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第一章 レベル測定

 あっという間に一週間が経過した。

 あれからもう一回カリューの運動に付き合わされたが、それ以外は何とかノンビリとした時を過ごせた。

 今日はレベル測定大会初日、開会式がヤードの海際に建っている多目的ホールで行われる。

 ここで参加者登録も行われるため、かったるい開会式にも出なくてはいけない。

「早く準備しろ〜!」

 気の早いカリューが部屋の外で怒鳴っている。開会式は午後の二時から。今はまだ十時……。まだ起きたばっかりなんですけど。遠足前のガキか、お前は。

「カリュー、早いね〜」

「お、秋留。珍しく早いな」

「今日は眼が早く覚めちゃったんだよ〜。もっと寝ていたかったんだけど……」

「やっぱり秋留も興奮して眠れなかったのかぁ! 俺も興奮して眠れなかったんだ!」

 ドアの外で秋留と会話しているカリューに、激しい嫉妬心を抱きながら急いで出かける準備をした。今日は開会式だけだが、沢山の冒険者が集まるので馬鹿にされない様な装備をしていかないといけない。

 俺は内側に色々と仕込んでいる袖のないコートを羽織った。このコートは飛竜の羽で出来ている特別性で、羽自体に浮力があるために内側に装備した物が若干軽くなる。

「待たせたな」

 若干息を切らしながら勢い良くドアを開けた。派手な音を立ててドアがカリューの顔面に当たった。

「おはよ、ブレイブ」

「おはよう、秋留! 今日もとってもきれ……」

 「とっても綺麗だね」と危うく本心を声に出しそうになったのを、口を押さえて防ぐ。

「うん?」

 秋留が可愛く頭を傾げる。

「とってもキレが良いね!」

 なんとか訳の分からない事を言って誤魔化した。秋留は苦笑いをして「まだ寝ぼけているんだね」という眼で俺を見た。そんな眼で俺を見ないでくれ……。

「皆さん、揃いましたな」

 ジェットが自分の部屋から顔を出した。しっかりと装備をしている。

「あれ? 今日は留守番しているんじゃなかったの?」

「昨日フィッシュさんに聞いたんじゃが、今回のレベル測定大会は冒険者ではない一般人も見物する事が出来るらしいですぞ」

「え〜〜〜!」

 俺は思わず大声を上げてしまった。一般人に見られる……。俺は基本的に人に注目されるのが大嫌いだ。

 レベル認定友の会め! 金儲けのために冒険者を見世物にしやがって。

「一般人共に俺の強さを見せる時が来たな!」

 カリューは一段と気合が入ったようだ。秋留もどこか嬉しそうだ。人に注目されるのが嫌いではないのだろうか。

「お! 勇者パーティー御一行様の出発かな?」

 宿屋の親父が宿屋のドアの前で待ち構えていた。朝から元気が良いもんだ。

「親父も見に来るのか? レベル測定大会」

「俺は店があるからな。大人しく留守番しているよ」

 自称勇者カリューの問いに親父が心底残念そうに答える。てめえは来るんじゃねえ! 少しでも一般人の見物人を減らしておかないといつもの半分も力が出せそうにない。


 眩しすぎる太陽が俺達を照らす。開会式にピッタリの雲一つ無い快晴だ。

「太陽も俺の活躍を期待しているようだな」

 若干暴走気味のカリューが言う。

 獣人化したせいで性格も変わってきているようだ。前は冗談も通じないような生真面目人間だったのに。

 宿屋の前の大通りはレベル測定大会開会式に向かう冒険者で溢れていた。そいつらの眼が俺達に向けられているのが分かる。

「あ、秋留だぜ。相変わらず可愛いよな」

「レッド・ツイスターだな。カリューの姿が見えないぞ」

「代わりに獣人を仲間に入れたのかしら」

 通りを行く冒険者達のヒソヒソ声が隣で話しているかのように聞こえてくる。俺の盗賊としての能力のお陰で少し離れた会話も手に取るように分かってしまう。とりあえず秋留の事を喋っている奴の脳天に硬貨をブチ込んでやろうか。

「俺達も腹ごしらえをしてから開会式に向かおうぜ」

 カリューが舌舐めずりをして言う。その邪悪な光景を見て何人かの冒険者が怖気づいた。奴らはまだまだヒヨッコに違いない。

「どの店も込んでいる様ですなぁ」

「今回のレベル測定大会は一般人の見物人も多そうだからね」

 レベル測定大会の経済効果は大きそうだ。その利益の何割かを俺に分けたりとかはないのだろうか?

