変化
一織の感情は怒りに満ちていた
「何処にいる...」
...どこ...の女
(今の声は!こっちか!)
ダッ!
一織は全速力で音のした方へ走り出した
-指名手配犯の男目線-
「チッ!何処に行きやがったあの女!」
男は毒づいた
「あいつを売れば良い稼ぎになるってのに」
手に持った片刃の剣を振り回しながら男はティンの事を探した
「もしかしてさっき腹斬ったので死んでんじゃねぇよな」
本当にどこにいるんだよ...と喋りながら周りの音に耳を澄ました
(ん、この音は)
「こっちにいるのかよ!やっと見つけたぜ!」
男は走り出した
-一織目線-
「おい、お前が指名手配犯か?」
「てめぇは誰だ?」
一織は男を無視し質問を続けた
「質問を変えようティン、ダークエルフの女に傷を負わせたのはお前か?」
男は一瞬キョトンとし、次の瞬間笑みを浮かべて言った
「ありがとよ!探す手間が省けた訳じゃねぇが、お前からあの女の居場所を聞けば良い訳だ、お前に感謝してやる」
男は一織を下に見た発言をした
「簡単に教えると思うか?」
男は剣を構え
「だから無理やり口を開かせるんだよ!!」
「ゴフッ!」
男は素早く動き一織の腹を剣の柄で殴り付けた
「ゴハッ!ゲフッ!ゴホゴホ!」
一織は血を吐き出した
「オラッ!さっさと言え!」
「ガァ!グフッ!」
男は一織の腹に何度も蹴りを入れてきた
-30分-
「まだ言わねぇのか!」
「...クッ!はぁはぁ」
男は疲れたようで一織を縛り木の幹に座った
「こんなに時間がたってりゃもういないか...、てめぇのせいだぞ!」
苛ついていた男はふと、とある事を思い立った
「そういえばあれがあるんだったな」
男は自分の鞄を漁り出した
「よし、これだこれ」
一織の方に歩いてきて一織に話しかけた
「これを今からお前に食わせてやるよ、あの女を逃してくれたお礼にな」
そう言い男は一織にドス黒い結晶のような物を食べさせようとした
「な、なんだそれは」
「あ?これか?これはだな、ファイアードレイクの魔石だ」
「ま、魔石?」
一織は疑問を抱いた
「てめぇ、魔石も知らねぇのかよ」
男は少し驚いたように言った
「まぁ、どうせお前は殺すし、冥土の土産に教えてやるよ」
しれっ、と大変な事を言いながら男は一織に魔石について話した
「魔石ってのはな、魔物、魔力を身体に持ったモンスターの核なんだよ、そしてこれを人に食べさせるとどうなるか知りたかったんだよなぁ、そんなことをすればお前の身体が耐えられなくなり多分死ぬがな」
恐ろしい事を言いながら男は一織に魔石を食べさせようとした
「くっ!止めろ!」
「こいつはファイアードレイクの魔石だ、なかなか手に入らないんだ、魔石を食わせると身体に異常をきたすからな、せいぜい死なねぇように頑張りな」
「ムグッ!」
食べた一織に異変が起きた
「ぐぁぁぁぁ!ガァァァ!」
身体が燃え出したのである
男は失望したように
「失敗か、はぁ、勿体ねぇ」
男が去ろうとした瞬間
「ま、てよ」
「!?」
一織はファイアードレイクの魔石を食べた事によって火に対する耐性がついていた、これが魔石を食べた事による効果の表れだ
そして一織は自分の持っていた武器を手に取り男に襲いかかった
「ガハッ!」
男は油断していたようで一織の攻撃を避ける事が出来なかった
「チッ!しくじっ、た、...」
そのまま男は息絶えた
「はぁ、はぁ、仇は討ったぞティン!」