼児退行の薬を入れた鹿野上蛍のせいで、彼方さんと夏樹さん、小影と私以外全員小さくなってしまっているのです


彼方さんは体調不良で食堂に来るのが遅れた為

夏樹さんは大食いのため、皿に盛り付けている間に起きたのでギリギリ回避

私と小影はそれぞれ体質の影響で薬が効かないのでセーフ・・・という具合です


薬の効果は一日で切れる上に、効果はバラバラ、自我を持っている子も何人かいます

しかしその間、十二人の子供たちを四人で世話しなければならないのは変わりません

唯一の救いは、乳児になる人間がいなかったことですかね


「彼方さん、雅文がお腹すいたみたいです」

「・・・ご飯」

「わかってる。少し待っていてね。拓真、雅文」

「はい。もう少し待ちましょうね、雅文」

「んー・・・」


幼少期からしっかりしているらしい拓真は幼いながらに雅文をあやしている。それぞれ五歳と三歳のようです

・・・本当に五歳児なのか、彼


そんな彼の元に瓜二つの少年がやってきます

こちらは彼と違ってやんちゃな様子。じっとしていられないみたいでずっと体を動かしていました。こちらも年齢を確認すると五歳。双子は同じ歳に戻ったようです


「拓真!遊びましょ!」

「ダメだよ拓実。彼方さんや夏樹さんのお手伝いをしないと。皆さん大変なんだから」

「むすー・・・」

「雅文のご飯が終わったら遊ぼう?」

「じゃあ、待ちます!」


彼の隣に腰掛けて、やっと大人しくなる双子の弟

次に注目すべきは彼らでしょうか


「ホワホワ・・・」

「あったかいね・・・雪季君。すやぁ」

「お前らさっきお昼寝したばっかりだろう・・・何回寝るんだよ、雪季、修。ああ、正二!お前は一回もお昼寝してないだろう?ちゃんと寝ろ!」

「寝るなと言ったり寝ろと言ったり忙しいね、お兄さん」

「お前には寝ろとしか言ってないよ屁理屈大魔神。六歳だっけ・・・はぁ、面倒だなぁ」


一方、小影が相手をしているのは正二。一人で三人を相手してくれています

最も、後の二人はお昼寝大好きな子たちなので、正二が厄介なだけで基本は楽のようです

彼の元で眠る雪季は四歳。修は七歳です


それから食事担当の四人が戻ってきてくれました

料理をしたいと駄々をこねた二人の監督役として厨房に入っていた夏樹さんと、新たにご飯を作ってくれたうちの調理担当が人数分の食事を運んでくれる


「お手伝いありがとうね、正太郎君、冬夜君。幸雪君もお疲れ」

「これぐらい当然です。二人とも、ちゃんと運べてますか?」

「冬月家の執事たるもの、当然です!・・・まだ見習いですけど」

「給仕の奉公もしたことあるし楽勝。どこに持っていくんだ?」


こちらの三人は比較的効果が薄かった三人になります

それぞれ正太郎が十一歳。幸雪と冬夜が十二歳だそうです

そして彼らの監督を務めたのが十六歳の夏樹さん。こちらは薬の効果は出ていません


「む、にゃつきさん」

「夏樹の声が聞こえたら起きるのかよ雪季・・・」

「にゃつきさんの太ももふわふわで眠りやすいです。にゃつきさん。おひざ。おひざ!」

「お前意外と・・・いや、触れないでおくか」


夏樹さん大好きっ子な雪季が彼女の方に向かっていきます


「こら、雪季君。ご飯こぼしたら大変だから走っちゃダメだよ。それに、胸が痛くなっちゃうからね。正太郎君、あとは任せてもいいかな?」

「・・・わかりました」


駆け寄ってきた彼をあやすために食事チームから夏樹さんが離脱します

しかし正太郎は若干ふてくされています。夏樹さんもそれに気がついて、素早く行動に移してくれました


「正太郎君。雪季君が落ち着いたら一緒に庭園回ろっか。お花見たいでしょう?」

