相当な逸材①
しばらく3人の嗚咽は続いたが、少し落ち着くと3人とも残りのラーメンをすすり始めた。やはり暑さは相当なものだったので、3人とも涙を拭い、汗を拭いながらもラーメンをすすっている。
綾田はるせは3人が落ち着いたのを見てほっとした。そして自分も残りのラーメンを食べ始めた。
4人がラーメンをすする音だけがやけに響いている。テレビの方は昼ドラはもう終わり、情報番組が始まっていた。
[ザー・・ザッザッ・・チャッチャ・・]
店主が、炒めていた鍋から大皿に何やら盛り付けている。
「・・はいよっ! ・・男子学生3人にとっても可愛いお嬢さん! 今日はこれサービスだ! めちゃくちゃうまいから食べていって! 熱いから気をつけてねっ!」
4人の前に大皿のチャーハン大盛りがドンと登場してきた。
4人は顔を見合わせた。店主のサービスしてくれたチャーハン大皿、大盛りを見て“おーっ♪”と歓声をあげた。
「え~っ! ・・ほんとにいいんですか? ・・おじさん♪ ありがとうございます♪ おいしそう~♪」
綾田はるせは湯気がモクモクと立っている、大盛りチャーハンを興味津々と眺めたあと、とても嬉しそうに店主に笑顔でお礼を言った。
そのお礼には“3人の辛そうな男子学生のためにありがとう”という意味が多分に含まれていた。店主はとても気恥ずかしそうにその礼に軽く手をあげて答えた。
「・・ほら・・、おじさんがサービスしてくれたから、一緒にいただきましょうよ、ほら、みなさん・・まだまだ食べられますよね? ・・ちょっと待っててください、はい、どうぞ・・」
綾田はるせは店主が出してくれた4人分の小分け用の皿とレンゲを男子学生たち一人ひとりに配った。
それを両手でもったいなさそうに受け取った男子学生たちは感動ひとしおだった。
3人の男子学生たちは綾田はるせの様子をただただぼーっと眺めている。
「・・ほらほら、どうしたんですか? せっかくのおじさんのお心遣いだし、冷めないうちにいただきましょうよっ! ねっ・・食べないと元気出ないですよ? ・・私、放っておくと全部食べちゃいますけど・・? それにしても、ほんとにおいしいそう~♪ ・・いいんですか? ・・ほらっ」
綾田はるせは大盛りチャーハンに顔を近づけて男子学生たちの方を向き、“全部食べちゃいますよっ?”と楽しそうに食べる仕草をしてアピールしながら少し微笑んで3人を促した。
「・・・・」
3人は何も言葉にはならなかった。空のお皿とレンゲを手に持って、ただただ綾田はるせの方を感極まった表情で見つめていた。




