おかしな女の子①
「わっ! ・・危な~、もう少しで飛ばされる所だった~・・。麦わら帽子・・少し大きかったかな・・」
体にまとわりつくような強い熱風は徐々に弱まり、トラックは何事もなかったかのようにどんどん走り去って行く。その唸るような走行音は次第に遠のいていった。
麦わら帽子を取り、それをじっと眺める。そしてもう一度被ってみて頭を横に振ってみる。
頭を振ると、結構簡単にずれてしまう麦わら帽子を上目で眺め、もうワンサイズ小さいので良かったかなとちょっと後悔した。
通り過ぎていったトラックの後を追うように今度は自分の左側の方を2車線道路に沿って遠くまで眺めて見るとその途中に一つの看板が目に入った。
オレンジ色の看板に黒い明朝体の太字で『ひまわり』と書いてある。
「『ひまわり』か・・ラーメン屋さんの・・。とってもおいしいことで評判の・・この暑いのにお客さんが入るのかな・・。この暑さで、さすがにラーメンは誰も食べないでしょう・・」
女の子はそう呟くともう一度ぶるぶると頭を横に振って見た。やはり麦わら帽子はグラグラして今度は少し斜めにずり落ちた。麦わら帽子を取り小さく調整できないのかと帽子の裏側をよく見てみたが、一見、そういった機能はないように見える。
やっぱりもうワンサイズ小さいのを買えば良かったか~とどうにかならないかと麦わら帽子をいじりながら、目の前の横断歩道の信号をチラッと確認するとまだ赤だった。
やっぱりサイズ調節機能はついていないなと確認し終え、また信号をチラッと見るとまだ信号は変わっていない。しかし、もうそろそろ青になるはずと4車線道路の横断歩道の歩行者信号の青が点滅していないか目をやったが、まだ点滅していない。
いつもより信号がやけに長く感じるなと思いながら、目の前の歩行者信号の赤を見つめる。何となくその先の進行方向に目を向けていくと自分が目指しているコンビニの近くから女の子が歩いてくるのが見えた。
その女の子は一旦立ち止まると、手にぶら下げていたコンビニの袋からお菓子の袋か? と思われるものを取り出し、空になったコンビニの袋をクシャクシャに丸めてトートバッグの中に押し込んだ。
そして、菓子袋であろうものの口を周囲をキョロキョロと見回してからおもむろに開けた。袋の口を開けると、その袋の下側を片手で支え持ち、肩の高さにキープしながら歩いてくる。
どうやらお菓子の袋みたいだけど何か見覚えのある菓子袋だなと信号待ちしながら女の子は訝しげに見つめた。はて一体何の菓子袋だったかなと首を傾げて考えながらも、日差しがさらに強くなって来ているのを感じ、手に持っていた麦わら帽子をじっと見つめてまた被った。