「あの角の店は空いてそうだぞ」

 俺は大通りから少し入った所にあるパスタ屋を指差して言った。神経を集中させて観察したところ、まだまだ空き席はありそうだ。

「んじゃ行くか」


「いらっしゃいまっせ〜」

 店の扉を開けた途端にパートらしきオバちゃんが笑顔で言う。

「あんた達もレベル測定大会に参加するのかい?」

 図々しいオバちゃんが気さくに話しかけてくる。駄目だ、人見知りの激しい俺には生きていけそうにない。

「うちの店は冒険者を応援しているから、冒険者にはいつもの半額で食事して貰っているよ」

 店を出ようとしていた俺の脚がオバちゃんの台詞で止まる。しょうがないな。この店で我慢しよう。

 俺達は厨房の近くの席に案内された。ニンニクの香りが胃を刺激する。

 俺達はそれぞれ違うメニューを注文して運ばれてくるのを待った。

「緊張しているのか? ブレイブ?」

 鼻をヒクヒクさせながらカリューが言う。その滑稽な見た目に思わず笑いそうになった。

「いや、お前のお陰で少し緊張がほぐれたよ」

 カリューの頭にクエスチョンマークが浮かんでいるのが見える。

「お待ちどうさま!」

 オバちゃんが器用に両手に四皿分のスパゲティを持ってやってきた。俺の注文した海の幸のカルボナーラも美味そうだが、秋留の頼んだカニとタラコのソースパスタも美味そうだ。

「少しあげよっか?」

 さぞかし羨ましそうな眼で見ていたのだろうか? 秋留が自分のパスタを小皿に移してくれた。俺も御礼に小皿に自分のパスタを盛る。

「美味いな〜」

 カルボナーラも美味いが、秋留の頼んだソースパスタも美味い。

「カルボナーラも美味しいよ」

 秋留が笑顔で答える。その笑顔が一番綺麗で美味しそうだ。

「お前らカップルみたいだな」

 カリューが突然爆弾発言をする。

 俺は口に含んでいたパスタをカリューの顔にぶちまけた。普段慌てない秋留も顔を真っ赤にして咳をしている。

「ワシと婆さんが若い頃の事を思い出しますなぁ」

 ジェットが遠い眼をしている。ジェットの奥さんはジェットが生きていた時に他界している。

「ブレイブ〜! テメエはいつもワザとか、それは! 今朝もドアを俺の高い鼻にブチ当てやがって!」

 こうして五月蝿いけど少し幸せな気持ちも出来た食事は幕を下ろした。


 『港町ヤード開催 レベル測定大会 開会式』

 俺達の目の前の巨大なアーチに大きく文字が書かれている。多目的ホールには冒険者が続々と入っていっているが、一般人は開会式には参加出来ないようだ。

「ここに座ろうぜ」

 三席続いて空いている場所にカリューが進む。

 と目の前で俺達が座ろうとした席に、真っ白なスーツを身に纏った男が先に腰を掛けた。

 俺達が後ろで立ち止まったのに気づいたのか、その男が振り返る。

「ああ、すみません。席を取ってしまいましたね。私は移動致しますので……」

 俺の服装とは正反対の色をした謎の男はそう言って席を立った。

 人に全く不安を与えないカリスマ的な声。しかし誠実そうな見た目とは裏腹に俺はコイツに危険な感じを持った。

 赤い色の入ったサングラスの向こうではどんな危険な眼をしているのか分かったものではない。

「………」

 俺の服装と顔を見て男が暫く立ち止まった。

「中々良いセンスをしていますね」

 感情がこもっている様でこもっていない声で言う。俺にはそれが分かった。

「おお! 美の女神がこんな所に!」

 次に男は秋留の目の前で片足をついて言った。こいつ俺が言いたくても言えない事をサラリと言いやがって。

 しかし秋留は男の台詞に周りをキョロキョロして「どこ?」ととぼけている。

 男は諦めたのか俺達から少し離れた別の席に腰を下ろした。

「じゃあ座るか」

 カリューが謎の男の存在など無かったかのように、そのまま席に着いた。

 勿論俺は秋留の隣に腰を下ろす。

「さっきのジジイは何だったんだろうな」

 見た目は三十歳位だった謎の男の事について秋留に聞く。

「美の女神なんてどこにいるんだろうね」

 真面目に言っているのか分からない調子で秋留が答えた。

『一同、静粛に!』

 ホールの至る所に設置されている拡声器から、舞台に立っている初老の男の声が響き渡った。

『あー、これよりレベル測定大会、開会式を始める!』

 これから退屈な時間が始まりそうだ。俺は早速両腕を組んで眠る体勢に入った。俺は盗賊としての特技の他に、時と場所を選ばずにすぐに眠りにつけるという特技も持っている。


「……ぐ〜」

「……ぐ〜」


『であるからして……。あー、冒険者の皆様にはお詫びと言っては何だが、各職業で取り分け目立つ成績を残した者に、えー、レベル認定友の会から賞金と特別な商品をプレゼントしたいと思う!』

