表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

エピローグ

「トンテンカン……」

「こっちに木材まわしてくれ〜」

 アステカ大陸への中継地点である小さな島デズリーアイランド。その島へはあと一日と言う距離の海上で、俺達の乗る船は修理をされている。

 あと一日の距離と言っても、巨大モンスターやら海賊やらの攻撃によりボロボロになった船には少しキツい。

 ヘソ団達を縛りあげて、生き残った船員達を回復させるのに丸一日以上かかった。

 今は秋留とイザベラの巧みな話術により、扱いやすいヘソ団の海賊達も俺達の船を修理するのを手伝ったりしている。

「本当に助かったわ」

 そう言ったイザベラの両腕には大事そうに本物のリュウが抱きかかえられている。

 俺達が海賊達と激闘している間、リュウは腕を怪我したように見せかけていたクログローの白い布の中でスヤスヤと眠っていたらしい。

 そういえば、チラリと見た時にイザベラとリーは戦っていたのに、クログローは全く戦闘をしていなかった事を思い出す。

「アステカ大陸へはまだまだ距離はあるが、海域的にはモンスターも海賊も少ないからな〜」

 ヒゲ船長が自慢のヒゲを撫でながら言った。

 そのヒゲをリュウが掴みたがっている。

「それにしても今回はヤバかったな」

 まだ身体のあちこちが痛い。見た目は格闘家、職業は司祭のクログローに少し回復してもらったが、まだまだ全快にはほど遠い。クログローが優しい口調で回復魔法を唱えているせいもあって全快していない気もするが。これが秋留だったらちょっとした回復魔法でも全快出来そうだ。

「私達もまだまだだね」

 首に包帯を巻いた秋留が言った。

 実は秋留はノニオーイの蹴りによりかなりのダメージを首に受けていた。それを無理してヘソの臭いに大笑いしたのは、そこで観客からの笑いがあった方がノニオーイの怒りが増大するから、という事だった。あんまり無理をしないで欲しいものだ。

 ちなみに今この場にいないカリューとジェットは風邪で療養中だ。身体の傷は魔法で癒せるが病気は魔法では治せない。

「おら! ちゃんと荷物運べ!」

 俺はネカーを構えて気弱そうな海賊に向ける。

「は、はい!」

 ヨタヨタと木箱に詰められた荷物を海賊船から俺達の船に運び入れる。

「思わぬ収穫だったわね」

 イザベラが思わずニヤリとした。

 襲ってきた海賊船の中に略奪したと思われる金銀財宝が山ほどあったのだ。俺はその財宝担当として扱いやすい海賊達を指揮している。

 補給地についたら足のつかない財宝は山分けをする事になっている。足のつくものは治安維持局に渡すという事で俺が力説した結果だ。俺は胸が躍った。

「とりあえず、これからの予定を再度確認しますよ」

 リーが本日何度目かの説明を始めようとしている。

 俺と秋留はいい加減聞き飽きたため、その場を離れた。扱いにくい海賊や負傷して若干頭がぼ〜っとしている船員達が混じっているからだろう。

 ちなみにあと二時間で海賊船や自分の船の修理を完了させ、明日の朝にはデズリーアイランドに到着するという無茶な予定を立てている。

 捕まえた海賊達も含めて一度デズリーアイランドへ行き、そこから治安維持局に海賊達の身柄を引き渡すらしい。

 デズリーアイランドという島に行った事はないが、こんなに大人数の海賊団を収容出来る程の牢屋はあるのだろうか。

「私が傷つけられるのは、そんなに怒るような事だった?」

 二人きりになった甲板の端。

 海風が優しく頬を撫でた時、秋留が突然聞いてきた。

「モンスターとか知能のほとんどない奴ならともかくな。人間がそんな事するなんて許せない」

 俺は自分の声が少し震えているのに気づいた。

 秋留の事となるといつも平静ではいられない。

 暫く二人の間に沈黙が走る。

 頭上のカモメの群れが鳴いているのに気づいた。

「ありがとう」

 カモメの鳴き声にかき消されてしまいそうな小さな声で秋留が言った。俺は思わず秋留の方を振り向いた。

 その顔が少し赤いのは気のせいだろうか。

「さ〜って、あと少しで久しぶりの陸地だね!」

 そうだ。

 航海は思った以上に波乱があったし長かった。

 デズリーアイランドからアステカ大陸への航海は無事に済むといいけどなぁ。

「お〜い、ちょっと手伝ってくれ」

 俺達に向かって船長の低い声が向かってきた。

 俺と秋留は一緒に走り始めた。


「帆を張れ〜! 碇をあげろ〜!」

 船長が叫ぶ。

 身体のあちこちを怪我している船員達が頑張って作業を始めた。

 リーの説明した予定より三十分遅れで船の出発準備が完了した。それもこれも頑張ってリーが全員を励ましていた結果かもしれない。

 多くの仲間を失い、本人達も死ぬかもしれない状況に立たされた。

 今、船員達に必要なのはやる気なのだ。

 船は二隻の海賊船を従えて無事に進み始めた。

 デズリーアイランドの人達に誤解されないように、海賊船の真っ黒な帆は外され中央にハートの書かれた真っ白な帆が張られている。デザインしたのはイザベラだ。趣味が悪すぎる。これではかえって誤解されてしまいそうだ。

「やっと出発だな」

 俺は伸びをしつつ言った。一仕事終えた後の風が気持ちいい。

「そうだね。久しぶりに少しゆっくりしたいよね」

 秋留も一緒に伸びをした。伸びをしている姿も可愛い。

「水着でも買って久しぶりに泳ごうかな〜」


「ぶっ」

「ぼおおおおおおお」


 俺の鼻は無常にも真っ赤な飛沫をあげた。

 それと同時に三隻の船の煙突から真っ白な煙が音を出して噴出する。

 赤と白で縁起が良い。

 待ってろよ!

 夢と欲望の楽園デズリーアイランド!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