ビールテイスト飲料①
「ふ~ん、時間がなくて、でもお腹は空いて・・。苦肉の策で歩きポテチか・・。面白い子だったな~、世の中には色んな発想の人がいるらしい。私の大学生活もどんどん面白くなってきているな・・」
そう呟きながらもコンビニの前にたどり着き、立ち止まって、昼時の混雑しているコンビニを眺めた。
額の汗を拭いながら、歩いてきた道の先の方にふと目をやると、また一風変わった人が歩いてきていることに気づいた。前から今度は遮光された黒っぽい瓶に白いラベルのビールらしきものをラッパ飲みしながら男が歩いてくる。
麦わらの女の子はこれは・・と思った。
「・・あれは、ビール瓶・・この昼間の炎天下だからと瓶ビールラッパ飲み・・?」
そう呟きながら麦わらの女の子は、その男の様子を注意深く観察した。
その男も、先程出会った桐野玲と同様、自分と同じくらいの年齢に見える。
歩いてきた男は麦わら帽子を被っている女の子が自分の様子を訝しげに見ているのに気づいたらしい。そして周囲を見回すと通行人や車の人たちからも同じように見られているということを再確認した。
男はそれらの視線を受けて困ったように、決まり悪そうにした後、コンビニの前まで歩いてきて麦わらの女の子と数メートルの距離を取りつつ、立ち止まった。そしてほんの少し前まで自分の方を注視していて、今は自分の存在を意識しつつも自分から視線を逸らしている麦わらの女の子に話しかけた。
「・・あの、これ・・、俺の飲んでるやつですけど・・たしかにビールですけど『ノンアルコール』のビールですよ? ・・暑くて喉が渇きそうで家の冷蔵庫で冷やしていたのを持ってきたんですが・・。
・・炭酸が飲みたかったんですけど、甘い炭酸はあまり好きじゃなくて・・。それで甘くない炭酸のノンアルコールビールです。ビールという名前ではあるけれど・・『清涼飲料水』ですよ・・? 20歳未満の人は買えない店も多いみたいですけど、俺20歳ですし・・。
平日の真昼間から酒を飲んでいるみたいに見えているかもしれないですけど、飲んでいませんよ・・」
「・・あっ、すみませんっ・・そうなんですか、ほんとにすみませんでした・・。・・真昼間から瓶ビールをラッパ飲みしながら歩いてくる人がいるなと思って、ちょっと見てしまっていましたね・・すみませんでした・・。
あの・・それ、ノンアルコールビールなんですか? ・・瓶のノンアルコールビールが発売されているんですね・・けど、きっと道行く人や、車の人からはあなたが平日の真昼間から瓶ビールをラッパ飲みしながら歩いている、と思われているような・・。わたしもあなたに説明されるまでそう思っていましたから・・大丈夫ですか?」