おかしな女の子⑤
相変わらず近くを通る車や通行人から、多少見られてはいたが、女子学生が二人、道端で和気あいあいと袋菓子を食べている姿は先ほどまでのような好奇の視線にさらされることはなかった。
「・・もっとどうぞ~。一人じゃ食べきれませんから・・。お腹が減りすぎていたせいなのか小さい袋で良かったのに、ついつい大きな袋の方を買っちゃったんです・・」
「・・そうなんだ、ありがとう・・。実はあたしもとってもお腹が空いていて、あなたの寄ったコンビニで昼食を買おうと思っていたんだ。これから講義なの?」
「はいっ、今日は変則で4限だけなんです。・・でもその前にレポートを仕上げなきゃならないので慌てて家を出てきたんです。学内の図書館でもう少し手直ししないと・・」
そう言いながら女の子は次々とポテトチップスを口に運んでいる。相当にお腹が空いているようだ。
「・・教科書・・ちょっと見せて貰ってもいい?」
「あっ、もちろんです、どうぞ・・懐かしいですか?」
女の子はポテトチップスで汚れていない方の手でバッグから頭を出していた教科書を取り出し、麦わらの女の子に手渡した。麦わらの女の子もポテトチップスを食べていない方の手でその教科書を受け取り、視線を教科書に落とし片手でページを繰り出した。
「・・あ~・・懐かしいな~・・。去年までこれを勉強していたな・・あなたは今なんだ・・何か不思議な感じもする・・」
麦わらの女の子は一通りページを繰って教科書を閉じた。
「・・はい、ありがとう~、わたしは午後休だからのんびりだけど、あなたはこれからレポートの仕上げ、講義なのよね・・。忙しいんだね、あまり引き止めちゃいけないね。ポテチありがとう♪ 教科書も見せてくれてありがとう♪」
「いえっ、こちらこそ恥をかいているところを救っていただいて感謝です・・。私のために、一緒に食べてくれてありがとうございます。気持ちが楽になりました・・手汚れちゃいましたよね、これウェットティッシュです、使ってください! 今は急いでいるのでアレですが、また学内でお会いしましょう! それでは今日の所はこれにて失礼しま~す♪」
そう言うと女の子はさっと教科書と、半分は食べ切ったであろうポテトチップスの袋を折りたたんでバッグにしまい込み、軽く麦わらの先輩に会釈するとその場を離れ大学へと向かっていった。
「・・2年の! 桐野玲さんっ! また学内で会おうねっ! レポートっ! 講義もっ! 頑張って! さよならっ!」