 俺の耳にステージで話している偉そうなオッサンの重要な台詞だけ耳に入った。

 俺は鋭く眼を開ける。ステージ上には包みに入った数々の商品と『百万カリム』と書かれた大きな作り物の小切手が飾られている。

「さすがブレイブ! 美味しいところではちゃんと起きるんだな」

 カリューがすかさずツッコんだ。俺の隣で秋留はまだ寝ているが、元盗賊でもある秋留は今のオッサンの台詞をしっかりと聞いている事だろう。


 宿屋へと帰る道の途中で、外で待っていたジェットと合流した。

「俺は俄然やる気が出たね!」

 俺はジェットに親指を立てる。

「現金な奴だよ、お前は」

「まぁ見世物にされるんだから、それくらい当然でしょ」

 カリューの台詞に秋留が答える。

 明日はレベル測定大会本番だ。今回のレベル測定大会は前半と後半の二日に分かれている。久しぶりに有意義な運動が出来そうだ。

 それにしても……。

「何かお祭りが開催されるようですな」

 ジェットの言う通り、港町ヤードはお祭りムード満載だ。大通りの左右には色とりどりの簡易テントが張られ何かを焼ける様なコンロが設置されている。

「屋台出るのかな? 凄い楽しみ!」

 秋留はピョンピョンと跳ねて嬉しそうだ。

 カリューやジェットも楽しそうに辺りを見渡す。

「いやはや、祭りというのは何歳になっても良いもんですな〜」

 いささか歳の取りすぎたジェットが言った。


 翌日。

 ここ何日か晴れが続いていたが、今日は空に雲が多く見えた。港町を吹き抜ける風は少し湿っている。

 しかし空模様とは対照的に大通りには沢山の屋台が軒を連ねていた。至る所から良い匂いがしてくる。

「ブレイブは何か食べないの?」

 秋留はどこで調達してきたのか、たこ焼きを頬張りながら言った。

「中々美味いぜ!」

 カリューまで右手にイカ焼き、左手にフランクフルトを持っている。

「沢山食べないと大会で力を出せないぞ」

 カリューの台詞に俺は銭袋から硬貨を取り出し、右前方に見えていたお好み焼き屋に向かった。

「すみませんが、お好み焼きを一つ下さい」

 俺が言う前に隣の男が出店の主人に言った。全身白い服で身を固めた昨日の胡散臭い男だ!

「おや、昨日の……また先に取ってしまいましたか?」

「いや、気にするな」

 突然話しかけられる事に慣れていない俺は、不機嫌っぷりを見せないように答える。

「え〜っと、名前を伺っていませんでしたね。職業は何ですか?」

 仕方なく答えようとした時、続けて男が喋る。

「ああ、すみません。私から自己紹介するのが礼儀ですね」

 そこで男は赤いサングラスを直した。

「私の名前はノニオーイ。職業は海賊です」

 海賊。

 盗賊とほぼ同じ能力を持っているのだが、海賊の職業は船を操る能力に長けている。

 アステカ大陸への航路で悪さをしている海賊と名前は同じなのだが、正式に冒険者として活動しているかで異なってくる。それは盗賊でも同じ事が言え、海賊や盗賊は冒険者として活動していても余り良い眼で見られる事はない。

「ブレイブ、盗賊だ」

 俺はそれだけ言うと、店の親父に金を払ってお好み焼きを受け取った。

「あの方とはお知り合いなのですかな?」

 戻ってきた俺にジェットが聞いてきた。

「昨日、開会式で会ったんだ。ジェットは知ってるのか?」

 ノニオーイはジェットが最近見た冒険者クラブという雑誌で紹介されていたらしい。

 海賊ノニオーイ、年齢は四十一歳という事だ。実際はもう少し若く見えた。今まで職業に就いていなかったという事だが、アステカ大陸で実施されたレベル測定大会で初めてエントリーし、レベル四十六と認定されたらしい。俺の前回の認定レベルは三十四だったから、レベルは俺より高い事になる。