「ん、いいですよ。全く、夏樹さんは世話が焼ける人です」

「なんで私は正太郎君に面倒を見られているんだろう・・・今は私が年上なのにな」


満足そうに笑う正太郎と、不服そうな夏樹さんはそこで別れて、それぞれの仕事をこなしていきます


「彼方。はい、ご飯。雅文君のは少し冷ましてあるよ」

「ありがとう。頑張ったのね、冬夜、幸雪」

「当然だもん。でも、褒められるのは嬉しいな」

「俺も頑張った。褒めて」


彼方さんたちの方も二人が合流してさらに賑やかになる


「楽しいか、悠翔」

「楽しい演技をしているのですから楽しいですよ、朔也」


そして、そんな賑やかな彼女たちを傍観するように、私と朔也は遠く、静かな場所に座っていました

朔也も客人の一人。可能性を持つ者

こうして再び会えたことを、とても喜ばしく思います


「お前も演技を身につけたんだな」

「ええ。私は感情を表現するために演技をしています。感情というものを自分が理解するほど持ち合わせてはいないようなので、それを増すために演技をしているのです」


「そう。お前は、人に近づけたか?」

「ええ。数多の時間旅行の中で、少しは・・・人らしい心を与えてもらったと思っていますよ」


あの方に目的を与えてもらった

巴衛と一緒にいて、喜びと楽しみを覚えた

正二と一緒にいて、不快と嫌悪と怒りを覚えた

正太郎と一緒にいて、歌や演技を通して、感情というものを不完全ながらも得た

アイドルという仕事を通して、誰かを喜ばせることに幸福を覚えた

そして、正太郎が舞台を降りた理由が本当の意味で理解できるようになった


「私はもう作られた人間ではないんですよ、朔也」

「じゃあお前はなんだ?」

「人である星月悠翔です。それ以外でも、それ以上でもありません」


かつては兵器だと答えたでしょう

しかし、今は違います。私は人です。人なのです

作られた人間だという事実は変わりません

しかし、私は本来得るものではないと考えられた感情を得た

喜び、怒り、哀しみ、楽しむ。それができる存在です


「朔也、私はこの時間軸ではありませんが・・・誰かを愛することを知りました」

「そうか。博人が知ったら喜ぶぞ」

「ええ。今度報告に行く予定です。お父さんではなく、友達の・・・星月博人にですが」


思うのは、私を作り上げてくれたお父さん

複雑な事情を抱えた彼は、今は普通の友人として私の話し相手になってくれています

もちろん、私が人造人間であることも、彼の手で作られた存在だということも全て伏せた上で


「ここの博人には話していないんだよな。自分自身のこと」

「ええ。この時代の私はアイドルですから。知られたらスキャンダルですよ?」

「・・・よくいうよ」


今の朔也は十四歳だそうです。複雑なお年頃ですが、それでもかつてのように私の話し相手になってくれています

最も、他の面々とは異なり・・・記憶だけは二十七歳のようです

だからこそ、こんな話ができるのでしょうね


「悠翔君。何をしているのかな?おサボり?」

「違いますよ。目を離したら体は大人、知能は子供のふりをして彼方さんに突撃しそうな朔也を監視していただけです」

「おい」


声をかけてくれた夏樹さんの後を追うように立ち上がります

朔也と話す時間は終わり。そろそろ真面目にお仕事をしましょう


「朔也、ご飯食べてお昼寝しますよ」

「俺十四歳。わかってる?新橋と二歳差なんだけど」

「上官にお昼寝していいと言われたら「わあ上官太っ腹!あ、三段腹か!では一ノ瀬朔也!お昼寝してきます!」なんて言っていた男のセリフとは思えませんね。当時二十二歳でしたっけ?」

