先輩として②
「へ~っ、桐野さん有名なんだ~、確かにとっても可愛かった・・ということは君も彼女のファンなの?」
「いえっ、俺は別にそういうわけではないんですけど、まあ確かに可愛い・・とは思いますけど・・、別にファンというほどではないですけど・・」
「・・ふ~ん、そうなんだ・・じゃあ今日はそういうことにしておこっか、あっ! あなた、レポートの仕上げは? 早く図書館にいかないと! ほらっ! 急いでね! 桐野さんはもうとっくに急いで走って行っちゃったよ! ほら、急いで! また学内で会おうね! それじゃあ! またね!」
「・・いけない、そうだった! 早くいかないと! 先輩、色々とありがとうございますっ! それでは今日はこれで失礼しま~す!」
麦わらの女の子にそう急かされると後輩の男子学生は急いで空になったノンアルコールビールの瓶をコンビニの“ビン・缶”と表示されている収集箱に入れると、麦わらの女の子に軽く会釈し、慌てて走って行った。
「お~っ、早い早いっ! さすがにレポートの締切間近の時はみんなダッシュだよね・・。あっ、名前を聞き忘れてしまったか・・まぁいつか会えるかな・・。
そういえばダッシュと言えばさっき学校から出る時、正門から猛烈なダッシュで入ってきてそのままの勢いで構内を学食方面へ走り抜けていった人がいたな・・昨日このコンビニの自動ドア付近であたしに肩をぶつけてきた人も、何度も謝った後、ものすごい勢いで走り去って行った・・。年も同じくらいに見えたし、あの人がもしうちの学生だったら、レポートで急いでいたのかもしれないな。
そして桐野さんといい、今の子といい・・世の中には私が思っている以上に急いでいる人が多いみたいだ・・そして独特の考えや個性を持っている人が多いみたいだな・・」
麦わらの女の子は走り去っていく後輩を遠目に眺めながら見送ると、空になったミネラルウォーターのペットボトルをコンビニの前にある“ペットボトル”と表示されている収集箱に入れた。
「・・ふ~っ・・。さすがにほんとにすごく暑くなってきたな・・。・・かなり汗かいてきた、さぁどうするか・・? 私の後輩二人は常識に縛られずに勇敢にも自分の良いと思うことを実行していた・・結果的にはちょっと、というか、かなり後悔はしていたものの・・。
でもいい線は行っていた気がする。あのチャレンジ精神は見習うべきところがある・・今日はせっかくの午後休なんだし、先輩の私も負けるわけには行かないなっ!
・・何かこう、柔軟な発想で、常識に縛られない楽しそうな午後の楽しみ方は・・。・・思いっきり爽快感を感じられるような・・」
そう考えながら、キョロキョロとあたりを見回した。周囲を眺めると車の往来が激しかった。何人かの通行人が暑そうに通り過ぎて行く。




