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ウェイ×ヲタ  作者: 天生暗黒者
Rebellion Beginning
9/46

黒髪の撃殺姫

TURN WEI

 翌日、勇はより実践的な訓練を受けた。

「これからレーザーポインターをあなたへと照射します。それを避けてください」

 姫はそう言うと、拳銃につけたポインターの電源を入れた。先ほどまでとは裏腹の、殺気をたたえた美しさを露わにする。

 まずい!勇の本能が叫ぶ。アパートの部屋での感覚がよみがえる。

 勇は走り、姿勢を変えて何とか避けようとする。しかし訓練場に遮蔽物はなし、幾度となく光に捉えられる。

「また...!厳しすぎませんか!?」

「保安局の戦略は巧妙です。これを遥かに超える苦境に追い込まれることも多いです」

 極限状態へと誘われていく。


「もう疲れました...」

「上司にそんなことを言っていいんですか?」

 午後からの戦法講義が始まる前、勇はひどい疲労に襲われていた。

「疲れてからの座学も訓練の内なんですよね...」

「手負いでの撤退、敗走術も大切ですよ。死んでしまったら何にもなりませんからね」

「よし頑張れ佐藤勇!」

 勇は眠気覚ましに自らの頬を叩く。

「この陣形のときに最も脆い箇所は...」

 やっぱり眠い。


 翌日は射撃訓練だった。訓練場は前日とは打って変わり、長机とはるか先に人型の的がある、射撃場へと変わっていた。

「あなたの能力値からして、近接戦闘を得意とするでしょうが、戦術の柔軟性は大切です。今日は拳銃での人型的の頭部への直撃を目標とします」

 拳銃の基本的な使用法を伝えられ、的へと銃口を向ける。照準を合わせ、トリガーを引く。

 確かに頭部を打ち抜いたはずだったが、弾は逸れ的の端にも当たらなかった。どうやら反動を想定し、自分の力で抑えなければいけないようだ。

 肉体的な疲労は前日よりはるかに小さいが、とにかく目が疲れる。頭痛に耐えながらの訓練だった。


「やった!」

 姫の(距離が近い)アドバイスを受けながら、夕方までかけてようやくクリティカルを決めた。


 その後四日間、勇は訓練では射撃武器への適性を高め、講義では実務や戦略のコツを教わっていった。


 最終日の講義終了後、姫は勇に提案した。

「私、味方に自分のことを深く知ってもらうのも大切だと思うんです」

「えっ...。」

 微かな期待が胸に浮かぶ。

「うそ、誤解しないでください!」

 焦った姫もかわいい。

「今からするのは私の身の上話です。あ、嫌だったら適当に聞き流してしまって構いませんので」


「私は大企業の社長の家に生まれました。自慢じゃないけどお嬢様なんです。だから幼いころから、世間一般的に偉い人たちと会話をする機会も多かったんです。

 私の親はお嬢様であることを強制せず、私の意思を尊重してくれました。だからこそ高校は公立に進んだんです。

 だけど、だんだんと違和感を感じるようになったんです。自分で進路を決めようとしない周囲への卑下でしょうか。それとも自分へのコンプレックスでしょうか。よくはわかりません。

 だから高校卒業後、進学せずに旅に出たんです。親不孝者ですよね。その先で見ました、ヲタ帝国による搾取を。とても悲しかったです。そしてやりたいことが決まったんです。軍導師さんと出会い、みんなと一緒に戦って、そしてあなたがここに来ました」


 勇は何も言えなかった。

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