おかしな女の子②
「・・うん・・確かにちょっとばかり大きいけど強い風にさえ気をつければ・・頭をぶんぶんと振らなければ大丈夫そうだな・・。・・やっぱり陽射しがカットされて涼しい。まあ、もうワンサイズ下がベストだったけど、これでも別に大丈夫だな・・」
被った麦わら帽子を上目で少し眺めてから前を向くと、何かの菓子袋を持って歩いてくる女の子が更に近づいて来ていた。
麦わらの女の子は麦わら帽子のツバを下げて目深に被り、こちらに向かってくる女の子の菓子袋を注意深く目を細めて観察した。たしかに見覚えがある。赤系の色とくすんだ黄色の2色のパッケージ。
・・あれは・・『かっぱえびせん』だろうか・・、確か赤とくすんだ黄色のパッケージだったはずだ。いや、それとも・・『ポテトチップス うすしお味』のパッケージだろうか・・どっちも似たようなパッケージだったような。
おそらく『かっぱえびせん』か『ポテトチップス うすしお味』であろう菓子袋を片手で下から支え持ち、もう片方の手はその菓子袋と女の子の口元を何度も往復しているように見える。コンクリートの歩道から立ちのぼる陽炎のために細部がぼんやりしている。
菓子袋を片手に歩く女の子か、珍しいなと思い麦わらの女の子はじっとその様子に見入っていた。
ふと我に返り、前方の歩行者信号を確認すると、信号はもうすでに青に変わっていた。4車線道路の方を見ると、信号待ちしていた何台もの車はとっくに走り始めており、止んでいたはずの熱風と騒音の中だった。麦わらの女の子は慌てて左右を素早く確認すると横断歩道を渡り出した。
菓子袋を片手に持った女の子との距離はさらに縮まった。前から自分の方に向かって歩いてくる女の子は『ポテトチップス うすしお味』の菓子袋を左手に持ち、常に自分の顔の横の高さに保ちながら、右手で一枚一枚ポテトチップスを袋から拾い上げてはさくさくとリズミカルに食べていないだろうか。
道を歩きながら、しかもこんなに人通りも交通量も多い人目を引く道でそんな食べ方は普通はしないはずと麦わらの女の子は何度も瞬きして目を疑うようにその女の子の様子をさらに観察した。
女の子が近づいてくるにつれて、より鮮明にその様子が見えてきた。まさかとは思ったが、思った通りだった。ポテトチップスの見たところ、普通サイズのものではない、それよりも一回りか二回りか大きなサイズの袋を持った女の子は袋からポテトチップスを一枚、また一枚と取り出しては口に運びおいしそうに食べながらこちらに向かって歩いて来ている。