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僕が異世界で本を読んだ話

作者: 羽室ひより

街の本屋を見かけたら、最後のくだりが頭に浮かんだので、書いてみました。

僕が僕の知らない世界に来てから今日で一週間になる。


空飛ぶリンゴに、天に降る雨、空気食……。

何から何まで新鮮で、僕はとうとう疲れてしまった。


そんな僕の様子を見て、

この世界に落ちていた僕を拾ってくれた、優しい人が言った。


「この世界のことを手っ取り早く知りたいのなら、図書館へ行こう」


僕は、図書館ならばこの目まぐるしい世界観からしばし離れられると思った。

なので、のこのこと図書館へ着いていくことにした。



さすがに図書館という空間は静かで、僕が知る図書館に近いものだった。

本が空を飛ぶこともないようだし、司書が宇宙人だということもない。

静かな空間かつ情報が整理されたここは、まさしく精神的な安息の地である。


「さて、どれを読もうか? あ、これはどうだろう?」


優しい人が、僕に一冊の本を手渡した。

“この世界の概要”という、いかにもなタイトルのそれは、広辞苑と同じ厚さで、広辞苑の四倍の大きさの本だった。


「うーん……、もう少し小さくて軽めのものはないでしょうか。 読むと言ってもこれでは時間がかかりすぎてしまいます。」


「まあまあ。 時間はたっぷりあるじゃないか。 待っている間に、私も違う本を読むから。」


そういうことで、しぶしぶ、そのずっしりとした本を受け取った。

優しい人は、その後、本をじっくり三冊選んだ。僕の腕はモゲそうだ。


「さて、この本を司書さんへ渡そう。」


ということなので、僕は言われるがまま司書のいるカウンターへ向かった。


「私はこの三冊を。 こちらの彼はこの一冊を読みたい。」


「少々お待ち下さい。」


優しい人にならい、本を司書へ渡すと、司書はそのまま裏へ消えていった。

それはもう、軽々と持っていった。この本は広辞苑四冊分もあるというのに。


「ふふ。 ここの司書さんは、アンドロイドだよ。」


優しい人が僕に耳打ちをする。

ここにも僕の知らない世界の”仕込み”があるとは。


「おまたせいたしました。」


しばらくするとアンドロイド司書が戻った。

番号札のようなものを持っている。


「三十三、三十四のテーブルにておねがいいたします。」


「ありがとう。」


優しい人はアンドロイド司書から番号札を受け取ると、僕をそのテーブルに誘導する。


「本はどうするんですか?」


「これから読むんだよ?」


指定のテーブルに着席した優しい人は、テーブルの中央から伸びる黒い配線を口に咥えた。


「?? あの?」


ああ、また僕の知らない事態が始まったようだ。


「どうしたんだい? キミの分は容量が多くて時間がかかるのだから、はやく咥えて。」


「あ、あの、本を“読む”って……」


僕は、黒い配線の先を見た。

これは、僕らがスマホを充電するときなどによく目にするタイプの先っぽだ。


「ここもキミの世界と違うのか。 これは読み込み作業というのだけど。 これで本の内容を脳に読み込んで、インプットするんだよ。」


僕は、意を決して配線を口に咥えた。

”この世界の概要”は、コーラの味がした。


()()違いが起きている……!)


これが、僕がこの世界にびっくりした最後の出来事だった。


これが最初の投稿でした。

拙い文章を閲覧いただきましてありがとうございます。



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