ラーメン屋ひまわり②
店内は湿気がひどく、調理カウンターは、ラーメンを茹で、スープを煮立たせているので湯気がもくもくと充満している。クーラーは一応あるようだが、稼働していないように見える。故障しているのだろうか。扇風機があさっての方向を向いて強風で首を振っている。
“これは外以上に暑いかもしれない”と麦わらの女の子はふと思った。
麦わらの女の子は膝に抱えていた、バッグを空いている横の椅子にとりあえず置き、そわそわしだした。
落ち着かずに店内をもう一度キョロキョロと見回した後、店内の暑さと湿気に汗を拭い、Tシャツの胸元を指でつまんでパタパタと風を入れながら前髪をふ~っと吹いた。
[・・カラカラ・・コトッ・・]
涼しげなその音のする方を見ると氷入りの水が3つ男子学生たちの前にあった。コップの外側には水滴が霧吹きで吹き付けたようについていて、ひんやりと並んでいる。
麦わらの女の子はその水を見てコンビニに寄って水を買う予定だったのを忘れていたことに気づき、バッグの中に水がないかゴソゴソと探し回ったが見当たらない。さっきコンビニの前で後輩にノンアルコールビールを分けてもらって飲んだ後、コンビニの前に設置されている収集箱にミネラルウォーターの空のペットボトルを入れてきたのをすぐに思い出した。炎天下を歩いてきたので喉が相当に乾いている。
「・・あの・・、お水をいただけますか・・?」
「・・あ、すみませ~ん、・・お水は・・セルフなんです・・。・・そこにありますので・・ご自分でお願いいたしま~す」
店主は麺の湯切りに相当なこだわりがあるらしく、手を止めずに麦わらの女の子の方に視線を向けずとぎれとぎれそう言った。
店主は麺の湯切りを終えると、麦わらの女の子の方を見て、“そこです”と視線を送った。その視線の先には逆さになっていくつも積み上げてあるコップがあり、その隣には給水器があった。
麦わらの女の子は水のありかを教えてくれた店主に軽く会釈して、ゆっくりと立ち上がり、水を取りに行った。腕で額の汗をまた拭いながらコップを手にし、給水器のコックにコップを押し込むと、小さく砕かれた氷と水が同時に音を立てて注がれすぐにコップを満たした。
コップに注がれた水をじっと見つめ喉を鳴らすと、麦わらの女の子は水を一口、かぱっと飲み込んでふうっと一息ついた。
「・・ふ~っ、暑い・・ほんとに暑いな・・」
男子学生たちがそうぼやいているのが耳に入った。
麦わらの女の子は店の壁をじっと見つめて、口元を拭い、額の汗を拭いながら、“やっぱり失敗だったかもしれない”と後悔の念を抱き始めていた。しかし、ここまで来てすでに店主に注文を聞かれるがままに、味噌ラーメンを注文してしまっている。もう後には引けないだろう。
また胸元をつまんでパタパタとさせながら自分の席に向かうと、男子学生たちは暑そうにしながらも自分の方をチラチラと伺っていた。相当自分の存在が気になっているらしい。
麦わらの女の子は男子学生たちの視線を無視できなくなり、汗を拭って手でパタパタと顔を扇ぎ、“暑いですね”というリアクションで苦笑いしながら軽く会釈をした。
男子学生たちも“そうですね”というリアクションで軽く会釈しながら苦笑いで応えた。麦わらの女の子同様、額の汗を腕で拭っている。




