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二人の太陽  作者:
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二人の太陽 8

 私はあれからこのバストヘイムの復興に従事している。

 あれから一ヶ月、未だにサンの死体すら出てこない。

 私の様にサンによく似た悪魔を目撃している者は多く、将軍はサンが何か悪魔たちの襲来に関わりがあるのではないかと探してはいるが、この付近の町村にはいないようだ。

 この瓦礫の下敷きになっているかもしれない。私は自分のそんな考えを払拭するように兵たちの作業に手を貸している。


 悪魔や大ミミズ、サンによく似た悪魔の他に巨大な顔や炎の魔人の様な怪物まで私の気絶している間に出現していたらしい。

 人間の想像力とは逞しいものであるが、この時ばかりは信じるしかない。


 帝国本国からの使いはまだ私の元へは来ていない。

 リベラーシュたちが無事に辿り着いたのであれば対策やらを軍部が協議している最中か。

 あれから怪物がまた出現したとの報告はないがこの地に残った者から恐怖が消えることはないだろう。


 あれから私は興味深い話をギルバーク将軍から聞いた。

 なんでも古代からこのダイルトーアには不可思議な魔法を用いる者がいたようだ。その殆どが王宮に抱えられて王家がその恩恵を独占していたようだが、その実情を知る者はいない。

 巷では死者を蘇らせるだの強大な怪物に変身するだのと噂が流れる程度であったそうだが、どこまでが信じるに足る情報かは分かりようもない。


 ただその話で分かったのは、この地で魔法が嫌われる原因だ。

 その忌避される魔法を実際に用いたとする情報が嘘であっても多かったためであろう。


 実際に存在するとすれば、帝国には伝わっていない素晴らしい知識であるが、民がそこまで怖れる物なのだ。我々とて扱いに困るかもしれん。

 神の所業への冒涜だと帝国の今までは魔法へ理解を示していた一部の者が反発するかもしれない。

 そうなれば既存の魔法技術でさえ存続が危ぶまれる。

 そんな事には絶対にしてはならない。私はやはりこのダイルトーアについて更なる調査をする必要があるようだ。

 

 偶然にも私はこの地でその役に立ちそうな者と出会った。

 レイン君である。

 彼は魔法使えることを周囲に隠していたようだが、今の状況での我々の飲み水を得る手助けを一身に背負っている。

 彼もある種の禁忌の魔法の使い手であるのであろう。熱砂の中で飲み水がほぼ無尽蔵に入手できるなど奇跡に近い。


 私は彼に魔法の手解きをする約束の代わりにこの地での案内、友人のサンの捜索を手伝ってもらうようにお願いした。

 彼は魔法使いだとばれてしまった事でこれからバストヘイム周辺で住みにくくなることなどから私の申し出を渋々ながら了解してくれた。

 私としてはそのまま本国に連れて行きたかったのであるが、それだけは頑なに拒まれてしまった。自分の力を嫌う国であっても母国を捨てることなど出来ないのであろう。


 私はこれから次の本国からの命があるまでこのバストヘイムの周辺を探索しようと思う。もし私が不在の時であれば、ギルバーク将軍にこの地で面倒を見てもらうように手配している。


 この手紙を読む帝国の使いよ。

 私たちは長年の宿敵を侮っていたようだ。あまりに知らぬことが多い。多すぎる。


 君たちもこの地の者への敬意を忘れずに私を待ちたまえ。

 まだ出立前であるが約束しよう。私はこの地での調査を早めに済ませ近い内に一度、情報をまとめてこのバストヘイムに戻るつもりだ。

 その時は君たちにも私の見た怪物について教えてあげよう。

 その後、私はこの国ダイルトーアの詳細な魔法文明調査を上層部に具申しよう。


 君たちも興味があれば是非志願してくれ。

 アズールカとの戦いの準備などより優先すべき事がここにはある。そう信じて。


          ナイルド・ラコンタ帝国、上級大尉アバニッシュ・ド・ルーシアより


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