「頑張ってね、ブレイブ。嘘つき海賊になんか負けるな〜」

 昨日、美の女神を見つけられなかったらしい秋留が俺を励ました。秋留の励ましは全てに勝る。

「観客席から見ていますから、皆さん、頑張ってくだされ!」

 残念ながらジェットの励ましは効果が無かった。


 レベル測定大会は、昨日のホールではなく町の隣に急遽立てられた特設ステージで行われる。

 特設ステージに向かう途中の屋台をほとんど制覇した俺達は気力十分だ。

「グルルルル〜」

 興奮したカリューが喉を不気味に鳴らす。

「じゃあ、また後でね」

 残念ながら、職業毎に集合場所が違うために秋留とは離れ離れにならなければいけなかった。俺は秋留に手を振りながら集合場所に進んだ。

 『盗賊』『海賊』と書かれたプラカードと、そこから少し離れた所にノニオーイがいるのが見える。

「レッド・ツイスターのブレイブだ」

「わたし、ちょっとファンなんだよねぇ」

 周りでザワザワと俺の噂話が聞こえる。悪くは無い。

「あ、ノニオーイだぜ」

「彼、紳士だよね。私はノニオーイの方が断然いいわ」

 前言撤回。世の盗賊・海賊に俺の力を見せつけてやる。賞金と賞品は俺の物だ。

『えー、まずは職業毎に体力測定を始めて下さい』

 拡声器から昨日のオッサンの声が聞こえてくる。さすがにこの広い会場内のどこにいるのかは分からない。

「じゃあ番号と名前呼びますので、順番に前に出て来て下さい」

 レベル認定友の会のメンバーらしき人物が声を張り上げる。

「一番、海賊ラムズさん」

 どうやら盗賊と海賊は同じ場所でレベル測定を実施するらしい。

 ラムズと呼ばれた痩せて気弱そうな男が、冒険者として最低限必要な握力や柔軟性を測定し始める。

 観客のために測定結果が会場中央に設置されている巨大な掲示板に表示された。

 ラムズの測定結果は……最低だ。本人も恥ずかしそうに顔を赤らめている。これは相当緊張しそうだ。

 次々と名前が呼ばれていく中で好成績を残していく者もいる。

「五十六番、盗賊ブレイブさん」

 握力、ジャンプ力はまぁまぁの成績だ。身体の硬い俺は柔軟性はあまり良くない。それでも会場からはワッと歓声があがる。

「五十七番、海賊ノニオーイさん」

 よりにもよって俺の次はあのキザ野郎か。

 再び歓声があがった。結果は俺と良い勝負の様だ。握力は奴の方があるが、ジャンプ力は俺の方がある。

「おおおお! 何だアイツ!」

 戦士の測定会場で歓声があがった。何とかレベル測定大会への参加が許された自称勇者のカリューが測定しているのだ。

 ジャンプ力も握力も桁が違う。今のところ、戦士の中ではダントツトップだ。

「良い仲間をお持ちでございますな」

 いつの間にか隣に来ていたノニオーイが言う。近づく気配を感じさせなかったところは、さすがレベル四十六だ。

 別の会場では秋留もレベル測定をしているのだろうが、最初の筋力や体力の測定では目立つ事はないだろう。

「全員測定が終わりましたので、次は命中率と集中力の測定を行います!」

 係員が再び叫ぶ。次の項目は俺が最も得意とする内容だ。

「では一番の海賊ラムズさんから〜」

 ガチガチに固まったラムズが左手と左足を一緒に出しながら歩いていく。ありゃあプレッシャーに負けたな。

「残念な事ですね。本来の力を出せないとは……。その点、ブレイブさんは大丈夫そうですね」

 馴れ馴れしいノニオーイが一部だけ白く染まっている前髪を弄びつつ言った。

 その後も本来の実力を出せない人が何人かいたようだが、暫くして再び俺の名前が呼ばれた。

 俺は十メートル程離れたマトを睨みつける。

 ちなみに命中率の測定では投げる武器は自分である程度選べるし、投げる時の動作でも技術点が付く。

 俺は比較的得意な短剣を十本両手に持ち、投げラインに立つ。

「それでは始めて下さい」

 係員の指示を受け、俺は集中力と高め再度マトを睨む。

 そしてその場で前転や側転、ジャンプをしながら全ての短剣を投げつけた。

「シュタタタタン」

 俺の投げた短剣は全てマトの中央に突き刺さった。

 会場からは歓声が上がる。

 どこからか「さすがブレイブ、大好き!」という秋留の声が聞こえた気がする。幻聴ではないと思いたい……。

「幻聴ですよ、次は私ですので下がってください」

 俺の心の中を読んだノニオーイが前に入ってくる。さすがレベルの高い海賊だ。洞察力は俺よりもあるかもしれない。

 ノニオーイも俺と同じ様に短剣を両手に持って構える。

「はっ!」

 気合と共に発した声と同時に全ての短剣がマトに突き刺さった。こいつ、腕の動きが俺より速い!

