おかしな女の子③
麦わらの女の子は失礼かなとも思ったが、前から歩いてきた女の子のポテトチップス大袋の歩き食いの姿をじっと見ていると、とても滑稽に見えてきて、笑いがこらえきれなくなり、とうとうクスクスと笑いだしてしまった。
ポテトチップスを歩き食いしている女の子が麦わらの女の子のかなり近くまでやって来た。麦わらの女の子は何とか笑いをこらえようと顔を下向き加減にし、右手でグーを作り口元に当てて咳払いしながらその女の子の様子をチラチラと見ていた。
麦わらの女の子がふと周囲を見回すと、4車線道路を通っている車の中から、運転手や、助手席、後部座席に乗っている人がポテトチップスをおいしそうに食べながら歩いている女の子を見つけて笑っている。
近くを通った複数人で乗り合わせている車の少なくない人たちがその女の子の様子を見ながら“おい!見ろよっ!”という感じで女の子の存在を仲間同士で知らせ合いながら面白そうに見ていた。少し徐行してよく見ようとしている車もいる。
(・・やっぱり・・そうだよね・・女の子が一人でポテトチップスの大袋を顔の横の高さに常にキープしながらおいしそうに、嬉しそうに歩きポテチしてたら・・なんか面白い・・みんな面白いよね・・)
と心の中で思いながらも、ポテトチップスの女の子の様子を歩みを進めるのもほどほどに眺めていた。
女の子が歩きポテチをしていることばかりに気を取られていたが、一体どんな子なのかと顔を覗き込んでみると、とても可愛い女の子だった。自分と同じ年くらいのように見える。平均よりもずっとずっと細みの女の子だ。
麦わらの女の子は、自分のすぐ斜め前を通り過ぎようとしていた、ポテトチップスを歩き食いしている女の子が左肘に下げているトートバッグに視線を落とした。結構な量のものを入れているらしく、何やらバッグから頭を出している本がある。見覚えのある本だな、とふと思った。あっ、教科書だ。いつか自分が使っていたのと同じ教科書が女の子のバッグから顔を出している。・・私服であの教科書、うちの学生だな、と察しがついた。
「・・あの~、もしかして・・この大学の学生さんですか?」
麦わらの女の子の横を通り過ぎようとしていた女の子は声をかけられてから遅れ気味に立ち止まり、突然の呼びかけに最初は自分に対するものか分からずに周囲を見回した。
「・・えっ? ・・あ、私ですか? ・・はい、そうですけど・・何か?」
女の子は麦わらの女の子と目が合い、どうやら自分が声をかけられていると分かると、リズミカルに繰り返していた歩きポテチをやめ、口元を押さえ食べていたポテトチップスを小さく飲み込み、麦わらの女の子の方を不思議そうに見つめながら答えた。