一織は女に拾われる
...ううん
「よし、焚き火用の木は集まった」
...ん、なんだ?
「さっき仕掛けた罠に何かかかっているかな?」
誰だ?
「少し行ってくるから大人しくしておくんだぞ?」
そう言い褐色の肌をした女は何処かに行ってしまった
(そういや俺は親らしき人に崖に投げられてそれで...それからの記憶が無いな)
一織が思考の海を彷徨っている間にさっきの女が帰ってきた
その手には魚が握られていた
「まぁまぁだな」
女はそう言い焚き火に串刺しにした魚を置き、焼き始めた
(なかなか良い匂いじゃないか)
そういや何も食べていなく腹が減っている事をふと思い出した
(だが、この身体で食べられるのだろうか)
考えていると、女が焼けた魚をほぐし、小さく切り一織の口に運んだ
(うむ、ありがたい)
一織よく動かす事が出来ない赤ん坊の身体でゆっくりだが食べ始めた
「ふぅ、良かった~、食べてくれた~」
女は安堵の声を漏らし一織に
「言葉が分かるかは分からないけどこれから私と一緒に過ごすんだぞ?」
一織は困惑してしまった
(さっきはこの女の事よりも腹が減っている事の方が大事だったが、今思うとこの女は何なんだ)
「あなた、私が身体を洗っている時に川から流れて来たんだぞ?もう、とっても驚いたぜ?」
一織はさっき行われた事を夢だと思っていたが本当のことだと確認した
(それはそれで大変な事だったんだな)
一織は他人事のように考えながらこれからの生活について考え出した
「とりあえず話せる年になってからだな詳しく話すのは」
はぁ、話してもらうまでどれくらいの時間がかかるんだ
一織は気が遠くなってしまった
「じゃあもう時間も遅いし寝ろよ?」
気付けば周りは真っ暗になっていた
一織は今考えている事を放棄し、眠ってしまった
子供故の事だろう
「黒い髪で産まれて来なければこんなことにはならなかったかも知れないってのに」
女は一織に対し哀れみの目を向けた