 命中率測定の結果はノニオーイの圧勝だった。同時に短剣を投げて、同時にマトの中央に当てるのはかなりの技術が必要だからだ。俺もそこまでは出来る自信がない。

 その後も集中力や反射神経の測定が続き、この測定大会の目玉でもある実践試験となった。

『あー、では本日のメインイベントである実践試験です!』

 拡声器から司会と思われる男の声が聞こえる。

 盗賊の実践試験は、トラップの沢山ある館に侵入して宝を取って来るという内容だ。

 試験の進み具合は、頭がカメラになっているインスペクターという妖精から、中央の巨大スクリーンに映像が映し出されるという仕組みらしい。

 ちなみに海賊の試験には実際に試験用の船を操るという内容もあるようだ。

『えー、まずは武道家の実践試験から始めます!』

 武道家の実践試験はレベルの高い武道家と戦うという内容らしい。

 冒険者クラブでも有名な『ゴッドハンド』の異名を持つ武道家トリカローが姿を現す。その拳は全てを破壊する事が出来ると言われている。

 その伝説ともなっているトリカローが相手とあって、武道家達は舞い上がっているようだ。

「結構頑張ったみたいだね」

 実践試験の間は他の職業は休憩となるため、俺は秋留の隣まで来て武道家の試験を観戦する事にした。

「あの海賊野郎が中々しぶとくてね」

 俺は秋留に答える。

「俺は単独一位だ。ブレイブも秋留もまだまだだな」

 呼んでもいないのに自慢の鼻を使って俺達の居場所を探し当てたカリューが、隣で自慢して言った。

 俺は盗賊の中では四位、秋留は幻想士の中では二位のようだ。

 世の中にはまだまだ上がいる事を実感する。ちなみにノニオーイは海賊の中で三位だ。

「はあっ!」

「やあっ!」

 トリカローに正拳突きや回し蹴りを放つ、武道家の気合の入った声が聞こえてくる。

 この実践試験ではあくまで武道家の力を測定することである。だからトリカローは反撃する事はない。その強靭な身体で武道家達の攻撃を防いだり避けたりしている。中にはトリカローに攻撃を当てる強者もいる。

「暇だな」

 そう言うとカリューはその場で横になりイビキをかいて寝始めた。

 俺と秋留はその場に座り込んでサービスの茶を飲む。

 ぼけ〜っと観戦する事一時間。どうやら武道家の実践は終わったようだ。

『続きまして、僧侶の……』

 武道家以上に暇になると予想した俺は、カリューを見習って寝る事にした。秋留も座りながらウトウトしている。


 どれ位時間が経っただろうか。カリューの名前が呼ばれる声で俺は眼を覚ました。

「あ、起こそうと思っていたところだよ、いよいよカリューの番だよ」

 寝ぼけ眼で戦士用の闘技場を見る。頑丈な鉄の柵で囲まれた闘技場の中心にカリューがいた。試験用の装備とロングソードを右手に持っている。

「戦士の実践試験は、ネクロマンサーによる擬似モンスター戦闘だよ」

 秋留の説明と同時に鉄の柵の外にいた複数のネクロマンサーらしき男女が、呪文を唱え始めた。

 一瞬でカリューは大小様々なモンスターに囲まれる。

 カリューの興奮している息遣いがここまで聞こえてくるようだ。

『それでは、単独トップの戦士カリューさんの実践試験を開始して下さい!』

 アナウンスの人を若干睨みつけてカリューが回りのモンスターを斬りつけた。

 その剣捌きは力強く荒々しい。しかし的確に敵の急所を突き、次々とゾンビモンスターを切り刻んでいく。

 あまりの戦闘の速さに柵の外で呪文を唱えているネクロマンサー達の顔も険しくなる。

「ウオオオオオン!」

 カリューの咆哮が会場中に響き渡る。

「凄いね」

「ああ、相変わらず人間離れしているな」

「ふふっ」

 秋留が俺の台詞に小さく笑う。その笑顔がとても素敵だ。

「素敵な笑顔ですね」

 いつの間にやって来たのか、ノニオーイが秋留の顔を覗き込んで言った。俺の台詞を取りやがって!