「嫌なこと思い出させるなよ・・・」


呆れた朔也を引き連れて、十六人の輪の中に


「あ、朔也さんの分は彼方ちゃんが持っています」

「どうも、新橋。彼方ぁー俺のご飯!大盛り?」

「ちゃんと大盛りよ。朔也」


彼はそのまま、彼が慕う女性の元に進んでいく

そして私もまた・・・


「はい、悠翔君。スープだけでいい?今日は少し挑戦する?」

「ありがとうございます。何かあってはなんなので、まだスープだけで」

「了解。早速食べようか」


夏樹さんから食事が乗ったお盆を手渡されました

最近は、皆と同じ食事をとるようになりました。食事が必要ないのは今も昔も変わりません

けれど、同じがいいのです

人として、食事を摂り、他愛ない会話の中に入り込んでいきたいのです


「そういえば雪季は?」

「また寝ちゃったから今度は布団の中に。食事の時はゆっくりしたいから」

「そうですね。しかし、正二以外はあまり手のかからない子でよかったですね」

「そうだねぇ・・・正太郎君がいるからどうにかなっているけどさ。いなかったら絶対大変だったかな」


今も周囲に不機嫌全開で接する正二を正太郎が宥めていました

あの男も色々あったみたいですし、責めることができないのですが・・・あの態度はいかがなものかと思うのです


「悠翔君、最近の食事はどうかな?少しは慣れた?」

「まだ。咀嚼することにも慣れていませんから、まだスープがメインです。いつか、パンでも齧れるようになって見せますよ」

「じゃあ、それができるようになった時は一緒に遠足にでも行こうか」

「夏樹さん、わかっていますか?これでも今を駆けるアイドルですよ?一般女性と歩いている姿なんて見られたらスキャンダルじゃないですか」

「あ。そうだよね。いつもここで過ごしてるから忘れがちだけど、悠翔君アイドルだったね」

「忘れないでくださいよ、もう」


スープを一口。今日のスープはコーンのようだ

ほんのり甘いらしいそれは、ちびっ子たちにも大好評らしい


「夏樹さん」

「何?」

「いつか、私がきちんと心を得ることができたら・・・その時に聞いてほしい話があります。すごく大事な話なので、予約をしておこうかと」

「うん。覚えておくよ。悠翔君がそう思った時にいつでも話したい事聞くからね」

「・・・ええ。約束ですよ」


数多の時間軸を旅した私は、ある時間で一人の少女に恋をした

恋をしたと言っていいのかわかりません。そばにいたい。持つ力の全てで守り抜きたい

彼女が笑う日々に、自分も存在したい

友愛を恋慕と思っている可能性は無いとはいえません。私自身、無知なのは重々理解していますから


再びスープを口に含む

味はまだ具体的にはわからない

けれど、隣で美味しそうに食べる彼女を見ていたら、自然と美味しく感じてしまうのは何故でしょうか


「・・・この日々が続けばいいですね、夏樹さん」

「続いたらダメだよ。私たちは終末の先に行くんだからさ」

「そうですね。でも、もう少しだけ、この穏やかな時間の中に」


私の旅はまだまだ続いていく

ラインハルトの冒険も、まだ続いている。私が完結巻を読んでいないから、世間では終わっていても、私の中では続いています

二人のラインハルト、その旅の終わりは後もう少し


「悠翔君」

「なんですか?」

「言わないといけないことがあったなって思ってさ」

「言わないといけないこと?なんですか?」


夏樹さんは大きく息を吸い込んだ後、眩しいほどの笑顔を浮かべます

私をはじめ、様々な人間を虜にしたその笑顔を浮かべてこういうのです


「美味しいね、悠翔君!」

「それだけですか?」

「重要なことじゃん。当たり前だけどさ」

「全く・・・」


私は空になったお皿を抱えて、一つ

私にはまだどうでもいいことなのですが、彼女にとっては凄く重要な事


「ご馳走様。美味しかったですよ。貴方が一緒だから特段おいしく思えました」

「そう?流石、冬夜君と正太郎さんだね!美味しいご飯を作る天才・・・!」

「今度は貴方が作ったコーンスープを所望します」

「まだ上手にできないから。粉末でいい、かな?」

「ふざけてるんですか?」


彼女が料理全般できないことは把握している。最近は正太郎に修行をつけてもらっているらしいが・・・その行動理由までは把握しきっていない

どんなに不味かろうが私には構いません。なので下手だろうが夏樹さんの味を頂きたいのですが、彼女なりにこだわりがあるようです


「だって、上手に作ってあげたいじゃん・・・」

「私にまともな味覚があるとお思いですか。貴方が作ってくれたものならばなんでもいいのです。作ってくれなきゃ一緒に食事しませんから」

「なぬ!?」

「楽しみにしてますからね、夏樹さん?」

「・・・待っててよ。あっと言わせて見せるから。味覚を起こすぐらいに!」

「いいですね。そういう意志は、嫌いじゃないです」


次の約束を交わし、私は席を立ちます

食事を終えて暴れまわっている一葉兄弟やお茶をこぼしてギャンギャン泣く雅文

小影は修に振り回されて、彼方さんは冬夜と幸雪に挟まれた上で、蛍が膝を陣取っているので動けません

正二も駄々をこねて正太郎を困らせているし、朔也は我関せずを貫き続ける

誰も動けない状況ですから、ここはきちんと働かないとでしょう


もう少しだけ続く、穏やかな時間をのんびり過ごしましょう

いずれ来る、終末の日まで

「はい。観測終わりだね。お疲れ様」

おかしいな。おふざけでやるつもりだったのに所々におかしい部分が潜むような真面目気味な観測になっているような・・・

「悠翔君の境遇・・・人造生命、兵器。その設定自体は問題ないとみなして出したみたいだね」

彼の本題は「役割」彼の境遇自体はまだいいのだ

「最も、父親である星月博人にも色々とまだ疑問は残るんだよね」

続きは、いずれ語ることになる彼の物語で・・・となるだろう

「恩返しの追加をしつつ、今度は彼らの本編を進めるそうだよ。一年の節目で雪季と拓実はひと段落できたらいいね」

次の観測は、九日かな。誕生日だし特別になるかも

「それじゃあ、次は本編の追加開始と共に。無事に会えることを祈るよ!」

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