入団
男の反応に勇は困惑した。
「そんなに凄い値なんですか?」
「ああ、筋力値は300、魔力値は100、頭脳値は200が平均だ。君の数値は異常といって過言ではないね」
僕にそんな才能があったのか...?
勇は疑問を隠せなかった。
夕方、組織のメンバーが任務から帰ってきた。
「彼が新人の佐藤勇君だ。よろしく頼む」
男は勇を紹介し、自己紹介をその場の全員にさせた。
最初は試験施設であった少女からだった。
「コードネーム、黒髪の撃殺姫です。能力値は平均型でスキルは射撃系を中心にしています。改めてよろしくお願いします」
先ほどの迷彩服とは打って変わり、淡い色彩の私服に着替えた少女は、また別の魅力を放っている。
「コードネーム、居合の刀豪だ。能力値は筋力型でスキルは刀剣系を主としている。少年、よろしく頼む」
大柄で顔に傷跡があり、和服が似合いそうな、剣豪のイメージを体現したような男だ。
「コードネーム、魔瘴の滅射鬼だ。能力値は魔力型でスキルは攻撃魔法系だ」
黒いフードをつけている。魔術師というが、アサシンに見えなくもない男だ。
「コードネーム、救光の援姉よ。能力値は魔力型でスキルは支援魔法系を取っているわ。よろしく」
やや長めのブロンドと優しい目、撃殺姫とは違い、癒しを感じる美しさだ。バブみとはこういうことを指すのだろうか。
最後に、リーダーとみられる、軍服で渋い声の男の番だ。
「コードネーム、軍導師だ。能力値は頭脳型でスキルは情報魔術系を取っている。よろしく」
いかにも経験豊富な容貌と仕草、リーダーとして信頼がおける。
自己紹介の後、軍導師は勇に今後の指示を伝えた。
「今後君はこの施設に泊まり込み、先輩となる四人の下で、実務訓練を受けることになる。といっても事務のような内容だけでなく、基礎や実戦の訓練の中で、能力値の向上を図る内容も含まれるね」
その後軍導師は真面目な顔になり、続けた。
「これは引き返すことのできない選択だ。この先に進めば、君はこれまでの生活や人間関係などを全て捨てることになる。今なら私の記憶操作術で組織のことを忘れ、これまで通りの生活に戻ることもできる」
「戻りません」
勇は即答した。失う覚悟はできている。
「ありがとう」
軍導師は微笑みながら勇と握手した。