「貴方も常に笑っているわね」

「え? ええ、秋留さんを見ているとなぜか笑顔になってしまうんですよ」

 再び片足をついてノニオーイが言う。俺はネカーとネマーに手をかけた。

「俺はお前の趣味の悪いサングラス見てると笑顔になっちまうよ」

 俺の台詞にノニオーイの笑顔が固まる。

「あはは!」

 秋留の笑いを背にノニオーイが立ち去っていった。何となくスッキリした俺はカリューに眼を移す。

 どうやら既に実践試験が終了したらしい。

「どうだった?」

「人間とは思えない戦いっぷりだったぞ」

 俺の嫌味に気づかないカリューは「そうだろ?」と嬉しそうに答える。

「今日のレベル測定大会はこれで終わりみたいだね」

 秋留が伸びをしながら立ち上がる。

「明日は俺と秋留の実践試験があるのかな?」

「え? 私の実践試験はもう終わったけど?」

 秋留が衝撃的な回答をする。

 どうやら俺が寝ている間に秋留の実践試験が終わってしまったようだ。

 秋留が闘技場に行った時も名前を呼ばれた時も気づかなかった。

 まさか俺に変な呪文かけて眠らせていたんじゃ……と疑わしい眼を秋留に投げかけたが、全然そんな風には見えない。

「私の実践が見れなくて残念だったね、ブレイブ!」

 悪戯っぽい笑顔に何も言えないまま、俺達はレベル測定会場を後にした。

 明日はいよいよ最終日だ。


「皆さん、頑張りましたな」

 大通りで俺達の帰りを待っていたジェットが言った。やはり自分が参加出来なかった事で少し落ち込んでいるようだ。

「秋留殿の実践は見物でしたな。まさかあそこであんな幻想術を使うとはのぉ」

 俺は無言でジェットを睨む。ジェットは不思議そうな顔をした。

「とりあえず腹が減ったな」

 カリューの腹が豪快に鳴っているのが聞こえる。

 俺達は馴染みの飯屋に入ると適当に空腹を満たして宿屋に戻った。

 明日はより気合を入れて頑張らないと、賞品を他の奴に持っていかれてしまう。俺は意気込みを新たにし、ベッドに入るとすぐに眠りについた。


「ビョオオオオオオ」

 俺は風が唸る音で眼を覚ます。薄暗い部屋の時計の針を確認すると早朝を指していた。

 まだ起きるのには少し早いが、俺は今日の実践試験のためにも起きる事にした。

 一人装備を整えて宿屋の外に出てみると、予想通りの曇り空。雲は風のように速く流れている。

「ブレイブ、早いじゃん」

 気づくと、髪の毛を横で結った秋留が隣にいた。突風でめくれない様にスカートを抑えている。その手は邪魔だろう〜と思っていると、秋留の背中のマントが鋭い爪の形になって俺に近づいた。

「ブラドー、変態ブレイブの事なんてほっときな〜」

 俺の邪まな考えに気づいたのか、秋留が背中で飼っているモンスターのブラッドマントが俺に威嚇してくる。

 ブラッドマントはダンジョンの宝箱の中に潜み、モンスターだと知らずに装備してしまった冒険者の首を絞めて生き血を吸うという厄介なモンスターだ。

 秋留はそのブラッドマントを手なずけ、ブラドーという名前までつけて可愛がっている。

「生憎の天気だね」

「盗賊にとっては晴天よりもある程度曇っていたり、雨が降っていたりする方がやりやすいのさ」

 自慢げに腕を組みながら言う。

「ふふ、その調子で実践試験も頑張ってね」

 秋留はそれだけ言うと宿屋の中に戻っていった。

 俺を元気づけるためだけに、わざわざ起きてくれたのだろうか?

「まさかね」

 俺は一人呟くと宿屋をブラブラと一周してから部屋に戻った。


『えー、始まりました! レベル測定大会最終日! あー、本日はいくつかの職業の実践試験を残すのみとなりました!』

 昨日と同じ元気の良いオッサンが司会を務めているようだ。

『えー、本日、天気もあまりよくないようなので、早速始めさせて頂きます!』

 うむうむ、良い事だ。オッサンの長い話を聞かされても何も楽しくない。

『あー、まずは盗賊・海賊混合によるトラップハウスへの挑戦を実施してもらいます!』

 アナウンスと共に競技場にライトが浴びせられ、一軒の建物が姿を現した。

『えー、このトラップハウスの中に設置されているお宝を無事に取ってくるのが、実践試験の内容となります!』

『えー、進捗状況は一緒に同伴するインスペクターにより中央の巨大モニターに映し出されます!』

 アナウンスの説明を聞いて、海賊一番バッターのラムズが早速ビビッている。

 こうして盗賊・海賊の実践試験が始まった。

 いつも通り隣にはノニオーイがいる。

「昨日は良く寝れましたかな?」

「ああ、ぐっすりだ」

 早朝に目が覚めてしまった事は勿論言わない。

 中央の巨大スクリーンにはラムズの珍道中が映し出されている。頭に金ダライがぶつかったラムズが映し出され、会場からは笑い声が聞こえた。

「これは恥ずかしい。失敗は許されませんね」

 ノニオーイが生唾を飲む。確かにこれはかなりのプレッシャーだ。

 俺はステージにある商品の山を見て再び闘志を燃やした。

 何人かがプレッシャーに負けて醜態をさらすなか、とうとう俺の名前が呼ばれた。

「せいぜい、頑張って下さいね」

 ノニオーイの嫌味な台詞が後ろから聞こえてくる。

 トラップの設置場所や内容は毎回変えられるため、先に試験をした人のは参考にはならない。

 俺は扉を慎重に調べてからトラップハウスへと進んだ。後ろからはインスペクターがついて来る。

 中は薄暗くなっていた。

 俺程の盗賊の腕であれば、これくらいの闇は何の問題もない。

 足元の突起を慎重にかわす。頭上には金ダライがぶら下がっているのが見える。

「危険だ……」

 俺は呟きながら更に廊下を進んだ。

 目の前に扉があるのが見える。周りを十分に確認すると、廊下の壁に無数の穴があるのが確認出来た。

「失敗すると穴からケチャップ弾が出てくるんだな……」

 先駆者達の中に、全身真っ赤になってこのハウスから出てきた者がいたのを思い出す。

 集中しながら扉を調べた。鍵穴の中と扉の隙間に仕掛けがあるのが見える。

 一方、ドアノブには仕掛けはないようだ。

「なるほど」

 俺は勢い良くドアノブを捻った。

 何も無かったかのように扉が開く。

「この扉には何もしないのが正解だな」

 俺はそのまま次の部屋に脚を踏み入れる。

 その時、俺は脚の下に不気味な感触を受けた。咄嗟に後方に転がり、廊下に舞い戻る。

 前方の壁に液体の弾がぶつかった音がした。

「アブねえ、アブねえ……」

 俺は特性ソース弾を避けながら再び前進する。

 暫く進むと壁に梯子が設置されているのが見えた。いかにも怪しいがどうするか……。

 この実践試験では、係員に渡された盗賊道具しか使用してはいけない。

 俺は手渡された道具袋の中から簡易松明を取り出すと、手早く火を付けた。

 梯子の上の方を照らすと、巨大な籠がぶら下がっているのが見える。

「トラップを発動させると、あの籠から不気味な物体が降って来そうだな」

 俺は道具袋から短剣を取り出すと、梯子と梯子の間の壁に向かって投げつけた。

 四本あった短剣を全て壁に投げつける。

 俺はその短剣を足場にして梯子代わりに二階に上っていく。

 勿論使った短剣は取り外しながら進む事を忘れない。

 頭上の籠が落ちることなく、無事に二階に辿り着いた。

 二階の床には不気味な突起がたくさんついているのが確認出来る。

「さてと……」

 慎重に周りを見渡すと部屋の隅にタンスがあるのに気づいた。

 俺は本能の赴くままにタンスを調べ始める。中には一本のロープと短剣。短剣の先端は釣り針のように鉤爪状になっている。

「な〜るほど」

 発見した短剣にほどけないようにロープを結ぶ。ちなみに盗賊は取れないようなロープの結び方も出来ないといけない。

 作成したロープ付き短剣を部屋中央の天井目掛けて勢い良く突き刺す。引っ張っても取れない。

 俺はロープ上の方にしがみつき、部屋の反対側へと舞い降りた。

 着地と同時に「ガチンッ」という金属音が聞こえた。

 俺は着地の勢いを殺さないようにそのまま前転をする。着地した場所に巨大な招き猫の置物が落下して砕け散った。

「おいおい、それは当たったら痛いんじゃない?」

 誰かが聞いているはずと思い、大きめに独り言を言う。

「ヒュンッ」

 風を切り裂く音を聞いて咄嗟に身体を壁際に寄せる。

 俺の目の前を無数の小石が飛んだ。

「次から次へと……」

 殺気を感じてもたれていた壁際から離れる。壁が大きく開いた。どうやら一階へと滑り落ちる罠のようだ。

 その間も無数の小石が縦横無尽に飛びかう。

 俺は今まで持っていた松明を前方に投げつけた。一瞬、小石を発射している無数の穴が見えた。

 その場所を頭に記憶し、持っていた短剣を投げつける。

 とりあえず、右端を歩けば小石に当たらなくて済む様にはなった。左端に小石が勢い良く飛ぶ廊下を突き進む。

「むうう……」

 目の前に四桁の数字を入力させるパネル付きの扉が現れた。周りを見渡したがヒントとなるようなメモはない。

「暗号か〜……俺、苦手なんだよな〜」

 頭を抱えながら独り言を言う。後方にはインスペクターが無言でついてきている。まぁ、喋られてもうざいけどな。

 俺はモニターの向こうで見守っているであろう秋留を意識して、インスペクターのカメラを見つめた。

「ん?」

 俺はインスペクターの腹の部分に何か書かれているのに気づいた。近づこうとすると一定の距離を保とうとしてインスペクターが離れる。

 俺は視力に全神経を集中させた。

『扉は魔を封じた』

 インスペクターの腹にはそう書かれている。

 魔を封じた扉? 恐らく目の前の扉の事を言っているのだろう。

 う〜ん……。

 ……。

 ……………。

 ………………………。

 魔というのは、魔族の事だろうか。魔族を封じる? 何か聞いた事あるな。

 確かジェットが活躍したのが第三次封魔大戦だったな。あれは、二九九九年だったよなぁ。第一次とか二次の事は全然知らないし。

 俺は試しに数字のパネルに二九九九と入力してみた。「カチャッ」という音と共に目の前の扉が開く。

「ゴイ〜ンッ」

 脳天に金ダライが直撃した。目の前に星が舞う。

 扉は開いたけど、罠が作動した……半分正解だったという事か?

 俺はクラクラする頭を抱えながら部屋の奥に進む。外の会場ではさぞかし笑われている事だろう。ちくしょう!

 目の前にある机の上に立派な短剣が三本並んでいる。

『一番、価値のあると思われる短剣を選んで、出口へと進め』

 盗賊に必要なものに鑑定眼というものがある。俺はそれが苦手だ。物の良し悪しが分からない。

 俺は順番に短剣を手に持って見比べる。

 一番、装飾が豪華な短剣を右手に持つと『出口』と書かれた扉に手をかけた。

「!!」

 俺は空気の動きを察知して後方にジャンプする。目の前に金ダライが落ちた。

「最期まで危険なトラップハウスだったな」

 俺は金ダライを跨いで、トラップハウスの外へと出た。

 会場からは拍手の嵐。「金ダライ当たった時の顔が面白かったぞ〜!」という野次も聞こえてくる。俺は遠く離れた観客席でそう叫んでいたオッサンの顔を覚えた。盗賊の視力を舐めるなよ。

 俺は最期に持ってきた短剣とトラップハウスに入るときに受け取った道具袋を返す。

「この短剣は見た目だけ立派なんですが、価値はそんなにないんですよ〜。残念でしたね」

 係員は残念そうに言う。俺はもっと残念だ。

「いやぁ、惜しかったですね。金ダライに当たらなければ結構高得点を狙えそうでしたのに」

 近づいてきたノニオーイがまたしても嫌味を言う。

 暫くして、トラップの作り変えが終了し、ノニオーイがトラップハウスに侵入していった。

 その映像が中央のモニターに表示される。

 さすがにレベルが高いだけあって動きに無駄がない。俺がトラップを作動させて何とか避けたりしているのに対してノニオーイはトラップの発動自体させていなかった。

 悔しいがコイツは中々手強い。と目の前でノニオーイが地面に落ちていたバナナの皮でツルリと滑った。会場から様々な笑いが上がる。俺も思わず笑顔になってしまった。

 恥ずかしそうに頭を支えながら映像の中のノニオーイが立ち上がる。

 その後は海賊特有の船の操縦などのテスト項目もあったが、手際のいい操縦で見てる者を驚かせていた。殆ど何の失敗もなく最期の短剣は一番価値のある短剣を選んだようだ。

 バナナの皮で滑ったせいか、ノニオーイは俺の方には来ずに離れた所に腰を下ろした。いい気味だ。

 その後何人かの海賊や盗賊がトラップハウスに挑み、現在トップの盗賊ロシファがトラップハウスに挑んだ。盗賊の間では流水ロシファと呼ばれている凄腕だ。俺も何度かロシファによって盗られた後の宝箱に泣かされた事がある。

 映像に写されたロシファは正に流れる水のようだった。罠には全くかからず動きにも無駄がない。時折インスペクターに目線を投げかけて観客へのアピールも忘れない。

『えー、では、盗賊・海賊の全ての方の実践試験が終わりました!』

 昼前になった頃、ようやく盗賊・海賊の実践試験が終わった。

 俺は秋留を探して隣に座る。反対側にはカリューも座っているが相手にはしない。

「お疲れ様、ブレイブ。惜しかったね〜」

「まぁ、しょうがないさ。流水ロシファの試験を見せられると何も言えないや」

「修行が足りないな!」

 落ち込んでいる俺に対して容赦なくカリューが言う。いつか恥じかかせてやるからな、コイツ!


 こうして俺達のレベル測定大会は終わった。

 カリューは戦士レベル五七で戦士の中ではトップ、秋留は幻想士レベル三八、俺は盗賊レベル三六だった。全員レベルはアップしていたが、カリューの上がり方が尋常ではない。

 カリューは見事、レベル測定大会の戦士の部で優勝した。

 賞金百万カリムを受け取り、風神の守りという首にぶら下げているだけで魔法攻撃を弱めるというアイテムを副賞として貰っていた。

 今はカリューが賞金で俺達に飯を奢ってくれている。

 ここは焼肉屋・上々苑の一室。俺は遠慮する事なく特上ロースを食べていた。

「お前ら遠慮しないよな〜」

 カリューが俺達の食いっぷりを見て呟く。

 俺も秋留もジェットも、ここぞとばかりに高級な肉を食べまくっている。

 安物とは違い口に入れた途端に肉はとろけ、旨みが口いっぱいに広がった。

「臨時収入なんだから気にしない〜」

 秋留も珍しく沢山食べているようだ。実は幻想士の中で優勝出来なかった事が悔しかったのかもしれない。

「まぁ、いいけどよ。この獣人化しているお陰で優勝出来たところもあるだろうし。これは俺の本来の力じゃねぇや」

 カリューもガツガツと白飯と肉を食べている。どうやら獣人化のせいでパワーアップしている事は気づいているらしい。

「レベル五七は凄いですな。ワシは五二だったんですぞ、魔族の軍団長を倒した時は……」

 ジェットが酒を飲みながら昔話を始める。

 俺達はその後も楽しく気兼ねなく食事をして宿屋に帰った。

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